それだけで・・・(1/2)
「ねぇ・・・・・」
「はっはいぃぃ!!!?」
声を掛ければその男はビクッと肩をビクつかせて大げさに反応した。
それを呆れながら溜息を吐いて不機嫌な表情をそのままに‘ここ’にきた目的の人物の名を言う。
「佐藤って女刑事・・・居るでしょう?呼んできてくんない?」
「はいっ!!佐藤刑事ですね!今すぐに!!」
何故か少し顔を紅くしたまま走り去る警官を首を傾げながら見送り、椅子に座った。
「・・・・・・(視線がうざい・・・)」
りゅうは今警察署に来ていた。
入り口にある椅子に腰かけて苛々しながら待っていれば驚いたような声で自分の名を呼ぶ声が聞こえた。
「りゅう!?・・・まさかと思ったけど・・・」
佐藤は驚いていた。自分を呼びに来た警官がイヤフォンを耳につけた綺麗な黒髪の女の人が自分を訪ねてきていると言われたが、真っ先に思い浮かんだのがりゅうの姿。
だが、彼女が態々嫌いなこんな所に来ているとはどうしても思えなかったのだが・・・・
「・・・・いつから呼び捨て?」
「あぁ・・・嫌だった?」
「別にいいけど・・・・」
「じゃぁいいじゃない!」
パァン!と背中を叩かれ笑顔の佐藤を恨めしげに見た。
「・・・・・場所変えたいんだけど・・・」
「あぁ・・・私もうお昼休憩なんだけど一緒にどぉ?」
佐藤の提案にものすごく嫌そうな顔をした後、りゅうは渋々OKを出した。
「・・・・・・・」
「でね!」
無言でご飯を食べるりゅうと笑顔のまま世間話が止まらない佐藤。
「・・・・・・」
「あっ!そう言えばなんか私に用?」
ある程度話し終わったのか、佐藤は漸くりゅうの話を聞く体制になった。
「・・・・・あれから毎日ホテルに来てるって聞いたから・・・」
ボウヤに・・・そう言えば佐藤はあぁ!と手を打った。
「そう!あなたあの時様子がおかしかったから・・・もう大丈夫なの?」
心配そうな佐藤の表情にりゅうは呆れ顔を返した。
「・・・いままで散々話した後に心配?」
「ごめんごめん;あなたが訪ねてきてくれたのが嬉しくて・・・ついね」
ペロッと舌を出し、両手を合わせる佐藤に溜息を吐いた。
「・・・・私が心配してるって思って態々元気な顔を見してくれたんでしょう?」
ありがとう、と優しく笑う佐藤にりゅうは首を傾げた。
「何でお礼?」
「だって・・・嫌いなのに、そんな事を後回しに会いに来てくれたんでしょう?」
困ったように笑いながら言う佐藤にりゅうは佐藤も昔の話を聞いたのかと悟った。
それから特に何かを話すわけでもなく、食事が終わり会計へと行く。
「・・・・いい」
「え?でも・・・」
会計をしようとする佐藤より先にりゅうがお金を出せば佐藤は遠慮がちに言葉を言う。
「・・・・心配かけたお詫び。これでチャラね」
素っ気なく言うりゅうに、佐藤は笑顔になった。
「わかったわ。ごちそうさま、りゅう」
ニコッと笑う佐藤は本当に嬉しそうで・・・
店の外に出れば佐藤はじゃぁね!と手を振り走り去ろうとした。
「ねぇ・・・・」
「え?」
その背を呼び止めれば彼女は振り返った。
「私が嫌いなのは警察であって、あんたが嫌いなわけじゃないから・・・・」
でも、好きってわけじゃないから、勘違いしないでよね?そう言ってりゅうは、じゃぁね、と佐藤に背を向けた。
その言葉に佐藤は嬉しくなり笑顔になった。
「りゅう!!またご飯食べようね!!友達として!!」
ブンブンと大きく手を振り大声で言う佐藤にりゅうはこけそうになった。
「・・・・誰が友達?ってか声大きいっつーの・・・」
後ろを見て呆れ顔で呟くが佐藤はもうすでにこちらを向いておらず、スキップをしていた。
そんな様子を見ながらもう一度溜息を吐いたりゅうの表情は少し笑っていたように見えた。
プップッ!
車のクラクションが聞こえて振り返れば後ろから来た赤い車に目を細めた。
スバル360・・・なんて言うか・・・シャレで買ったのだろうか・・・この車は・・・・
「りゅう、用事は終わりましたか?」
「・・・えぇ」
隣に止まった車は窓が開いたと同時に赤井とは似ても似つかない細目の優男の姿。
「乗っていきますか?」
「・・・・そうする」
助手席へと乗り込んだりゅうは溜息を一つ吐いた。
「どうでした?」
「・・・・警察は嫌い。視線もうざいし佐藤もうるさい・・・・」
「・・・の割には結構嬉しそうな顔してますよ?」
無表情で、どこか疲れたような表情を浮かべるりゅうだが、沖矢からすれば多少の変化が分かるようになってきた。
「・・・・あんたの目がおかしいんじゃない?そんな恰好してるから・・・(やっぱ慣れない・・・この姿の赤井に)」
馬鹿じゃないの?と言わんばかりのりゅうの表情に沖矢は、ははっと笑った。
「りゅうは随分と毒舌になりましたね」
「・・・・・最初からこんなもんだったでしょうーが・・・」
フイッと窓の方を向きながら言うりゅうに沖矢は会った頃を思い浮かべていた。
「・・・確かにそうでしたね。もしかしてまた慣れるまで(この姿に)そんなに素っ気ないんですか?」
困ったように笑う沖矢をチラッと横目で見て小さく溜息を吐いた。
「・・・なぁーんか・・・調子狂うんだよね・・・」
ポスッと深く座席に座り込みながら疲れたような表情を浮かべる。
「・・・・・・」
赤信号で止まり沖矢はチラッとりゅうに目を向ければ彼女の視線は外を見ていた。
スッと近づく沖矢に気がつきりゅうは横を振り向いたと同時に唇に触れた熱に咄嗟に出る右手。
ーーーブンっ!
その右手を難なくパシッと受け止め口づけを止めないままりゅうを見れば、呆れたような表情を浮かべていた。
そんな様子に沖矢は内心苦笑いした。
スゥッと目を開き、赤井の翡翠の瞳が現れりゅうの視線を捉えた。
「っ・・・・」
瞳と瞳がぶつかった瞬間、一気に顔を赤らめるりゅうに沖矢はフッと笑って口づけを放した。
「なんっ・・・」
真っ赤になったまま口元を押さえて言葉を詰まらすりゅうは何事もなかったかのように、信号が変わり車を走らせた沖矢を見た。
「ククッ・・・顔が紅いですよ?」
「・・・うっさいわ」
沖矢の口調だが、喉を鳴らす笑い方は赤井と被り、りゅうは顔を紅く染めたまま外の景色に目線を戻した。
暫く走らせていると沖矢の携帯が鳴った。
ピピピピッーーー
「はい、沖矢です」
そんな様子を横目で見ながら視線を外に戻せば電話が終わったと同時にいきなり方向転換、Uターンする車に驚くりゅう。
「・・・なに?」
「なんでも子供たちを代わりに迎えに行ってほしいそうです」
「は?」
大分端折って説明をする沖矢に顔を顰めれば説明をしてくれた。
なんでも今子供たち、少年探偵団が釣りに行っていて帰りに博士が迎えに行くことになっていたのだがなんでも自分が発明した物に不具合が多発したため修理に追われて迎えに行けないんだとか・・・
「・・・そういやこの前もなんかボウヤから掛かってきた電話でガソリンを水に変えてたよね・・・」
「あぁ、そう言えばそんな事もありましたね」
FBIの切れ者が今は暇人でボウヤ達に使われ放題だな・・・
ははっと呆れ気味に笑えば、「なにか失礼な事でもかんがえてませんか?」と聞こえて静かに「・・・イイエ」と答えた。
車を停めて船に乗れば沖矢はなぜか先端で立っていた。
「あんたさぁ、何でそんなとこで立ってんの?」
「風が気持ちいいですよ?」
ご一緒にいかがですか?と聞いてくる沖矢に、いい。と答えた。
遠くの方から子供たちの姿が見えた。
子供たちは博士が来ると思っているのだろう。
博士ーー!っと大きな声で手を振っていた。
「・・・そういや哀ちゃんに怖がられてんでしょう?」
「えぇ・・・その様ですね」
「大丈夫なの?」
「まぁ、何とかなるんじゃないですか?」
適当かっ!
next
back