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魅せられ見せて(1/2)



「りゅう、出かけませんか?」


「は?」


いきなり言われた言葉に間の抜けた声が出た。いきなり何を言い出すんだ。こいつ・・・。


「その何言いだすんだ、こいつ。みたいな顔するの止めて頂けませんか?」


「いや、普通そう思うでしょうよ」


「私は別におかしなことを言っているつもりはありませんが」


小さく首を傾げながら、何がおかしいですか?と本気で聞いてくるこいつに小さく頭を抱えた。


「言葉はいいよ、普通に出かけませんか?なら分かる」


「だから普通に出かけませんか?と聞いているんですが」


「時と状況を考えろって言ってんの!今何してると思ってんの?」


「夕飯の準備、ですよね」


そんなのは見ればわかります。と沖矢が言えばヒクッと頬が引き攣った。


「今から夕飯食べようとしてんのに出かけるわけねーだろーが」


「ですから、外で食べませんか?と誘ってるんです」


「・・・・それはもうすぐご飯が完成する私に対しての嫌がらせかなにか?」


外食・・・?したいんだったらもっと早く言えよ!もうすぐ出来上がるというのに今更外で食べようとか・・・私の作ったご飯は食べたくないと?喧嘩売ってんのかっ!!


「ああ、いえ、そういう事ではなくて・・・」


「じゃあどういうことよ?」


もうこいつが何を言いたいのかさっぱり分からん。


「りゅうが作ってくれたご飯をお弁当箱に詰めて外で食べませんか?」


「は?」






「・・・・・ねぇ、あんた喧嘩売ってる?それとも私を怖がらせたいわけ?」


突拍子もない沖矢の言葉から早数分。間の抜けた返事をし、固まるりゅうをよそ目に沖矢はお弁当箱とバスケットを取り出し、ドンドンとお皿に盛ろうとしていたおかずたちを詰めていった。


我に返った時には「早く行きますよ」と準備万端の彼の姿。意味が分からず聞こうとするも彼はドンドンと先へと歩き出し、ただただ後を追った。そして辿り着いた場所はなぜかお寺。


肝試しにでもきたのか?こいつは・・・;いや、だが肝試しにお弁当は・・・ないだろう。


「あなたがお寺程度で怖がるほど可愛らしい神経をしていないのは承知で来てますよ」


「やっぱ喧嘩売ってるだろうっ!?」


可愛らしい神経をしていなくて悪かったな!ってか、可愛らしい神経ってなんだよ!?可愛らしい神経ですねー、なんて言われても腹立つ事には変わりないが・・・


「ほら、馬鹿なこと言ってないでこっちです」


そう言われて有無も言わさず手を引っ張られた。するとすぐに「着きましたよ」と言われて小さく溜息を吐いた。


「だからこんな所になに・・・が・・・」


呆れから一気に驚きの表情を浮かべるりゅうに、沖矢は満足そうに笑みを浮かべた。


「な、に・・これ?凄い・・・綺麗」


目に飛び込んできたのはハラハラと視界一杯を舞うピンク色の花びら。そして暗い闇の中、月明りだけでそれを照らしていてーーー


「綺麗でしょう?この桜をあなたに見せたくて連れてきてしまいました」


そう、お寺の裏に続く階段を上った先にあったのは、少し広い場所に一本の大きな桜の木が立っていたのだ。


「・・・・・・・」


その神秘的な光景に、ただただ目を奪われて言葉が出なかった。


「私もこの場所を初めて見た時、今のあなたのように言葉を失いました」


「・・・この光景が綺麗で?」


ようやく言葉を発したりゅうに沖矢はニコッと笑い「えぇ」と答えた。それから二人は持ってきたシートを広げて沖矢が詰めたりゅうの作ったご飯と、お酒を取り出し並べ始めた。


「ほら、いつまで立ってるんですか?」


乾杯しましょう。と手渡されたグラスにはお酒がもう注がれていて「ありがとう」とお礼を言いながら座り受け取った。


「乾杯」


「乾杯」


差し出されたグラスにカチン、と小さく鳴らす様にぶつけ夜のお花見がスタートした。


「・・・よくこんな場所知ってたね」


「以前たまたま昼間に通りがかった時に見つけまして」


「ふーん。最初に言ってくれればお弁当作ったのに」


「驚かせたかったものですから」


「あー、そう」


十分驚いたわ。と半目で笑えば沖矢は「良かったです」と小さく笑みを零した。


「でもなんで夜?お花見って言ったら普通は昼・・・・」


「最初はそのつもりだったんですけどね。ここ結構人気みたいで昼間は人が大勢居てお花見をしているそうです」


「・・・・私の為?」


「それもありますが・・・・・」


人混みが苦手な私に、昼間混雑するこの場所は嫌がるだろうと気を利かせてくれたのだろう。しかし、彼の口ぶりではまだ理由があるみたいで、小さく首を傾げた。


「私自身、昼間あれだけ綺麗なのであれば、満月の夜みる夜桜はどれだけのものか見て見たくなりまして」


「昴も、今日初めてなの?ここの夜桜・・・・」


「えぇ、どうせなら一緒に見たいと思いましたので」


「・・・そっか。ありがとう、昴」


「いえ、喜んで頂けたようで良かったです」


それからはお互い、何を話すわけでもなくただ、桜を見上げながらお酒を飲み時々目が合えば、フッと笑みを零す。この空気が、この空間が堪らなく好きでーーー
言葉がなく無言でも、その空気がただただ居心地がよくて、この人と一緒に居るのが何よりも落ち着くと思える瞬間で・・・


りゅうが桜を見上げれば沖矢も釣られて上を向いた。


「っ・・・・・・」


ふと彼へと目を向ければそこには目を細めて、優しげな表情で笑い空を、桜を、舞っている花びらを見つめる沖矢に目を奪われた。息を飲み、その彼の表情に魅入ってしまい、その視線に気が付いた彼と目が合えば、カァと頬に集中する熱。咄嗟に顔を俯かせた。


「どうかしましたか?」


フッと笑みを零しながらゆっくりとりゅうの頬に手を置く沖矢。頬に触れた瞬間、ビクッと肩を揺らし、更に顔を真っ赤にさせるりゅうはただただ目をギュッと瞑った。


赤井秀一という男に惚れているはずなのに。何度も拒絶を示した事がある沖矢昴の姿なのに目が離せない位魅入ってしまった自分が情けない様な、恥ずかしい様なそんな気持ちになってーーー


それを全てわかっているかのように彼は変声器の電源を落とし耳元で囁いた。


「そのまま、目を瞑っていろ」


彼の声がすぐ近くで聞こえ、ゾクッとしたものが背中を這い、彼に言われるがままギュッと目を更に強く瞑った。


すると突如落とされる口づけ。しかしそれに別段驚きはしなかった。それどころか待っていた、と言えるかもしれない。


「んっ・・・はぁ・・ぁっ・・・・」


どれくらい口づけを交わしていただろうか、最後にチュッとリップ音を立て口づけが放された時には、薄っすらと目を開けて沖矢を見つめるりゅう。


「くくっ、どうした?まだ足りないか?」


ギュッと頭を胸元へと抱きしめられて耳元で言われた言葉に、カァッと顔をまた赤くさせた。


「ばかっ・・・・!!」


ボスッと彼の胸元を軽く殴れば「冗談だ」と笑って離された。


「さすがの俺でも時と場所を弁えるさ」


そう言いながら立ち上がる沖矢にりゅうは首を傾げた。


「どこ行くの?」


りゅうの問いに沖矢はある方向を指さした。その先にはお手洗いの文字。「いってらっしゃい」と先ほど赤くなった頬を鎮めようと素っ気なく言えば「怖くないか?」と言われて、ジト目で睨む。


「喧嘩売ってんの?」


「なるべく早く帰ってくるさ」


「だから怖くないって言ってんでしょ!?ってかトイレ程度にそんなに時間が掛かるかっ!!」


りゅうの言葉に喉を鳴らしながら歩き出す沖矢。「たくっ・・・」と小さく溜息を吐きながらふと思った事があった。


「・・・あいつ、口調変えんなって言ってんのに」


毎度毎度、沖矢昴の姿で赤井の声と口調は止めろと言っているのに聞きゃあしない。もう最近ではツッコむのも疲れてきた。


ハァー、ともう一度溜息を零すと、ヒュゥーっと風が吹く。それに合わせて桜の花びらも一際大きく舞い上がる。


「本当、綺麗・・・・桜」


桜、と口に出せば寂しさも込み上げてきて、無性にその桜に触れたくなった。立ち上がりゆっくりと桜の木に近づき、ソッと手を置いた。


トンッーーーと、木に額をつけ桜と会話ができないだろうか?とそんな馬鹿な事を考えた。桜の木と話したいのか、それとも昔失った親友の声が聞きたいのかーーー


「・・・本当、馬鹿」



フッと笑みを零し呟いた言葉。


「何が馬鹿、なんだ?」


突如聞こえた声とフワリと包まれた身体。一瞬ビクッと肩を跳ねさせたが、声が赤井で、抱きしめられたその感覚は落ち着くことが出来る最愛の人の者でーーー


「んー?別に」


さっきまでの自分の心情を悟られまいとするりゅうに、沖矢も気づかないフリをした。



こんなにも綺麗で、美しい景色の中で大切だと思える人をこの腕に抱きしめることが出来るのだからーーーー


「お前は、何があっても絶対に俺が護る」


「・・・ん。私も秀一を護るよ。絶対に・・・」


過去はどうしたって戻らないけれど、その過去を忘れることも、許されることだとも思っていないけれどーーー


それでも、今ある大切なモノを見失わないように、無くさないように・・・自分が護れるのなら護り通せるように、生きていこうと思うんだ。復讐心は絶対に晴れないけれど、自分の生き方、やり方が正しいなんて思ってはいないけれど・・・・


大切なモノを作ってしまった私を、間違っていると気づきながらも突き進むしかない、後戻りなんて出来ない生き方を選んでしまった私なんかを許してくれとは言わないけれど、いつかあなたの言葉で、聞かせてくれますか?


恨み言でもいい、説教でも怒りの言葉でもなんだって構わない、桜の言葉をーーーー





・・・・・・・・・・・・・
(りゅう・・・・)
(ん?)
(・・・・りゅう)
(・・・なに?)
(りゅう)
(だーから、なに・・・んっ、ちょ、こら!)
(今すぐお前を抱きたい)
(だっ・・!?はぁっ!?あんたさっき時と場所を弁えてるって・・ふっ)
(忘れたな)
(うっ・・そ、つけっ・・・ぁっ)
(りゅう・・・)
(そ、んな声でっ、耳元で・・はっ、喋るなっ・・・)
(どこにも行くな、りゅう・・・)
(んっ・・・秀、いちっ・・・?)





キョウ様!当サイトへ遊びに来て頂きありがとうございます!そして企画参加頂きまして本当に嬉しかったです!リクエスト内容に、蘭達と子供達、との書かれていらっしゃいましたが、イチャイチャさせるのに、居ると書けなくて・・・花見、イチャイチャ、夜・・・夜桜!って思考回路が働きまして・・・;
ちょっとキョウ様が希望したものとはかけ離れてしまったやもっ・・・
もしもお気に召しませんでしたら気軽にお声をおかけ下さい!キョウ様のみ!書き直し依頼をお受けいたします!
R指定にいってしまいそうで際どい線でした(笑)でも書いていて楽しかったです!本当にありがとうございました!またいつでも遊びに来てくださいね!次のページにて昴さんがいきなり夢主を襲った訳が・・・!?



          おまけ→

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