その願いは想像の斜め上(1/3)
「じゃあな・・・・」
カチャッと銃口を向けられたりゅうを見て、蘭や園子が息を飲んだ。
「っ・・・くっ・・・・」
「・・・・・ユウナ」
顔を俯かせて肩を震わす隣に居るユウナの様子に、りゅうは呆れたように名を呼べば・・・
「あはっ・・・ははっ・・やばい、お腹痛いっ・・・くくっ・・・」
お腹を抱えて笑い出したユウナに、キョトンとする蘭達、そして銃を構えていた男もキョトンとしたが、直ぐにハッと鼻で笑った。
「何がおかしい?恐怖で気でも狂ったか?」
くくっと楽し気に口角を上げる男にユウナはフッと笑った。
「何がおかしい?そんなの決まってるじゃない。あんたたちが馬鹿だから」
「なにっ?」
ユウナの馬鹿にしたような笑いに銃を構えている男はピクッと青筋を立てて睨む。
「今の会話、全員聞こえたな?奴らの取引場所**はフェイク。本命は米花百貨店の改装中の店だ。すぐに向かえ!」
いきなり聞こえてきた声に、男が驚きながらそちらへと拳銃を向けた。
「なっ・・・テメェっ・・・雨宮!?」
ピっと携帯を切る音が聞こえてきてりゅうもユウナも振り返った。
そこには先ほどユウナが蹴り飛ばしたはずの雨宮の姿。
「・・・やっぱり」
「え?えぇ?」
「ちょっ・・・どういうこと!?」
コナンの言葉に蘭も園子も意味が分からず、雨宮と呼ばれた男と、りゅう達とを交互に見る。
「先ほど、ユウナさんが死んだ演技を見せた時、彼が生死を確かめたんですよ?その時彼は確かに‘死んでる’と言いまいした」
沖矢の言葉に煙草に火を点けてフッと笑う雨宮と呼ばれた男。
「あの場にお前さんみたいな頭が回る奴が居なくて良かったぜ。お前が居たら一発で俺もマトリだってバレてたからな」
ユウナが生きていたという時点で、雨宮の敵という演技は見抜かれていただろう。ただあの場に居たのは頭の回らない雑魚ばかり。沖矢やコナンの様に直ぐに違和感に気がつく奴らは一人もいなかった。
銃口をりゅうへと向けている男に雨宮が同様に銃口を向けた。
「お前らの今回の取引は終わりだ。・・・いや、今回の・・・じゃねぇな。お前ら組織は今日で潰させてもらうぜ?」
「くっ・・・まさかここまでよんでいただとっ・・・!?だ・・・だがっ、数は俺たちの方が多いはずだ!マトリの奴らは一度目の情報の**へ少なからず何人も向かわせたはずっ・・・」
悔し気に歯を噛み締める男にユウナはフッと笑った。
「私が流した情報、あれねータネがあるの。一回目の情報はフェイク。二回目の連絡を待てって命令を出してるから誰一人、一回目に言った**には向かってないよー?」
「頭が回らない雑魚ばかりだと高を括るほど愚かじゃない。あんたたち組織は私もマークしてたからね。あの五反田に麻薬を回していた疑いがあったから」
だけども尻尾をちっとも掴めなくて、その組織が大きすぎて、堂々としすぎててどうやって手を出せばいいか分からなかった。
だからこそ、情報自体は集めてはいたけれど潰すまでには至らなかった。
けれど、あの日ユウナに会って状況が変わった。
ユウナと雨宮がマトリで今、麻薬取引の大組織を潰す為に2年潜入していると聞いた。
そして大きな取引があり、幹部連中も全員出てくる、という事を聞いて潰すなら今しかない。手を貸して欲しいと言われて二つ返事で手を貸した。
筋書きは行った通り。ユウナとは仲が悪いフリ。雨宮とは知らない設定で、ネズミを炙り出せば一人は自由に動けるようになる。
そこでユウナか雨宮を殺した事にすればいいという計画を立てた。その計画は上手くいった。ただ、雨宮が生死を確認すればユウナが生きていると分かった時にばれる可能性があったがそれは賭けだった。
その賭けは私たちの勝ち。そこまで気にするような奴はいなくて助かった。
ユウナが雨宮を気絶させて私とユウナがグルだったと言う事実をあんた達に見せ、あんた達に私たち以上に上手だと思わせる。
そうすることで私たちが負けたと降参し、絶望すればあんた達は優越感に浸りベラベラと本当の事を話す。
「ここまであんたの予想通りってマジ怖い・・・」
「あー、敵じゃなくてよかったぜ」
りゅうの左肩にユウナが肘を置き項垂れ、雨宮はりゅうの頭に腕を置きフッと笑む。
「悪いね。全部計算通りなの・・・あんた達の敗因は、ネズミは一匹だと決めつけていた事ね」
重い、と雨宮とユウナの腕を払いながら言い、雨宮から銃を借りる。
「・・・空砲じゃ・・・」
「ねぇーよ。一発目から弾が入ってる」
ユウナのビビりと一緒にすんな。と雨宮が言えばユウナがムキーっと怒る。
「だっ・・・雨宮!あんただって自分に向けられたら怖くない!?りゅうの腕なんか知らないし!!」
「まぁ・・・腕は俺も知らねぇけど、銃よこせって言う位なんだから大丈夫なんじゃないか?」
「適当かっ・・・・」
「ねぇ、今切羽詰まってる状況ってわかってる?こっち三人。向こう大人数ね」
ユウナと雨宮のやり取りに呆れながら言えば二人は「へいへい」と返事をして銃を構えた。
「・・・三人で何が出来る!?」
相当頭に来ているのか銃を構えている男の指が引き金を引こうとしていた。
ーーーパァン!と発砲音の後、ドガンッーーと小さな爆発音が鳴った。
「ぎゃぁぁぁぁああ!!」
「手が吹き飛んだくらいでうるさいよ」
「いや、吹き飛んではないから。ってか・・・命中率こわっ!何?なんで爆発?」
りゅうの言葉にユウナがツッコむも、今何が起こったかが把握は出来なかった。
銃を発砲する瞬間、りゅうの方が数秒早く引き金を引いた。
そして次の瞬間、銃を構えていた男の銃が手元で爆発し、男の手は血塗れになったのだ。
「・・・・銃口を撃ち抜いた・・・?」
ポカンとする雨宮。その口から咥えていた煙草がポロッと落ちた。
「銃の腕が・・・なんだって?」
「「・・・いえ、ナンデモナイデス・・・」」
りゅうの言葉にユウナと雨宮は棒読みで返した。
「くそがっ・・・テメェら!!ぶっ殺せ!!!」
手を庇いながら手下へと命令を出せば手下たちは「おおーーー!!」と大声を上げながら向かって来た。
「銃持ってる奴らは私が全て撃ち抜くからそれ以外はよろしく」
「おう!・・・ってちょっと待て!銃持ってる奴ほぼ居ねーし!!」
「りゅう!あんた自分だけ動かない気!?」
雨宮が一度返事をした後、ガン!とショックを受けたようにツッコみをいれ、ユウナは向かってくる男たちの攻撃を避けながら怒鳴った。
「元々はあんたたちの仕事でしょうが。人に頼ってばっかいないで働きなさいな」
フゥーと、煙草を吸いながら傍観しているりゅう。
「・・・・まぁ、一理あるな」
「納得すんな!!」
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