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もう揺るがない(1/2)







「りゅう、ただいま帰りました」





「ん、お帰り」




先に家に帰っていたりゅうがソファから首だけを後ろに向けて返事を返せば沖矢の足元にはコナンの姿。



「あ・・・あの、りゅうさんっ・・・」



どこか焦ったような表情のコナンにスッと目を細めた。




「人を事件に巻き込むだけ巻き込んどいて、私を置いて先に居なくなるっていう・・・・」




「ごっ・・ごめんなさいっ!!」




そう、私はボウヤに話があるからと言われたのであの場に居たのだ。待ってたにも関わらずボウヤはジョディと車で病院へと向かって居なくなってしまったのだ。




「・・・嘘、実際忘れてた。ボウヤの姿見て思い出したから・・・・」




だから気にしなくていいよ。とソファで足を抱えて座っているりゅうは顎を膝へと乗せた。




その隣に沖矢が腰かけ、横の一人の椅子にコナンが座った。




「・・・・どうかしたか?」




ピッと変声器の電源を落とし、声を赤井のモノへと変える沖矢。




「・・・・もうツッコむのも面倒だわ・・・」




その顔でその声を止めて、と毎回言っても聞きゃしない。




私の事はいいからとりあえず話を進めて。と言えば沖矢とコナンは顔を見合わせた後、ゆっくりと話し出した。




安室が公安であることが確定したと沖矢の調べで分かったようだ。




「公安・・ねぇ」




「組織に居た時から疑ってはいたがな」




りゅうが呟けば沖矢が答えた。




「じゃあ最悪の事態は免れる・・かな?」




コナンが恐る恐る言えば沖矢は「さぁどうかな・・・」と意味深な言葉を呟いた。




「え?どうして?」




「・・・・そういやあんた、安室さんに相当毛嫌いされてるみたいだしね」




「え!?」




「赤井秀一に対して彼が抱く感情は憎しみに近いだろうが・・・それがどこまでなのかは分からんな」




「だったら危ないんじゃない?彼、組織の最深部まで食い込むのにバーボンとして手柄を上げたいのだとすれば・・・」



FBI相手に相当喧嘩腰だった彼を見れば多分、あんたたちを犠牲にすることを何とも思わないだろうし。とりゅうが言えばコナンはジッと何かを考え込んだ。




「・・・・向こうが仕掛けてくる前にこちらが仕掛けるしかないかもしれないね」




「ホォー?何かいい策があるのか?」




「・・・・・・」




コナンと沖矢のやり取りを聞きながらりゅうは、安室の車の中でのやり取りを思い浮かべていた。





「−−−?りゅう!」




いきなり名を呼ばれてビクッとするりゅう。




「え?何?」




ハッとして沖矢を見れば彼とコナンは心配そうにりゅうを見ていた。




「・・・大丈夫か?」



「・・・うん、ごめん」



心配そうな彼の声に前髪をクシャッと掴み小さく息を吐く。




「・・・・・・・・」




そんなりゅうの様子を見ていた沖矢がコナンへと目を向けた。




「ボウヤ、りゅうの調子が悪いようだ。明日の朝一で作戦会議としないか?」




「え?・・・うん。僕は全然大丈夫だよ。さっき話した内容で手配はしておくから詳しい事は明日・・・・」




「あぁ、申し訳ない。送っていこうか?」




「いや、大丈夫。隣の博士の家で泊まらせてもらうつもりだから!」




そう言いながらコナンはピョンッとソファから降りて笑顔で手を振った。




「え?あ・・・私に構わず続けていいよ?」




アタフタし始めるりゅうに、コナンは笑って大分話は終わったから後は細かい設定だけだし明日で大丈夫!とボウヤは隣の博士の家へと帰って行った。




話が大分終わってる?・・・・私どんだけボーっとしてたんだよ・・・;と自分自身に呆れて溜息を吐いた




コナンを玄関で見送った後、沖矢が戻ってきて前髪を掴んだまま顔を俯かせているりゅうの傍へと向かった。




ソファに座るりゅうの前に回り手を握る沖矢。




「昴・・・・」




「何かあったのか?」




「・・・・・・・・・・・」



顔を俯かせるりゅうに、沖矢は困ったように笑い、変装を解いた。



「ちょっ・・・・」



「今はもう夜中だからな」



大丈夫だろう。と言い切る赤井に小さく溜息を吐いた。




「どうした?バーボンと何かあったのか?」




バーボン、その言葉でビクッと肩を震わせるりゅう。




その様子に赤井はやはり彼絡みか・・・と確信した。




「・・・・ねぇ、秀一はさ・・・私がやってる事を止めたいと思う・・・?」




「・・・・復讐と言う名の遊びの事か?」




赤井に言われた言葉にコクンと小さく頷けば彼は「ふむ」っと考え込んだ。




「・・・・・・・・」




暫しの無言にりゅうは恐る恐るそちらへと目を向ければ赤井がその視線に気がついたようで・・・・



「前にも言っただろう?俺はお前を否定はしない」




「・・・・・・」




「確かに危険な事や怪我をしてくることに関しては止めたいとは思うが、俺が止めた所でお前は聞かないだろう?」




「・・・いや、聞かなかったら無理やり聞かせるじゃん」





「時と場合による。お前が投げやりに見える時、情緒が不安定な時、俺が見る限りで危険だと・・・命に関わる事であればそれは止めるさ」




例えお前がどれだけ抵抗しようともな。とフッと笑いながら言う赤井にりゅうはヒクッと頬を引き攣らせた。




「それ以外は・・・別だ。お前がやりたいようにやればいい」




「・・・・・」




「お前は復讐を止めて欲しいのか?」




「・・・・いや」




「だろうな。だったら止めんさ」




「・・・・どうして?」




「お前はずっと独りで闘ってきた。それは確かに間違っている時もあったかもしれん。だが・・・・お前が今こうして生きていてくれた。だから俺はお前に会えたんだ」




フッと優し気に笑う赤井にりゅうは頬を染めた。




「復讐がお前の生きる意味だった。それを取り上げて俺の傍でただ生きていて欲しいと願えばお前は今以上に笑わなくなるだろうな・・・」




「・・・・・・」




赤井の言葉に苦しげな表情をして俯くりゅう。




許せないんだろう?自分自身が・・・



だから、幸せになる資格がないとお前はいつも苦しんで・・・



最近笑う様になったと言っても数える程度、雰囲気が柔らかくなったとしてもそれ以上に自分自身を責めてーーー



「っ・・・・・」



赤井の言葉にギリッと歯を食いしばるりゅう。




お前から生きる意味の‘復讐’を取り上げればお前は今以上に苦しむことになる。



復讐だけが自分に出来る死んでいった者たちへのせめてもの償いになるのなら・・・・



そう思ってお前は死んで楽になることよりも、生きて苦しむ生き方を選んだ。




「・・・お前が生きてくれてたから俺はお前に会えたんだ・・・りゅう」




だから・・・例えその生き方が世間一般的には間違っていようとも、俺はお前の生き方を否定したり取り上げたりはしない。



「お前が・・・生きてさえいてくれれば俺はそれだけで構わない」



だから・・・どんなに無茶をしようと必ず帰ってくると・・・俺の隣へ戻ってくると約束しろ。と赤井は寂し気に笑った。




「・・ふふっ・・・久しぶりのっ・・・こんな時まで上から目線っ・・・・」




笑いながらもポロッと涙を零すりゅう。




「・・・・悪い。こんな言い方しかできなくて・・・・」




「昴ならっ・・・昴の時ならもっと言葉が出てきそうなのにね」




同じ人間なのに、変な人・・・とりゅうはフッと笑った。




「・・・もうお前は独りじゃない。俺にも背負わせろ・・・」



俺はお前と・・・ただ甘ったれたい関係じゃなく・・・そんなお前も受け入れて支えていきたいとそう思ってる・・・・





「・・・うんっ・・・ありがとっ・・・秀一」




涙を流し、ソッと赤井へと抱き着くりゅうに応えるように赤井は抱きしめ返した。




暫くすればスゥスゥと聞こえてくる小さな寝息にフッと笑い、額へと口づけ抱えた。




二階へと行きベッドに横にした後、サラッとりゅうの髪を撫でて寂し気に微笑む赤井。




「・・・バーボンに復讐は望んでないとでも言われたか?」




兄にそっくりな彼に言われた言葉が、こいつにとっては兄に言われたような錯覚に陥ったのだろう。



今まで一度もブレずに復讐だけに自分の生きる意味を置いて貫いてきた。



それはきっと、止める奴が誰一人居なかった事、止める人間がいたところでそれはこいつにとってはお奇麗な人間で、失った事など何ひとつない人からの言葉で・・・



りゅうには一切響かなかったのだろう。こいつの復讐心が揺るぐことはなかっただろう。それがバーボンの言葉で揺らいだということは・・・




「安室透、いや降谷零・・・やはり銀白夜と何か関係がありそうだな」




顔がそっくりな時点で真っ先に思い浮かんだのは双子の可能性。



だが、調べてみたが降谷、の名字で白夜と言う名はHITしなかった。逆もまた銀の名字に零はHITしなかった。




違う方向性から調べてみるか。と赤井は小さく呟いた。




「・・・あまり自分を責めるな」



スゥスゥと眠りながらもその表情は悲しげで・・・・



お前は十分に苦しんだ。もう許されてもいいはずだ・・・



そもそもお前が悪いわけではないだろう・・・?



それでも自分自身を許せないのだろう。




赤井はそんなことを考えながら横に腰かけりゅうの頭を撫で続けた。




「いい加減、自分を許してやれ・・・・そんな言葉、お前は望んでないんだろうな」




赤井は悲痛な表情を浮かべながらも口元に小さな笑みを浮かべりゅうの寝顔を見つめていたーーー



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