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引き返せる内に、傷が浅い内にーーー(1/3)






「・・・・・・」



「・・・・・・」



パクッと食卓に並べた料理を口に運ぶ。


何かな・・・この無言は・・・・


気になる無言の中、味は至って普通のはず・・・そう思いながら、黙々と食べ進めていれば、一口食べた後から動きを止めていた赤井がゆっくりと食べ始めた。



「・・・・・・」


「・・・・・・」



おい;



「なんか言えや;」



この男が無口なのは知っているし、無言が嫌いなわけではない。


どちらかと言えば静かな方がありがたいし、赤井との無言の空間は居心地さえよく感じる。


だが、今この空間だけは耐えられなかった。




「あぁ・・・予想外で驚いただけだ」



「どういう意味で!?」


シレっと返す赤井にピキッと青筋を浮かべて言えば彼は気にせず言った。



「意外と料理は上手いんだな」



意外とは余計だっつーのっ・・・・



だが、とりあえずおいしい、という事なのだろう。



なぜかその言葉にホッとした自分が居てハッとし、ブンブンと首を振った。



「何を遊んでいる」



「お気にせず」



それから何を話すわけでなく、ただ黙々と二人で食べ続けた。




・・・・今更思ったが、なんだよこの図



なんでこの男と二人仲良く、しかも私の手料理を食べなきゃならんのさ・・・・



そう思いながらも先ほどよりもこの無言が気まずくなくなったのはーーー



「(おいしいんだとーーー安心したからかーーー)」



そこまで考えてフッと笑った。


縋ってはいけない、そう心に決めて生きてきた。


助けを呼ぶことも、手を伸ばすこともやめたはずなのにーーー



特にこの男にだけは・・・赤井秀一にだけは・・・絶対に縋ってはいけないだろうにーーー



彼の恋人をーーー救えなかった私に、彼の隣で、彼に縋っていいはずがないのにーーー



そんな資格はないのにーーーー



なのにーーーー



「(この空間が・・・安心するなんてーーー)」




カチャッと食べていた手を止めて箸をおけば、ハァーっと溜息を吐き、前髪をクシャッと握った。



「・・・・どうした?」



赤井はフと彼女の雰囲気が悲し気なものに変わったことに気がつき、りゅうを見た。



「あぁ、気にしないで。もうお腹いっぱいだから全部食べれるなら食べちゃって」



そう言って席を立ち、シャワー借りていい?と一言呟けば、あぁ、と返ってきた。



その場から立ち去ったりゅうの後姿を見ながら赤井は彼女の行動を思い浮かべた。



前髪をクシャッと掴むあの仕草・・・何かを深く考え込み、自分が追いつめられているときに出る彼女の癖のようなものだろう。



彼女に会ってからもう何度か目にしたその癖に、赤井は目を閉じた。



「・・・・お前は何をそんなに俺に罪悪感を感じてるーーー?」



赤井は気がついていた。



りゅうが自分に対して何か罪悪感を抱えているであろうことに。



だからこそーーー俺に対して強く拒絶を示せないのではないかとーーーー



拒絶を示しても、彼女は強い感情で俺を遠ざけようと本気でしていなかったように思う。


あのボウヤや、警察相手には雰囲気で近寄るなオーラが強かったのにも関わらずーーだ。



出されたものを全て食べ終わり、カチャカチャと食器を片付けていればカタンと音がして振り返った。




「出たか」



「・・・・服、どうも」


あと下着も・・・ってか服は赤井の服だが、下着なんてよく持ってたな・・・・



「・・・やはりお前さんには大きすぎたか」



「あんたがでかすぎるんだっつーの」



置かれていたのはスウェット、そしてそのスウェットの腕と足の袖を何度か折って着ていた。




片付けている赤井を横目にりゅうはベランダへと向かった。




ベランダに出れば、椅子が置いてあってその椅子へと腰かけて、足を上げ、膝を抱え込んだ。



ボーっとしながら外の景色を見ていれば、ガラッと音が聞こえてきた。



赤井がベランダへと出てきたのだろうと予想し、微動だにしなかった。




「シャワー後にこんなところで夜風に当たり続けていたら風邪を引く」



そう言いながらベランダへと持たれかけて私の方を見下ろした。



「・・・・別にいいわよ」




「・・・・・聞いていいか?」



「何?」



「何をそんなに怯えている?」



赤井の言葉にビクッと身体が震えた。



「図星か?」



「っ・・・・・」



その言葉に顔を上げていたが、膝へと埋めた。



「更に言うなら・・・俺に対し、何にそんな罪悪感を抱えている?」



カタカタと震えだすりゅうの身体。



「−−−−言いたくない・・か?」



「・・・・言えばあなたは私を許さないものっ・・・・」



それでいいはずなのに・・・・



許さないと突き放されればそれでおしまい。



またちょっと前に戻るだけ。



原作キャラに関わらない様に奴ら相手に嫌がらせをするだけーーー



なのにっ・・・どうしてこうも心が揺れるーーー?



嫌われて、赤井が私を憎むようになってーーー



それが心底怖いとーーー思ってしまった


それはきっとーーー


「私はッ・・・あんたの傍に居たいのかもしれないっ・・・・」



だからっ・・・嫌われるのも、憎まれるのも、ましてや突き放されるのも・・・怖いんだーーー



考えない様にしていたのにーーー


あんたがっ・・・何も知らないくせに‘守ってやる’‘私より先に死んだりしない’なんて言うから・・・



引き返せなくなってしまったのかもしれない・・・



孤独にーーーー



あなたが居ない日常にーーーー



出会ってからまだ1週間も経っていないはずなのに・・・



この男がどんどん私の‘内側’に入り込んでくる。



怖いーーーー


あなたが私の前から消えることがーーー



怖いーーー


あなたに嫌われることがーーー


怖いーーーー


また孤独になることがーーーー



怖くて怖くて堪らなかった・・・・・



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