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待たせて、ごめんね。(1/2)






「りゅう!」



手を引っ張られたまま、グイッと沖矢に引き寄せられた。



「え?」



いきなりの事にキョトンとするが、そんなりゅうにはお構いなしに沖矢は彼女を抱きかかえて下へと飛び降りた。



飛び降りる際に足元に2.3発、ヒュンヒュンッと打ち込まれて「ひゃっ・・・」と顔を沖矢の胸元へと埋めた。



トンッーーと何処かに着地した沖矢はすぐにりゅうを降ろした。



「ボッ・・ボート?」



「息を吸ってください!」



「え?」



ボートに着地したことにりゅうは「(この人、ボートがくるって計算してここに・・・?)」と驚きの表情で見たのだが、いきなり言われた言葉につい聞き返してしまう。



「早くっ!」


急かされ意味も分からないまま、スゥッと大きく息を吸った。



グイッとそのまま後ろに倒される感じに彼が覆い被さってきて驚いて吸った空気を「へ?」と言う声と共に吐き出してしまった。



ギュッと頭を引き寄せられた際に耳元で「チッ」と舌打ちが聞こえた。




舌打ちって!?とツッコむ前にドボンと音を立てて水の中に落ちた。



そしてそのままボートの下に身体を潜り込ませるように沖矢はりゅうを引き寄せた。



水の中から聞こえてくる鈍い音。恐らく水に潜る事は想定外だったのだろう。風戸が数発ボートに向けて発砲しているのだと分かった。




「っ・・・・(あと少しッ・・・)」



水中からりゅうはもうすぐで洞窟に入る事を見て続かない息を必死で我慢した。



目をギュッと瞑って空気を吸いたいのを必死に我慢していればグイッと頬を包まれたのが分かって目を開ければ口づけを落とされ、目を見開くりゅう。



「っ・・・・」



すると空気を分けてくれたのだとすぐに分かったが、顔を一気に朱に染めた。



ーーーザパッと直ぐに水中から顔を出した二人。



真っ赤な顔のまま片手を先ほど口づけを落とされた自身の口元に当てて沖矢を驚き見ているりゅうに彼はニッと意地悪そうな笑みを浮かべた。



「空気を吸えと忠告したのに吐き出したお前が悪い」



「なっ・・あんな事急にされたら驚いて声上げるに決まってるじゃないですかっ・・・」



「お前は記憶があろうとなかろうとキスの時は目を開けたままだな」



「なっ・・へっ!?」



沖矢の言葉に動揺するりゅう。



待ってっ・・・ちょっと待って!さっき言われた「誰よりも何よりも」という言葉といい、キスといい、今の言葉といい私たちって恋人なの!?


いやっ、途中でそうかもとは何度も思ったし、お兄ちゃんが沖矢さんの所に帰れるようにとの言葉で薄々は感じてはいたがっ・・・でもそれがもし本当に恋人同士だったとしたら・・・




「・・・・・・・」



真っ赤な顔から急にりゅうは悲し気な表情へと変えた。




「りゅう?」



沖矢はそんな彼女の表情を見て首を傾げた。



「酷いねっ・・・・」



「え?」



「私はっ・・・酷い女ですねっ」



「・・・・りゅう?」



泣きそうなほど悲痛な表情のりゅう。いや、泣きそうというよりも、もうすでに瞳一杯に涙を溜めていて、それはいつ頬に零れ落ちてもおかしくない程だ。



「あなたがさっき言ってくれた言葉や、今の言葉から私とあなたは恋人同士なんでしょうっ・・・?」



どうしてっ・・言ってくれなかったんですか?



どうして、何もかも忘れてしまっている薄情な女の為にそこまでして護ってくれるのですか?



沖矢さんだって、傷ついてたんじゃないんですか?恋人である人に自分を忘れられて・・・



彼が時々悲し気に私を見るのは気がついていた。



けれど知らないふりをした。見ないふりをしていた。だって私はあなたの事を覚えていなかったから、どうすればいいか分からなかったから・・・


悲しくて、寂しくて、自分だって傷ついていたのに、そんな事一言も言わずに、ただ笑って私を支えてくれて・・・



「なんでっ・・・どうして、自分だって傷ついてたのに、私なんかを優先してっ・・・」



ポロポロと涙を流し始めたりゅうを沖矢はギュッと抱きしめた。



「言っただろう?俺はお前を離すつもりなんて毛頭ない。お前が笑っていられるのなら俺はそれだけでいい。俺の事を忘れていても大した問題じゃない」




「だってっ・・恋人に忘れられてるんですよ!?悲しいにっ・・・寂しいに決まってます!」



大した問題じゃないなんてことは絶対にないっ・・・



そう泣き叫ぶりゅうの頬を両手で包み、沖矢は噛みつくように荒々しく口づけを落とした。




「んっ・・・・・・」



数秒間行われていたソレに、りゅうはまた顔を真っ赤に染めた。



「大した問題じゃないさ。俺の事を忘れていてもまたお前を振り向かせればいい話だからな」



沖矢の表情は、優しく、それでいて自信満々な笑みを浮かべていた。



「っ・・・・・・」



そんな彼にりゅうは「大した自信ですことっ・・・」と言いたかったが、言葉が出てこず、顔をただただ紅くさせていただけだった。



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