「来たか。さあ!今回の行動についての…弁明を貰おうか!三番隊隊長―――市丸ギン!!!」
「…何ですの?イキナリ呼び出されたか思うたら、こない大袈裟な…。尸魂界を取り仕切る隊長さん方がボクなんかの為にそろいもそろって、まァ……―――でもないか。
十三番隊隊長さんと十四番隊隊長代理さんがいらっしゃいませんなァ。どないかされはったんですか」
「彼は病欠だよ。もう1人は…知らないな」
「またですか、そらお大事に」
何で呼び出されたのか、そんな事は明確だ。
分かっていて彼は笑う。
「てめえ、1人で勝手に旅禍と遊んできたそうじゃねえか。しかも殺し損ねたってのはどういう訳だ?てめえ程の奴が旅禍の5・6人殺せねえ訳ねえだろう」
「あら?死んでへんかってんねや?アレ」
「何!?」
「いやァ、てっきり死んだ思うててんけどなァ。ボクの勘も鈍ったかな?…あ、せやから白鳥ちゃん姿見せへんのかな?あかんわァ、ほんまに鈍ってんのかな?」
後頭部に手をやりそう言ったギンに対し声がかかる。
面妖な格好をした男が笑い、言った。
「我々隊長クラスが相手の魄動が消えたかどうか察知出来ないわけ無いだろ。それとも、それができないほど君は油断してたとでも言うのかネ!?」
「いややなあ、まるでボクがわざと逃がして白鳥ちゃんに追わせたみたいな言い方やんか」
「そう言っているんだヨ。それに旅禍の中には元十四番隊長がいるそうじゃないか、何故あの少女を連れて行った」
「うるせえぞ、涅!今は俺がコイツと喋ってんだ!すッこんでろ!俺に斬られてえなら話は別だがな!」
3人の隊長の言い合いを回りは止めようとはしない。
だが、呆れている様子だけは見て取れる。
そこに渇が飛んだのはそれからまもなくしてからであった。
「やめんかいみっともない!更木も涅も下がらっしゃい!…じゃが、まあ、今のでおぬしがここへ呼ばれた理由は概ね伝わったかの。
今回のお主の命令なしの単独行動、そして標的を取り逃がすと言う隊長としてあるまじき失態!その上、十四番隊八席を四番隊に無断で連れ出したこと!
それについておぬしからの説明を貰おうと思っての!そのための隊首会じゃ」
ゆっくりと目を開いた老人―――総隊長、山本元柳斎重國がゴウッと鬼気を纏わせ、問う。
「どうじゃい、何ぞ弁明でもあるかの、市丸や」
名を呼ばれた彼は目を細め、口角を上げたまま答える。
「―――ありません!」
ギンは飄々と言ってのけた。
「…何じゃと?」
「弁明なんてありませんよ。ボクの凡ミス、言い訳のしようもないですわ。白鳥ちゃんの事はまさか向こうに元隊長さんが来てると思ってませんでしたし、これもボクの凡ミス。
さあ、どんな罰でも―――」
「…ちょっと待て、市丸…」
声がかかる。
何かを聞こうと男が口を開いた次の瞬間。
ガァン!!!
「「「「「!!」」」」」
《緊急警報!!緊急警報!!瀞霊廷内に侵入者有り!!各隊守護配置についてください!!》
「何だと!?侵入者…!?」
警報が鳴り響き、侵入者の事を伝えた。
更木は例の旅禍―――奏司たちかと言う。
だが詳しい情報は無い。
《繰り返します!緊急警報!瀞霊廷内に侵入者有り!!各隊守護配置について下さい!》
やはり旅禍か、誰かの呟きと共に更木が駆けて行く。
男―――藍染の静止は意味を成さなかった。
そんな中でもガンガンと警報は鳴り続ける。
「…致し方ないの…隊首会はひとまず解散じゃ!市丸の処置に付いては追って通達する。各隊即時廷内守護配置についてくれい!」
その言葉と共に全隊長が動き出す。
ギンはそんな中で立ち止まっていた。
そこに声がかかる。
―――藍染だ。
「随分と都合よく警鐘が鳴るものだな」
「…よう分かりませんな。言わはってる意味が」
「…それで通ると思っているのか?僕をあまり甘く見ない事だ。」
ギンは、何も言わなかった。
「………」
そんな会話を十を背負う1人の少年―――日番谷冬獅郎が聞いてしまう。
誰が悪かったの(見誤るな、真実は―――。)
―――護りたい。
そう願って作られた場所を見て山本は呟く。
「誰が悪いのか……否、その様な事は分かりきっておる」
―――儂が悪いのじゃ。
山本はそう呟いてその場所から視線を外す。
かつて自由奔放な少年がいた。
自由奔放ながらも仲間をしっかりと従え、守り抜いていた強き武を持つ少年が。
「(もっと話を聞いてあげればよかったのであろう。あの少年が、心を閉ざしてしまう前に)」
全てはもう遅い。
諦めたような瞳で背後を振り返ると、彼は歩き出した。
―――
十四。
そう大きく書かれた隊舎は今も静まり返っていた。
「……全ての謎は…ここにあるのかも、知れません」
静まり返った一角、影はそこへと消えた。
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