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今日も平和です。(2/2)



「・・・・・・」


「りゅう?」


キッチンに立って、ボーっとしているりゅうに気が付き赤井が声を掛けた。


「え・・・?あ、ごめん」


ご飯を作っている最中だった、とりゅうは慌てて手を動かした。


「・・・・・・・」


そんな彼女の様子を見て赤井は「ふむ・・・」と何かを考え込んだ後、ある人物にメールを送った。


「りゅう、今日は少し多めに作ってくれないか?」


「え?」


「もう遅いか?」


「いや、別に大丈夫だけど・・・珍しいね。お腹そんなに空いてんの?」


クスッと笑いながら赤井の言葉通り多めにご飯を作っていった。


「・・・作りすぎたかな?」


テーブルへと並べていれば、自分でも呆れる位の量になっていて困ったように笑みを浮かべる。


「いや、そんなことはない」


「でも、流石にこんなには二人で食べれないでしょう?」


りゅうの言葉に赤井はフッと笑った。


「もう一人居たら・・・丁度いいだろう?」


「はい?」


首を傾げて怪訝な表情を浮かべるりゅうの耳に、来訪者を告げる音が鳴った。


ピンポーンーーー


「こんな時間に誰が・・・って、もしかしてもう一人って」


「くくっ、分かったのなら早く開けてやったらどうだ?」


妹が心配でメールしてすぐに駆けつけた兄である降谷君を・・・、と告げる赤井に「やっぱり」と溜息を小さく吐いた。


ピンポーン!ピンポーン!!


「はいはいはい、聞こえてるし、すぐ開けるからそんなに鳴らさないで」


すぐに玄関へと向かい扉を上げれば、どこか焦っているような兄にキョトンとした。


「?」


「りゅう!大丈夫か!!?」


ガシッと両肩を持たれた。


「−−−え?何が?」


「何がっておまっ・・・ナイフで刺されたってっ」


「刺さってない刺さってない。どこから聞いた?その情報・・・」


そもそも刺されてたら今、家に居ないわ、病院で寝てるわ。と呟けば、「はぁー・・・」と安心したように首を項垂れている兄。


「・・・とりあえず中入ったら?」


「・・あぁ」


走って来たら喉乾いた。と言う兄に「車はどうした・・・;」と呆れるりゅう。そしてキッチンへと行けばそこには一人座って、楽し気に笑っている秀一の姿。


「秀一、あんたね。お兄ちゃんになんてメールしたのよ?」


「俺は普通に昼間あった出来事を要約して送っただけだが?」


「赤井ぃぃぃッ!!おまっ、お前っ・・・りゅうがナイフで刺されて重傷って書いてあったろ!!?」


「降谷君の事だ、大体は想像はつくが・・・大分色んな所が抜けている様だ」


「抜けてる?」


「俺は‘今日、りゅうと出掛けていたが途中、ナイフを持った男と遭遇した。その男は未明、男性を刺し重傷を負わせて逃走中の殺人未遂犯で、りゅうに襲い掛かってきた時にナイフを見てりゅうが一瞬身体を強張らせた’と書いたんだが・・・」


赤井の言葉に降谷は慌ててメールを見直した。


「あ・・・・」


「妹の事になると相変わらず視野が狭くなるのは健在だな」


「私の名前と、刺し、重傷しか見えてなかったわけ?」


どんだけ視野狭いのよ、お兄ちゃん・・・;と座り込んで項垂れた兄の隣でしゃがみ、少し呆れたような表情を浮かべるりゅう。


「返す言葉もない」


「いつもは些細な事でも見逃さない洞察眼を持ってるのにねー」


でも、ありがとう。とりゅうが笑顔で言えば、ポンポンと頭を撫でられてギュッと兄に抱きしめられた。


「お前が無事でよかった」


「・・・うん、ありがと」


「赤井も、りゅうを護ってくれてありがとな」


りゅうを抱きしめたまま、椅子に座っている赤井へと視線を向けて小さく笑う降谷に赤井もフッと笑い返した。


「りゅうを護ると誓っただろう?」


「そうだったな」


信じているさ。と降谷は立ち上がり、りゅうの腕を引っ張った。


「お兄ちゃん、仕事は?」


「もう上がる所だったから大丈夫だよ」


「じゃあ一緒にご飯食べよ!秀一が多めに作れっていうから作ったら多くなりすぎちゃって・・・」


「これはまた・・・凄い量だな」


「酒は飲めるのか?」


「あぁ、今日は待機じゃないからな」


「りゅう・・・」


「はいはい、氷入りのグラス2個とバーボンね」


赤井の言葉を遮り、途中で用意し始めたりゅうを見て、降谷も椅子に座った。カタカタと用意をするりゅうの背を見ながら降谷が赤井へと小声で話しかけた。


「りゅうが、ナイフを見て身体を強張らせたっていうのは・・・」


「血で真っ赤に汚れていたからだとは思うが」


「・・・今もまだ尚、苦しみ続けてるのか」


「さっきまで、上の空だったんでな。降谷君を呼べば少しは気が紛れると思って呼んだんだが・・・・」


歯切れが悪い赤井に降谷は首を傾げた。


「赤井?」


「・・・想像以上で些か妬けるな」


フイッと不機嫌そうな表情を浮かべて降谷から顔を背ける赤井に、一瞬キョトンとして次の瞬間「・・ふはっ」と吹き出した。


「降谷君」


「ははっ、悪いっ・・くくっ、お前でも妬くんだな。しかも実の兄にッ・・・くく」


「・・・降谷君は俺の事をどんな目で見てるんだ」


俺だって妬くさ。さっきまで上の空だったのに、君が来てからは上機嫌でいるりゅうを見ればな。と、つまらなそうに言う赤井に降谷は更に笑った。


「ははっ、出会ってから何度もお前には負けないと思ったが、今日初めて心から思うよっ・・・くく」


「何を?」


キョトンとしながら「楽しそうだね?」とコップを持ってきたりゅうの問いに降谷はニッと悪戯っ子の笑みを浮かべた。


「赤井に勝った」


「は?」


「俺は別に負けたとは・・・・」


「はいはい」


赤井の言葉を途中で遮り、余裕な表情で返す降谷に赤井はフイッと顔を背けた。


「・・・なんかいつもと逆だね?」


よく分からないが、いつもは兄が秀一に突っかかり軽く交わされているのだが、今日は逆でりゅうは「新鮮だわ」と兄とよく似た顔で笑うのだった。



             チャンチャン

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