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それはきっと悪夢の始まり(1/3)





「トロピカルランド?」



「えぇ、明日。行きませんか?」



「明日!?」



随分急だな;



「はい、蘭さんにデートするならどこが楽しめるか聞いて来たんです」




「蘭ちゃんに?」



そもそも何で急にそんな事を言い出したのか・・・



いや、理由は大体分かってる。ユウナ達との件があってから昴は妙に私を気にかけている気がする。


一番変わったのは夜の情事。今までは散々人を追いつめるやり方だったり、言葉で責め立てたり・・一言で言えば超が付く程「ドS」だったのだが、最近はそういう状況になっても、妙に優しいのだ。


気を遣いながら、というか随分と丁寧で、まるで壊れ物を扱うような・・・



それが嫌だと言うわけではないが、なんだか調子が狂うのだ。



現に今だってそうだ。



いつもだったら情事の後など、容赦ないこいつの責めで疲れ果てて眠ってしまうのだが、今は眠ってしまうほど疲れてもいない。まぁ、少々怠さはあるのだが、そんなものは普通程度のもの。



お互いに何も纏っておらず、シーツだけで身体を隠しているような感じで、私はうつ伏せの状態で枕に頭を預け、隣で上半身だけ起こし、背をベッドサイドと壁に預けている昴の姿を見ていた。



昴が私の頭をゆっくりと撫でながら突然言った言葉が「トロピカルランドに行きませんか?」との事。そして冒頭に至るのだが・・・



一体なんだというのだ。最近のこいつの行動は・・・;多分無意識。不思議そうな表情で何度か昴の顔を見ていても、彼は、どうした?と言わんばかりに首を傾げこちらを見てくるのだ。



別に、それで何かこう・・・ぶっちゃけ私に害がある訳ではないので構わないって言えば構わないのだが・・・うん。優しいのはいいことだよね。



でもなんか・・・調子が狂う。というか気味が悪い・・何か最後にどんでん返しがきそうな気さえする。



「りゅう?」



「え?あっ・・なんだっけ?」



「ですから、明日朝から行きましょう」



「あー、トロピカルランドね」



まぁ、いいか。



隣りで同じように横になった沖矢の肩へと頭を置いて、首元に擦り寄れば、その頭が乗っている方の手で頭を撫でられ、その温かさを感じながら眠りに落ちた。









ーーーーーー





「やっぱ平日に来ると空いてるよね」



次の日、沖矢に誘われるままトロピカルランドへとやってきた。



「そうですね。休みの日だと3.4時間ほど並ぶそうですよ」



「うん、それはパス」



にこやかに言う沖矢の言葉にすぐさま返せば「あなたらしいですね」と笑われた。



「・・・・遊園地かー。久しぶりだな」




「昔、来た事でもありましたか?」




「うん、来たよ!にぃーにと母さんと三人で!」



子供の時に来て以来だから大分変わったけど、所々はそのままで、懐かしい。と小さく笑うりゅうを見て沖矢はフッと優しく見つめた後、スッと手を差し出した。




「行きましょうか」



「・・・・それ繋がないとダメ?」



差し出された手を、溜息を吐きながら見るりゅうの手をパシッと掴み、歩き出す沖矢。



「折角のデートなんで・・ね」



振り向いて、チュッと繋がれた手に口づけを落とし、フッと笑む沖矢に顔を真っ赤にするりゅう。



「わっ・・分かったっ、分かったからっ・・・人前でそういうの止めてってばっ・・・」



真っ赤な表情のりゅうを見て満足そうに喉を鳴らす沖矢。



「・・・もうっ・・・」



照れながらも、なんだかどこか無邪気に見える沖矢の姿にフワリと笑った。






「昴、見て見て・・・ってあれ?」


展望台の様な所に登り、望遠鏡を覗いていれば、大きな恐竜が見えて次あそこ行こうよ、と望遠鏡から目を離し後ろを振り向けば、先ほどまで居た沖矢の姿が見当たらなかった。



トイレかな?と思いながら、もう一度望遠鏡を覗き込んだ。




ーーーピトッと何か頬にヒヤリとしたものが当てられて「ヒャッ・・・」と肩をビクつかせて慌てて振り向けば、肩を震わす沖矢の姿。




「・・・・笑いすぎ」



笑っている沖矢から差し出され飲み物を受け取りながら、恥ずかしそうに頬を染めジト目で沖矢を見るりゅう。



「すみません。そんなに驚くとは思いませんでしたので」



「・・・・ありがとう」



飲み物のお礼を言えば「いえ」と笑顔で返されて時計を見る沖矢。



「そろそろ時間ですね」



「時間?」



彼の言葉に首を傾げるが、いきなりグイッと腕を引っ張られた。



「行きますよ」



「いや、どこに?」



「着いてからのお楽しみです」



そう言って行き先も分からぬまま着いた場所は広場のような場所、その真ん中まで引っ張られながら辿り着けば「間に合いましたね」と時計を確認する沖矢。



「だから何が?」



「まぁまぁ、もう少しです。・・・5、4、3、2、1・・・・」



沖矢のカウントダウンと同時に噴水が周りから一気に噴き出し、中央に居るりゅうと沖矢の二人は水に囲まれた。




「うわぁ・・・・」



「ここ、二時間置きに噴水が出るそうなんです」



沖矢の言葉に上を見ていたりゅうは視線を沖矢へと移し、首を傾げた。




「出るそうなんです。って知ってて来たんじゃないの?」



「いえ、蘭さんから聞いたんですよ。なんでも昔幼馴染と来たとかで・・・」



「へぇー・・・・」



上を見ながら言う沖矢に相槌を打てば沖矢に名を呼ばれた。



「ん?」



「見てください」



そう言われて上へと視線を戻せば・・・



「あ、虹だ・・・・」



「乾杯でもしますか?丁度缶を持ってますし」



「ふふっ、コーヒーとお茶で?」



「たまにはアルコールなしの乾杯もいいものですよ」



そんな事を言い、笑い合いながらコーヒーとお茶で乾杯した。









ーーーーーーーーーーー









次の日、散歩に出かけると言うりゅうに、沖矢は「一緒に行ってもいいですか?」と言ってきた。



「別にいいけど・・・あんた最近どうしたの?」



「どうしたの?と言いますと?」



首を小さく傾げながら聞き返せば同じく首を傾げる沖矢。



「・・・・いや、なんか妙に私に対して気を遣ってない?」



「そうですか?」



「あー・・気を遣っているというよりは・・・何か心配事でもある?」



「・・・・・・」



その問いに無言になる沖矢に、りゅうは、溜息を一つ吐いた。



「別に言いたくないなら構わないけど、今の私あんたから見てそんなに心配な要素ある?」



どっちかっていうと、今は精神的にも落ち着いてる方だと思うけど?と言えば沖矢は困ったように笑った。



「・・・そうですね。今のあなたを見ていて心配だとそう思う事はないですよ」



どちらかと言えば明るい感じさえするのだから。けれども・・・



「じゃあ・・・」



なんなのさ。と言おうとすれば、スッと近づく沖矢。



そして突如口づけを落とされた。




「んっ・・・・・」




直ぐに離された口づけではあったが、いきなりの為に目を開いたままだったりゅうは、呆れたような表情で「・・・なに?」と沖矢へともう一度溜息を吐いた。



「あなたを見ていて心配なのではなく、私が後悔したくないからですよ」




「は?」




「私があなたから目を離したくないだけですので、お気にせず」



チュッと額へと口づけを落とす沖矢に、少しだけ頬を染めてプイッとそっぽを向きながら「・・・あっそ」と素っ気なく返すりゅうに、彼は喉を鳴らした。




そして散歩しに行く時は必ず付けているヘッドフォンを外した。



「おや?いいんですか?」



「・・・別に昴が居るならいらないでしょう?」



「!!・・・嬉しい事を言う」



「はっ・・!?馬鹿じゃないのっ・・別にそういう意味で言ったんじゃっ・・・・」



「分かった分かった」



沖矢の言葉に顔を紅くし、バッと口元を抑えて慌てるりゅうに、沖矢は喉を鳴らしながらポンポンと彼女の頭を優しく撫でた。




「っ・・・・・」



何言っても結局は墓穴を掘りそうだと思ったりゅうは、必死に言葉を飲み込み、顔を逸らした。



ってか、口調っ・・・。と言えば、「失礼」と悪びれた様子もなく返ってきた。



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