嘘のような出来事
ーーー・・・っ!おい!大丈夫か!?おい!ーーー
遠くから聞こえてくる声に一気に浮上する意識ーーー
パチッと目が覚めて真っ先に見たのは、ホッとしたような表情を浮かべる髭を生やした男の姿だった。
「っ・・・・!?」
驚いてその男から離れるように後ろへと後ずさり「…誰?」と警戒の色を浮かべるりゅう。
「おっと・・・そこまで動けりゃ大丈夫そうだな。俺は緑川唯」
何もしてません、と言わんばかりに両手を挙げながら笑みを浮かべる男。
「緑川・・・唯?」
「おう。あ、ちなみに後二人、安室透って奴と諸星大って奴がいて・・・」
「・・・は?」
今この男はなんて言った?安室透・・・?諸星・・・大?
目の前の男、緑川と名乗る男が言った言葉に驚きの表情を浮かべるりゅうだったが「どうかしたか?」と首を傾げる目の前の男・・・緑川に動揺を悟られないように「・・・なんでもない」と素っ気なく言葉を返した。
とりあえず現状把握だ。そもそもここは何処だろうか?辺りを見渡しても真っ白の部屋に一つのボックスが置いてあって、その向こうにはいくつもの扉があった。
「・・・・・・・」
「なーんか知らねぇが俺らも目が覚めたらここに居てな・・・えーっと・・」
「・・・名前?名前なら・・・」
ちょっと待てよ?安室透と諸星大が、私の知ってる二人なら偽名を使っている。そして多分この男の名も・・・偽名。本名は名乗らないほうがいいか?と顔を顰めれば目の前で首を傾げている緑川の姿。なんだかそんな彼の顔を見ていると警戒する方が馬鹿らしくなってくる。それがなぜだか分からなかったけれど・・・
「・・・本名を名乗ろうか、偽名を名乗ろうか考え中よ」
「おいおい・・・;そういうのは口に出すなよ」
りゅうの言葉にガクッと肩を落とす緑川に、クスッと笑みが零れた。
「冗談よ、名前はりゅう」
「・・・それって偽名?」
「それはご想像にお任せしますよ、緑川さん」
立ち上がりながらそう言えば、彼は「やれやれ」とため息を吐き、同じように立ち上がった。
「りゅうちゃんはここに来た経緯って覚えてる?」
「・・・・いえ、覚えてないです」
一つの扉を開けようとすれば「待った」が掛かり、肩を掴まれた。
「さっき言った二人が様子見に行ってるからもうちょっと待っていた方がいい」
すると違う扉が開き、ポカンとした表情を浮かべている兄の姿があった。
「・・・あれ?」
「何してんだ、お前?ライはどうした?」
緑川が兄に向って言った言葉に、小さく眉を寄せるりゅう。
ライ?ライと言うことは組織潜入中の時の秀一のコードネームだ。だとすれば・・・過去にトリップした・・・?いや、ない・・・とは言い切れないな。そもそも私がこの世界に居ること自体本当だったたらありえない事なのだ。
「いや、扉を適当に入っていったらここに戻ってきてしまっただけでライならすぐ来ますよ。・・・あ、目が覚めたんですね。よかったです」
ニコッと笑みを浮かべる兄に小さく頭を下げた。
「あ、こいつがさっき言ってた安室透で・・・・」
「・・・目が覚めたのか」
やはり・・・、そうか。
兄の後ろから顔を覗かせたのは秀一の姿だった。しかしその姿は幾分か若い感じがするし何より、長髪であった。
短い髪が、一日やそこらで伸びるわけがない。しかもライ、と呼んでいるのであれば、今現在進行形で組織に潜入中のはずだ。
「こっちが諸星大。で、こっちが偽名か本名かは謎だがりゅうちゃんだそうだ」
偽名?と首を傾げながら秀一と顔を見合している兄たちをよそに、りゅうは口元に手を当てて考え込んでいた。
やはり、何らかの理由で過去にトリップした、もしくは・・・・
「・・・・って、りゅうちゃん聞いてる?」
「・・・え?あ、何?」
「聞いてなかったのね」
いきなり呼ばれた名にハッとし、顔を上げればそこには苦笑いの緑川の姿があった。
「あ、ごめんなさい。で?」
「僕たちが他の部屋を回ってみてきた結論から言うと、各部屋に置いてあるあの箱の中の暗号を解いて出るのが一番早いかと・・・」
安室の言葉と指さす方向を見て、先ほど確認した箱へと近づいた。
箱を開けて中を確認するとそこには一枚の紙が入っていた。
【61 27 11 73 76】
「数字?」
「そのようですね。因みにりゅうさん、暗号とかって得意ですか?」
「・・・嫌いじゃないけど好きでもない」
「え・・・っと;」
りゅうの返しに、安室は困ったように笑った。
「閃く時もあれば全然分かんない時もある位で本格的にはそんなに考えないです」
疲れるんで。といえば「そうですか;」と苦笑いされた。
「俺もサッパリ・・・」
「あなたが向いてないのは知ってます」
「おい」
「ここは僕とライが考えた方が良さそうですね」
緑川の言葉を安室がバッサリと切ると、彼はすぐさまツッコむもスルーされた。
「・・・・・・数字の暗号といえば日本の歴史に一つ、当てはまりそうなものがあったな」
「上杉暗号、ですね」
「上杉暗号っつーとたしか、いろは48文字を7×7のマス目にっていうあの?」
「お前も知ってたのか、スコッチ」
少し驚いた表情をする安室にガクッと肩を落とす緑川。
なんでもいいが、コードネームで呼びすぎじゃないか?ただたんに、偽名を呼びなれていないのか?
「あ・・・か・・・い・・・も・・・ん、か」
暗号を読み解いた安室が言えば、三つの扉のうち、赤く塗られていた門へと向かった。すると今度はそこにまた箱があって、安室と諸星が暗号を解いていて・・・
「・・・・・・」
それを離れた場所で壁に寄りかかって見ているりゅう。緑川はそんな彼女に近づいて「俺たちは用なしだな」と苦笑いを零した。
「・・・そうでもないかも」
「え?」
りゅうが目を向けている方へと視線を向けると、そこには一体の人形がこちらにゆっくりと向かってきていて・・・
「気持ち悪っ・・・」
「ちょ、俺を盾にするな」
カタカタと不気味な動きをしながら近づいてくるソレに拒否反応を示し、緑川の背に隠れたりゅう。
「何してるんですか?」
「・・・・・?」
暗号を解いていた二人が視線だけ向けて不思議そうな表情を浮かべていた。
「いや、なんかいきなりこれがな・・・」
カタカタと不気味な音の中に、妙な音が混じって聞こえて顔を顰めるりゅう。しゃがみ込み、その人形と視線を合わせるようにすると、さらにその音がハッキリと聞こえてきた。
「爆弾・・・・?」
「は?ンなバカな・・・・」
<バクハツサンビョウマエ・・・・>
「いっ!!?」
「早くそこから離れてください!!」
驚く緑川に、大きな声で安室が言うが、人形のしゃべる数字が1を迎える。
<イチ・・・>
「チッ!こうしたほうが早い!!」
緑川の体を横へと押しやり思い切りその人形を蹴り上げるりゅう。その人形は大きく弧を描きそして・・・・
「あ・・・・・」
「え・・・・;」
天井に当たりすぐ真下に落ちるソレは真ん中で暗号を解いていた安室と諸星の隣にポトリと落ちた。
「っ!!?」
二人はいきなりの予想外の出来事に息を飲んだ。
<ゼ・・・・ががっーーーー>
ゼロ、と言う前に人形はショートし壊れ止まった。
「・・・・・・ハァー」
安室と諸星は爆発はせずにソレが壊れた事に安堵し、大きく息を吐いた。
「・・・・なんかごめんなさい」
「いえ、驚きはしましたが結果オーライです」
「ただ、出来れば二人も近くに居てくれないか?」
冷や汗を垂らしながら、りゅうが謝れば安室はニコッと笑いながら返事を返してくれたが、諸星の方は、もう勘弁してくれ。と言わんばかりに額へと手を置き此方に来い、と言ってきた。
「・・・・私のせい?」
「ははっ、俺的には助かったけどな。にしても・・・くっ、ははっ」
ゆっくりと二人へと近づきながら隣を歩いている緑川に問えばいきなり笑い出す彼。
「ライの焦った表情初めて見たぜっ・・・ははっ、あー貴重なもん見れた。りゅうちゃんのおかげだな」
「・・・ふっ、はははっ」
それに反応したのは安室だった。笑う緑川に釣られるように安室も笑い出した。
「そういう安室君だって焦っていただろう?」
笑われていたはずの諸星なのだが、それに対した反応を示さず安室を見る。
「バーボンの場合はそれなりに表情が変わるから珍しくはないが、お前はちっとも表情変えないだろ?」
「・・・・そうか」
「あれ?けど、お前さっき俺らに近づいてくる爆弾の時、妙に焦ってたな。何々?俺の心配でもしてくれたわけ?」
緑川の標的が、諸星から安室へと切り替わり、肩に手を置きながらニヤニヤとした表情で言えば「うるさいっ!そんなわけないだろ!?」と少し照れくさそうに声を荒げた。
「照れ隠しか、安室君」
「お前もうるさい!」
「へぇ、照れ隠し・・・・」
「っ・・・・りゅうさんまで、揶揄わないでくださいよ」
はぁ、と肩を落とす安室に、りゅうはクスクスと笑みを零したのだった。
「仲がいいんですね」
「ただの腐れ縁ですよ」
りゅうの言葉に、少し嫌そうな表情を浮かべて言う安室に「照れんなって・・・」とちょっかいをかける緑川。そしてそれを見てフッと小さく笑みを零す諸星。そんな三人を見てりゅうはある疑問が頭に浮かんだ。
この時は、兄は秀一に対してそんなに敵意を向けていない。ということ。
「りゅうさん?」
ジッと彼を見ていたようでその視線に気が付いた安室が首を傾げた。
「なんでもないです」
「そうですか?」
「何々?りゅうちゃん、こいつに惚れた?」
ニヤニヤとする緑川にりゅうは呆れたような視線を向けた。
「そんな事より先に進むぞ」
「お前は相変わらずノリが悪いな」
「ノリノリな俺が見たいのか?」
「・・・・いや、いい。想像したら気持ち悪ぃわ・・・」
「失礼な奴だな」
「馬鹿なこと言ってないで早くいきますよ。それとノリノリなライなんて想像もしたくありません・・・・・くっ・・・」
「想像してません?」
笑いをかみ殺す安室。
「ノっ・・・ノリノリなライっ・・・ははっ」
なんだか妙なツボに嵌ったらしい安室。
そんなバカみたいなやり取りをしながらも、しっかりと暗号を解き、最後の部屋であろう場所についた。
「ここが最後の部屋みたいですね」
「・・・だろうね」
「でかでかと最後って書いてありゃあそうだろーな」
「だが、暗号らしきものは何もないぞ?」
「だとすると、今までの暗号の中にヒントが・・・?」
難しい顔をして考え込む諸星と安室にりゅうがキョロキョロと辺りを見渡す。
「どうかしたか?」
「え?あー、いや、最初の門からちょっと引っかかってたんですよね。聞いた事があるクイズに似てるなって」
「どこで聞いたんですか?」
「子供の頃・・・何かの本で?」
「内容は思い出せるか?」
「えーっと、まず 赤・白・黄の三つの門がある から赤い門をくぐってーーー」
「最初の場所ですね」
「次に四つのとびらがあって左から二番目に入る」
「あの妙な人形がいたところだな」
「中には五つの窓があって右から四番目から出る」
「確かに扉、というよりは小さすぎる出口があったな」
「出たところにあがる階段があって、それをあがると六つおりる階段があるから・・・」
「あの階段は長かったよな」
「右から三番目の階段おりる。おりたところに七つの穴があって左から五番目の穴・・・」
「七つの穴・・・、最後のこの扉ですね」
「因みにそれ、なんなんだ?」
「ブキミちゃん」
「は?」
緑川の問いかけにりゅうが答えれば、三人は不思議そうな表情を浮かべた。
「昔あった怪談話で、ブキミちゃんっていう妖怪?お化けがいてね」
たった一回、道を教えてくれるからその通りに行けば出られるっていうお話。と言いながら5つ目の扉へと近づくりゅう。
「それって何かオチがあるんですか?」
「オチ?・・・あぁ、夢の中に出てくるんだけど、その教えてもらった道を間違えると永遠に夢から出られなくなるーーーみたいな?」
「お、おい!そこで本当にあってんのか?」
「・・・え?緑川さん怖いんですか?」
「いや、いきなりそんな事聞かされたらこえーだろ?普通・・・しかも」
「彼女の知っている話通りの道筋だったからな。もしかすると間違えればここから一生出れなくなるかもしれんな」
フッと笑い言う諸星に緑川は顔を青ざめさせた。
・・・・・・・・・・・・・・・
(お、おい!慎重に行こうぜ!?その話、りゅうちゃんの子供のころの話だろ!?絶対5番目の扉か!?記憶違いしてねぇよな!?)
(・・・・意外にさっき笑われた事根に持ってます?諸星さん)
(くくっ・・・・)
(あ?)
(スコッチ・・・お前、ライに揶揄われてますよ。一生出られないのなら、僕たち最初の時点でゲームオーバーですし)
(・・・あ!そういえば最初好き勝手扉開けてたな)
(ついでに言うと、堂々と最後って書いてあるんだから片っ端から扉開ければ出られるんじゃない?)
(((あ・・・・・)))
(・・・・緑川さんだけじゃなくて、あなたたちもですか;)
愛華莉様!この度はリクエスト企画にご参加いただきましてありがとうございました!
そして一つお詫びがっ・・・私途中まで勘違いしてて;;
緋色組ってあれですよね!?コナン君ですよね!?途中で気が付いたんですがもう大分書き進めた後でっ・・・><コナン君じゃなくてスコッチ出しちゃいました(汗)
この三人はウイスキートリオでしたよね・・・本当に申し訳ない><
もしも違う話&コナン君がいい!との事でしたら書き直ししたいと思います!ご遠慮なくお申し付けください!本当にすみませんっ・・・
そして!受験!おめでとうございます!お疲れさまでした^^新しい環境で色々と大変ではあるでしょうが、体に気を付けて、無理せずに楽しい生活を送れる事を祈っております!
この様な抜けすぎている管理人が運営するサイトですが、また遊びに来ていただけると嬉しいです!
→おまけ
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