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部下も部下なら上司も上司で苛立つ(1/2)






「悪人面・・・・」


りゅうは呆れたように、呟けば赤井はククッと笑った。



あれからすぐに埼玉に入り、信号で止まった犯人の横に着けた赤井は運転する犯人の1人に向かってニヤァと笑いかけた。


プレッシャーを与えるためだとは思うが、その表情、どう考えても善人の顔ではない事だけは確かだ。



赤から青へと変わる瞬間、チラッと見えた数台の警察車両。



それを赤井も見てから、犯人の車から遠ざかる様に急発進した。



一定の距離を空けて成り行きをミラー越しに見て見れば・・・・



「ヒュー、やるねぇー、あぁやって囲んで誰かの合図とともに全台急ブレーキをかける・・・ってとこかな?」



犯人の車両を、上下左右、全て警察車両で取り囲んでいる光景にりゅうは口笛を鳴らした。



「そのようだな、そして犯人たちも急ブレーキをかけ、身体を起こすころには・・・」



全刑事が拳銃を構えて逮捕・・って?


わー、怖い。


そこまで見届けると赤井はその場から見える位置に車を停めた。


恐らく赤井のボスである彼を乗せるため・・・であろう。



「少々手荒いが、日本の警察もまだまだ捨てたもんじゃないようだ」


赤井が面白そうに眺め、言った言葉に、りゅうはケッっと吐き捨てた。



「警察がそんなに頭回るわけないでしょーが」



法に従ってしか動かない、頭が固い連中が・・・と吐き捨てるりゅうに赤井は首を傾げた。



「警察の案じゃない・・と?」



「黄色いビートル・・・あれ、多分あのボウヤの知り合いの車だったはず・・・だとすればあのボウヤもこの件に1枚噛んでると見ていい」



「ボウヤ・・・?あぁ、警察署でお前さんに突っかかっていたあのボウヤか」



赤井はホォー?と言いながらミラー越しにその状況を見れば、確かに車から降りてきたボウヤに見覚えがあった。



だが、それ以上に赤井は茶髪の少女が気になり、目を細めた。



「・・・哀ちゃん・・・って言うらしいわよ?」



その様子を見ていたりゅうが言えば、赤井は何のことだ?と惚けるように少女から視線を外し、りゅうを見た。



「・・・かわいい子よね?」



ロリコン?と馬鹿にしたように笑って言えば彼は無言で腕を掴んできた。



「いっ・・・・ごめんっ・・冗談だってっ・・・」



謝ればすぐさま解放される腕。


この男っ・・・事ある毎に人の弱点に容赦なくつけいりやがってっ・・・・



「馬鹿なことを言ってるからだ」



そういってフイッと目を逸らされる。



「・・・・・・・」


その様子を見ながらりゅうは溜息を吐いた。



確か、灰原哀は本名 宮野志保だったはず・・・そして彼女には姉がいた。


その姉の名前は宮野明美・・・・



チラッと赤井の表情を見やれば、彼は事の成り行きを見ていた。



・・・・今更思い出したけどこの人、確か組織に居た‘ライ’と呼ばれていた男じゃないか?



組織を追っている中、数回見かけたこの男、確かあの時は長髪だったはず・・・



宮野明美の事は知っていた、なんせ原作の最初の方に出てきた重要なキーマンだったはず・・・



だからこそ、彼女の事を見た時、すぐに思ったことがあった。



ジンに殺されるであろう彼女を・・助けることでジンの邪魔ができるんじゃないかーーー



そう思って私は彼女の行動にも目を光らせていた。


そしてその時、彼女が彼氏としたのが確かこの男・・・諸星大だったはず・・・・




「・・・ねぇ」



そこまで思い出して、私は彼へと話しかけた。



「なんだ?」



「あんた・・・諸星大・・・って名乗ってた?」



「!!」



私の言葉にバッと振り向く赤井。



「ビンゴ、あんたやっぱコードネーム‘ライ’だね」




「・・・・知ってたのか?」



「今思い出しただけよ」



原作がどこまで進んでるか知らないが、私はせいぜい彼とジョディと言う外人がFBIだったというとこまでしか知らないのだ。



過去、組織を追っていた時にたまたま見かけた事を今思い出したに過ぎない。




「・・・・・・」



黙り込む赤井にりゅうは別に、だからどうしたってわけじゃないけど・・・



「だったら・・・・」



赤井は何かを言いかけたが何かを考えた後に、いや、なんでもない、と言った。



「(俺が諸星大と名乗ったのは・・・明美と付き合い始める直前・・・だとしたらお前さんは俺と明美の事を・・・・知ってるんだろうな)」



聞こうと思ったが、聞くまでもない事に気がつき口を閉ざしたのだろう。






ねぇ、あなたはどう思うかな?


彼女が殺されると知っていながらみすみす殺されるのを防がなかった私を・・・



彼女が死んだ原因が・・・本当は私のせいなのかもしれないと知ったらーーー



なんでーーー言えないんだろう。



言えばいいのに・・・言ってしまえば彼は私を憎むかも知れない・・・



会った頃ならーーーー関わるなと拒否続けたあの時だったら・・・・



言っていたかもしれない、関わるよりも憎まれた方が断然、彼との接触は少なくなったはずだから。



ーーー俺がお前を守る・・・・


「なんでっ・・・そんな事言うのよっ・・・」



小さな呟きは赤井には届かなかった。




言えなくなるじゃないっ・・・・


憎まれたくなくなるじゃないっ・・・・


縋らないと決めたのにっ・・・・


独りがいいと思ってたのにっ・・・・



縋ってしまいたくなるっ・・・


赤井秀一にっーーーー



私より先に死なないと言った彼をっーーー


信じたくなってしまうっ・・・


「・・・そんな・・・資格すらないのにね・・・・」



フッと嘲笑うりゅうの呟きは小さく、消えていった。



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