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離さない(1/2)






「わっ・・私を護りにってっ・・・」




「あまり話さない事をお勧めしますよ」



走りながらだとすぐに息が切れてしまいますよ?と沖矢はニコリと笑いながら振り向き、手を引いているりゅうを見た。




「沖矢さんだってっ・・・・」



「私は大丈夫です」



この位何の問題もない。と言い切る沖矢にりゅうは少しムッとしたような表情をした。



「・・・・・・・・」



「ほら、拗ねてないで早く、あのボートに飛び乗りますよ」



「拗ねてません!・・・って、はっ!?あれに乗るんですか!?」



「えぇ」



走っていく先にはスタッフがボートを片付けようとしているとこだったが、沖矢が「すみません」と一言声を掛ければ、そのスタッフは手を止めて「はい?」と振り返った。



その隙にボートへと飛び乗り、川の様な所を下っていった。



「あっ・・ちょっ!?」



慌てている様子のスタッフを横目にりゅうは、ボートを運転する沖矢へと目を向けた。



「・・・どうして来たんですか?」



「言ったでしょう?あなたを護りに来たと・・・」



「護らなくていいとっ・・・そう言ったじゃないですか!」



「・・・・・・・」



「あなたをっ・・・危険に巻き込みたくないのっ・・・・」



りゅうが悲しげな表情を浮かべそう言葉を発すると、沖矢は前を見ていた視線をチラッと彼女へと向けた。



その視線はすぐに前へと戻ったが・・・



「・・・本当に勝手な人ですね」



「はい?」



「・・・・まあ、あなたが勝手なのは今に始まった事じゃないですし、構いませんが・・・」



「・・・なんか貶されてます?」



「あなたが巻き込みたくないと私を突き放すのは勝手ですが、私も勝手にさせて頂きますよ」



「スルーですか?」



「危険な目に合わせたまま放っておけるほど、あなたの存在がどうでもいいわけではありませんので」




「・・・・ん?」



沖矢の言葉にりゅうは首を捻った。



遠まわしすぎてイマイチ理解が出来ず、聞き返そうとすれば、隣から合流する川からボートに乗ってやってきた人物が、銃を構えたのが見えた。



「沖矢さん!」



「えぇっ・・分かってます!しっかり捕まっててくださいっ!」



「へっ・・・?きゃっ・・・・」



ブォンッ!とスピードをさらに上げたボートに必死に捕まれば、ヒュンヒュンと、発砲されボート上で何発かが当たり、その中の一発がりゅうのリュックに入っていたコーラに当たった。



「あっ・・・コーラが・・・」



銃弾が当たったコーラが噴き出した。それを沖矢は横目で見て何かを考えていた。



「・・・・・・」



その間にも何発か打ち込まれ、りゅうは身体を震わせながらも頭を引っ込めていた。




「りゅう、今何時ですか?」



「はい!?」


今何時!?そんなの知るか!そう言いたくなったが、沖矢に再度何時か聞かれ、銃弾に怯えながらも時計を見た。




「8時40分ですがっ・・・」



それが何か関係あるんですか!?と声を荒げれば「9時20分前ですか・・・」と難しい表情をする沖矢に顔を顰めながらもりゅうはモヤモヤしていた。




「っ・・・・・・」



巻き込みたくないのにっ・・・なんでこの人っ・・・・



「りゅう、しっかり捕まってくださいっ・・・・」




いきなり言われた言葉、しかもなぜか少し焦っているような感じの声色に、りゅうはキョトンとした。




「へ・・・?はっ!?ちょっ・・・滝っ!!!」



息を飲むりゅうを沖矢は自分の方へと片腕で引き寄せ、ギュッと抱きしめた。



もう片方はしっかりとハンドルを握っている。




「口を開けていると舌噛みますよっ・・・・」



いきなりギュッと引き寄せられてドキッとしたりゅうだったが、沖矢の言葉に慌てて、口を閉じて、沖矢の胸元へと顔を埋めた。




嫌な浮遊感に襲われた直後、沖矢がさらに力強くりゅうを抱きしめた為、彼女にかかる負担を軽減させた。




「っ・・・・・」



「りゅう、すぐにボートを降りて走りますよ」




「え?」



慌てて顔を上げれば、もう着地をし終わっていて、ボートもすぐ陸地に着ける場所へと来ていた。




ブォンッと音を立てて、停止したボートから沖矢が降りてすぐにりゅうの腕を引っ張った。




「沖矢さんっ・・・・」



これ以上私の傍に居ると彼が危ない。命の危険だってある。もうこの手を離して欲しい。



繋がれた手を払おうとするが、沖矢はそれが分かっているのかは定かではないが、動こうとしないりゅうを、一瞬見た後すぐさま抱きかかえた。




「きゃっ・・・ちょっ!!?」



一気に顔を赤らめるりゅうが暴れるも、沖矢は「文句なら後で好きなだけ言えばいい。今はただ黙って護られてろ。阿呆が」と呟かれて、今までの沖矢の言葉とは思えず、ピタリと暴れる手足を止めてしまった。




「っ・・・・・」



真っ赤な顔をしたまま、沖矢を見るが、彼は犯人から逃げるのに必死な様でりゅうの視線に気がつくことはなかった。





大きな岩場を登る沖矢に「私も走れるからっ・・・」と紅い顔のまま言えば「手を離さないと誓ってくれるのなら降ろします」とにこやかに言う沖矢にりゅうは、頬を引き攣らせた。



「分かったっ・・・分かったからっ、もう手を繋いだままでいいから降ろしてっ・・・」



そう言うと沖矢はすぐに彼女を降ろし、手を引いたまままた再度、岩場を登り始めた。



頂上に近づいた時、りゅうの頬を一発の銃弾が掠めた。




「っ・・・・・」



「ちっ・・・もう追いついてきましたか。りゅう、あと少しで頂上です!そこに行けば岩場に隠れることが出来ます」



彼に言われるまま、頂上に着いたと同時に手を離された。


その手を離された瞬間、望んでいた事だったのにも関わらず、何とも言えない寂しい気持ちに襲われ、苦笑いをするりゅう。



そして岩場の陰に左右に別れて隠れたのだが、沖矢は何を考えているのか、スッと岩場の真ん中へと足を進めた。




「沖矢さんっ!?」




りゅうが驚いた様に彼の名を呼ぶが、彼はそれを気にした様子はなく笑みを浮かべたまま、下の岩陰に居るであろう犯人へと言葉を発した。



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