「……うっ……こ、ここは……?」

「あら〜〜。起きたのね〜v」

「!!、へ…変な頭のオカマっ」

「んまぁ!失礼な子ねっ!」



少女は包帯だらけだが身をきれいに清められ、ベットに寝かされていた。
それに気づいた少女、フレンは悲鳴を上げる。



「もーなんなの(フレン「へ…変態っ」はぁ?」

フレン「わ、わた…我の裸を見たな!!?」

「ふ…ふふふっ……。
貴方をきれいにしたのは私よ、フレン」

フレン「!!」




現れたのは彼女を助けた<死神>だった。
長く伸ばされた艶やかなこげ茶の髪、優しげに自分を見つめる茶の瞳。
身にまとわれた黒のシックなドレスは彼女にきちんと着られている。


今の自分が纏っている白のワンピースは彼女が用意したものだろう。
フレンはこう思った。


彼女のように服を着ているのではなく、服に着られているような気がする―――と。




「私の名前はシエラ・テレーア。そっちの(…ええと、)お姉さんはルッスーリアよ」

ルッスーリア「あら、やだわ〜vお姉さんですって!」

フレン「筋骨隆々の貴様が女なわけがあるか!!!」

ルッスーリア「あら〜?なにか……いったかしら?

フレン「!!」



ドスの効いた声だった。


一瞬にして変わったルッスーリアのキャラにフレンはビクッと肩をはねさせシエラの後ろに隠れる。
シエラはくすくすと笑みを漏らすと、彼女を膝に座らせた。




シエラ「ねえフレン、」

フレン「……?」

シエラ「私とルッスーリアは貴方を勧誘に来たの。本当はXANXUSっていう私たちのボスも来ているのだけど<子供は嫌いだ>……ってうるさいから東京湾に沈めてきたのよね」

フレン「!?」




フレンが固まった。


<この部屋の中には怖い大人しかいない>。


そう思い彼女は震えだす。
シエラは首をかしげているが、ルッスーリアは同情するように苦笑した。


シエラは自分の恐ろしさに関しては無自覚なのだ。
どれだけ自分が怖かろうと< XANXUSのほうが怖いに決まっている >と思っている。

実際はシエラの方が<色々な意味>で恐ろしいのに。




シエラ「ねえフレン、私たちに貴方の力を貸して?」

フレン「……そんなの、一族に頼めばいい。
我のような<草>に、意見など求めるな」

シエラ「あら、それは出来ないのよねー」

フレン「?」

ルッスーリア「貴方、実家を葬ったでしょう?
分家は私たちが殺っちゃったのよ〜」




その言葉にフレンが再び固まる。

実家を滅ぼすのだけでもフレンには大変だったのに、彼女たちは2人…否、3人で分家をすべて滅ぼしたという。
フレンは気が遠くなる思いだった。




フレン「貴様ら……何者だ?」

シエラ「マフィア、ボンゴレファミリー独立暗殺部隊、ヴァリアー」

ルッスーリア「イタリアを拠点に活動しているのよv」




暗殺部隊。
フレンはそれを聞いて、自分にはお似合いの場所かも知れないと思った。

そして……




―――ジャギっ…!




果物ナイフを引っつかむと自分の伸びた髪を切り裂いた。




シエラ・ルッスーリア「!?」

フレン「堂宮フレンは……ここで<死んだ>。
今日から我の名前は―――」




―――ファレス。ファレス・ドミアだ。




その日、彼女は生まれた。




     *     *     *




ファレス「死ね!!」

瑠香「!!」




自分に迫るクナイの刃。
だが、ファレスの目は<暗殺者>の目ではなかった。




瑠香「っ!!」

ファレス「くっ!!」




瑠香は出来るだけ体を反らせてクナイを避ける。
そして、鎖に手をかけて球体の上へとよじ登った。

鎖は長い。
解くのにはとてつもない時間がかかるだろう。

それが分かっている瑠香は鎖を解くのを諦めて、鎖と鎌を分断した。
鎌を手にした瑠香は鎖を引っ張りながら地面へと降り立つ。




ランス「武器についた余計なものなど切り離してしまったほうが有利なこともあります」

リボーン「お前……<縫合戦術>を教えたのか?」

ランス「そんなまさか。<縫合戦術>は私独特の戦い方です。
何年もかけて磨き上げてきたものをこの短時間で出来るはずがありません。

私が教えたのは死なないための<身の振り方>ですよ、リボーン様」




ファレス「鎌だけなら我に勝てる、と?」

瑠香「勝てます」




山本「言い切ったぜ、満樹のやつ」

ツナ「う…うん」

獄寺「あいつ…変なとこで自信満々スからね……」

芽埜「でも瑠香ちゃんらしい…かも」




そう言って瑠香はファレスに向かい、鎌を<投げた>。


自身の武器を捨てたも同然の行動にファレスは失笑する。
<馬鹿な女>と、ファレスが笑い捨てたとき……




「小賢しいんですよ、<草食動物>って」




上空から降ってくる声。
それは確かに瑠香のものだ。




ファレス「(いつの間に!!)」




―――ドガァッ!!




ファレスの背後に回り地面に叩きつけ、寝技をかけた瑠香。
ファレスがもがくがそれは離れない。




瑠香「どうですか?小賢しいでしょう…!!」

ファレス「くっ!」

瑠香「私の家、なんだと思いますか?うち、<暴力団>なんです。


だから、喧嘩殺法とか、こういうことは……大の得意です!!」




そう言いながら瑠香は飛んできた鎌を受け止める。




ファレス「(なぜ、鎌が球体に吸い込まれない―――…?)」

瑠香「球体は無力化しましたよ。


ぶっ壊して。」




チェルベッロ「!?、あれは……」




ツナ「!、満樹さんの鎖!!」

リボーン「鎖で捉えられた球体を他の球体にぶつけたんだな」

ランス「ええ。一度、私がやった方法ですね。

あれは修業中のことです。
山にあった大岩を糸でくくりつけて吹き飛ばし、崖を破壊したんです」

リボーン「それを参考にしたんだな」




鎖のついた球体を他の球体にぶつけ、破壊する。
浮いていた球体だから出来た方法で瑠香は球体を無力化したのだ。


ファレスが鎌に意識を取られている<一瞬>の隙に。




瑠香「星には<流れ星>っていうのがあるんですよ。
一瞬です。たったの一瞬で落ちていってしまうあれに<祈り>をすると願い事が叶うそうなんです。


ねえ、ファレスさん。
私、そういう一瞬の<希望>にだってなれます。大切な人を守るためなら、何年だって待ちつづけます。



私はもう、<孤独>じゃないから待ち続けられるんです。」




そう言うと瑠香はリングを手にして星のリングを完成させた。




     *     *     *




〔ファレスSide〕




<孤独>。
そう、我はずっと孤独だった。




「いいか、フレン。
<忍>に<心>などいらないのだ」




ずっと、そう、教えられてきた。
家で過ごした日々に<自由>はなかった。


大人は<命>に従わなかった者を次々と処罰していった。

我の妹も、殺された。




「大丈夫だよ、フレン」




兄は、それでも笑っていた。
何が大丈夫だったのだろう。


そんなことをしていれば<我ら>はいつか、本当に<孤独>になる。



そんなものは……望んでいなかったのに。




ファレス「貴様が<孤独>でないのならっ、


どうして我はずっと<独り>なんだ!!!」

瑠香「!」

ファレス「家族がいるからか?友人がいるからか?
それとも、自分を大事にしてくれる男がいるからか?


そんなもの、信じてなんになる!!


いつか人は裏切るのに!!利用することしか考えていないのに!!」




母上は昔言っていた。
<私は主に捨てられた>―――と。


母上は信じていたのだ。

自分の主人たる……、父上のことを。




ファレス「<愛>など所詮まやかしだ!!!
目に見えぬものを信じてなんになる!!!そこに存在するかも危ういものを信じて、なんになる!!!


なんの<価値>もないかもしれぬものを、手にとってなんになる……!」



瑠香「<幸福>になるんですよ」



ファレス「!!」




満樹瑠香は、微笑んでそういった。




瑠香「<幸福>を得られるんです。


誰かを好きになったら、とても幸せになります。
誰かを想うことは、想えることは、とても幸せなことじゃありませんか?」

ファレス「………」




誰かを……想う?




瑠香「貴方にだっているはずです。

貴方を救ってくれた人や、貴方を慕ってくれる人。
貴方を友人だといってくれる人に、貴方のことを見ていてくれる人。



私にはね、雲雀先輩がいます。私の帰る場所は先輩のところです。

けどね、もっともっといろいろな人がいるんですよ。
家族に副委員長の草壁さんや風紀委員のみなさんはもちろんのこと、沢田くんに獄寺くんに山本くんに笹川先輩に芽埜ちゃんに……もっと大勢。


私って、1人でここに立ってるわけじゃないんです!
だから、私<孤独>じゃないんです。私の光を見ていてくれる人、一杯いますから!」




眩しかった。
彼女はとても眩しい光を放っている。

我のように微かで淡い光ではなく、誰かを導けるような強く確かな光だった。




過去と光




「ひーめ」




ファレス「!!」




背後からぐいーっと頬を引かれる。
こんなふざけた呼び方をするのはただ1人だろう。




ファレス「こ…このっ……ベルフェゴール…!!」

ベルフェゴール「王子のこと忘れるとかすっげー生意気。勝手に独りになってんなよ、ファレス。
いっつも言ってんじゃん。俺の姫になれば独りじゃ…、っと!」

ファレス「だ・れ・が!貴様の姫になどなるか!!」




ベルフェゴールにナイフを投げてシエラの後ろに逃げ込む。




シエラ「あら?」

ファレス「我は貴様のようなちゃらちゃらした人間の妻にはならぬっ!!
それならばまだ時間前に待ち、言われたことをきちんと守るレヴィのような奴の妻になったほうが<マシ>だ!!!


あの顔でなければ。

レヴィ「なぬ?!」

シエラ「っ!!……、っふ、…ふは!

ふふふふふふっ」




シエラが我慢できずに吹き出す。
真面目に言ったつもりだったのだが、なぜ笑われたのだろうか?




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