爆音が響いた場所にはボロボロになった獄寺が倒れていた。
衣服はボロボロになったが本人はいたって無事のようだ。




獄寺「…あ…っぶねーっ。


ちくしょー、どうしてもできねー

(あの技が……)」




獄寺は幼少の頃を思い出していた。




     *     *     *




「なーDr.シャマル…ガキの遊びなんてつまんねーよ。俺に<トライデント・モスキート>教えてくれよ」




子供用のスーツを着て紙飛行機を手に持つ少年は、幼少期の獄寺だった。
どうやら家に来たシャマルの技を学びたいらしい。




シャマル「なんだ?髪型の次は殺しの技まで真似んのか?
おめーにはこのあたりがお似合いだぜ」

獄寺「バクダンかよ!!」

シャマル「ダイナマイトだ。こいつは小型だがな」

獄寺「だっせ〜〜〜〜っ。
そんなもん用意してるうちに逃げられちゃうよ。どんくせ〜〜!!」

シャマル「っハァー。(あーうざ…)


ガキにゃあ中距離支援の渋さはわかんねーよなぁ。どんくせーか見せてやるよ…。
紙飛行機飛ばしてみな…。全部いっぺんにだ」

獄寺「!?、打ち落とすの?無理だね、バラバラに逃げてくぜ」




幼い獄寺は持っていた紙飛行機を3ついっぺんに飛ばす。
3つともバラバラな方向に飛んでく紙飛行機。




シャマル「こうすりゃいーのさ」




シャマルが紙飛行機と同じ数のダイナマイトを投げる。
それに向けてシャマルがダイナマイトを放つと……




―――ドン、ドン、ドン!




バラバラに飛んでいた紙飛行機全部に当たり、紙飛行機は撃ち落とされた。
あの過去を思い出す度悔しい思いと<修得する>という強い思いが生まれる。




獄寺「(ぜってーあの技を修得するんだ…………)

やってやるさ……。シャマルに見えてるものを俺も見つけてやるんだ……!!


―――たとえこの身果てても…」




     *     *     *




―――ドガガガガ、ドガン!!




ツナ「あの爆破音…獄寺くんはあそこだ!!」

芽埜「急ごう!」




森を抜ければ1人で修業してる獄寺の姿が見える―――筈だった。


けれど目の前に翳された手が芽埜たちの行く手を阻む。
先をたどって行けばそこにはDシャマルが立っていた。




シャマル「ほっておけ」

ツナ「何してるの!?ここにいること獄寺くん知ってるんですか?」

シャマル「しらねーだろーな。


ほっとけほっとけ。あーゆー何も成長しねー奴は」

芽埜「何でですか!?早くしないと獄くんが……!!

(獄くんが無茶な修行で命を落としかねないのに…!!!)」




焦る気持ちを隠そうともせずシャマルを見つめれば彼は驚きの事実を発する。




シャマル「そりゃあダイナマイトをすすめたのはオレだからだ」

芽埜・ツナ「Σえ゛え゛――!?」

ツナ「シャマルって獄寺くんのダイナマイトの師匠なの―――!?」

芽埜「嘘〜〜〜!!??」

シャマル「虫酸が走るからその言い方やめろ。


弟子をとるならかわいくてチューさせてくれるプリプリ乙女と決めてんだ。それに関しちゃ芽埜ちゃんは合k…ごふっ!?」




ツナがシャマルを殴った。
その表情はいつか獄寺に見せたものと同じだ。




ツナ「芽埜に…手、出さないでくださいね?(黒」

シャマル「お、おう…
(こいつ黒くなったぞ…!?)」

芽埜「…でも…何で?何で獄くんを拒むんですか?
ここまで来てるのに…」

シャマル「……見えちゃいねーからだ」

ツナ「え…?見えるって……!?」

シャマル「あいつにそれが見えねぇかぎりここでのたれ死のうが知ったこっちゃねぇよ」




2人には獄寺の修行を見てそう語るシャマルの言うことがよく分からない。
獄寺に見えていなくて、シャマルに見えているもの。
それは医者であるシャマルが大事にしているものなのだ。




獄寺「ハァ……ハァ…」




芽埜はどんどん傷ついていく獄寺の事を直視するのが辛くなってきていた。




芽埜「(傷付いた君を見てられないよ、凄く辛いよ。
胸が……痛いよ…っ)


…っ…、…な、んで…?!」

ツナ「?、芽埜…?」

芽埜「分かんないよ…!!

ここまでして勝たなきゃだめなの!?あんなことしたら死んじゃうよ!!芽埜はここまでして勝たなきゃいけないとは思わない!!

死んだら何も出来ないんだよ!?命はひとつしかないのに…!!
何で…!!」

ツナ「…芽埜……」




ツナの辛そうな顔を見てはっとする。
芽埜が笑顔でいなければツナが辛い思いをする。
獄寺の言うとおり芽埜が傷つけばツナも傷つく。
2人の関係はそういうものなのだ。




芽埜「ご、ごめんね、綱吉…。辛いのは一緒なのに…。

「ここまでして勝たなきゃだめなのかな?」って…怖くなって…。
でも、逃げても何も変わらないよね…」

ツナ「…うん…」




自分で自分を守らなくてはいけない日々が訪れるだろう。
もう逃げられないと分かっているのだ。
だから強くなろうと、決意したのだから。


そんな時、当の本人である獄寺の体がよろめいていて躓き、倒れた。
当然持っていたダイナマイトは地面へ落ち―――爆発する。


芽埜たちが駆け寄ろうとするがシャマルさんに止められてしまう。




芽埜「っ、獄くん…!は、放してシャマルさ…、!?」




爆発で起きた煙がだんだん消えていき、見えてきたのは穴ボコに落ちている獄寺の姿だった。
そこにはヘルメットをかぶっているリボーンとツナの父親、家光の姿もある。
芽埜は驚きで目を見開くばかりで、声が出なかった。




ツナ「と…父さん!?」

シャマル「(またとんでもねーのがでてきたな…)」

家光「ういっス。穴ボコに落っこって助かったな、少年」

獄寺「な…っ、なんだてめーは!」

家光「命の恩人にその言い方はないだろ〜?俺は近所のおじさんだ。おっかなーい幼馴染を持つかわいい妻子持ちのな。因みにそのおっかない幼馴染にもかっわいー妻子がいてだな、これがまた素直で可愛いのなんのって…」

獄寺「はぁ……?」




獄寺は何言ってんだこいつ?とでも思っていそうだ。
それほどまでに家光の顔はとろけきっている。




家光「……まぁ若いんだし、死ぬことなんて怖くねぇってのも理解できなくはないさ。


だが傷つく奴がいる一方で治そうとする職種の人間がいることを忘れんなよ。
そいつからしたら冗談じゃないよな。大事にしてるもんを軽くあしらわれたりしたらさ。
それに……




―――自分を守れねー奴が他人を守れんのか?




俺だったらそういう人間にかわいい子供のことは預けたくないな。お前が守ろうとしてる人間の親も、そう思うんじゃないか?」

獄寺「!」

家光「おっと、仕事だ。じゃーなー少年!!」




それだけ言うと去っていった家光にツナが顔を赤くする。




獄寺「……………」




一方の獄寺は過去を思い出していた。




     *     *     *




獄寺「見ろよ勝ったぜシャマル!名誉の負傷!
ボムもってつっこんでったら、あいつらビビって全弾はずしてやんの!」




シャマルの前に現れた幼い獄寺は腕を負傷しているようだった。
言葉から察するに誰かと戦ったらしい。




シャマル「殺しのことはもう教えねぇ」

獄寺「え!?」

シャマル「おまえにゃまったく見えちゃいない。そんな奴にオレが教えることは何もねぇ」

獄寺「え…?」




    *    *    *




過去を思い出し、自身の手のひらを見て獄寺は……




獄寺「俺に見えてなかったのは……自分の命だ……」

シャマル「………。」




獄寺の呟きは聞こえなかった。
芽埜は自身を羽交い絞めにしていた腕が離れるのと同時に、地面を蹴って駆け出す。
彼に言ってやらねば気がすまなかった。




ツナ「獄寺くん大丈夫!?」

獄寺「じゅ…十代目!!お……お恥ずかしいばかりです!こんなブザマなところをさらしてしまって…!!」

シャマル「本当ブザマ極まりねーな」

獄寺「な!?」

シャマル「いいか、今度そんな無謀なマネしてみろ。いらねー命は俺が摘んでやる」

獄寺「シャマル…」

シャマル「自分のケガは自分で治せよ。男は診ねーんだ。ったく、この10日間で何人ナンパできると思ってんだ」

獄寺「………じゃあ…っ」




家庭教師となる事を無言で承諾したシャマルに安心したような顔をする獄寺。


そんな中、芽埜は彼目掛けて突っ込む。
「よかったね」などという言葉をこの場でかけることなんて出来ない。



芽埜「(獄くんは、なぁ――んにも分かってない…!)

ばかぁ!」

獄寺「紀本…!?」

芽埜「無茶な事してる!命は1つしかないんだよ!」

獄寺「…わーってるよ…」

芽埜「分かってないよ…!どれだけ心配したことか…!……〜〜〜っう、……ぶ、じ…でっ…よか、った…」

獄寺「な、泣くなって…!!」

芽埜「獄くんの所為だよー…!ほ、んと…良かった」




涙が溢れて止まらない。
けれど、無事な姿を見れただけでも嬉しかった。




芽埜「約束…」

獄寺「あ……?」

芽埜「…絶対絶対…死んじゃダメ。寿命以外で死ぬなんて許さないから!

芽埜と、獄くんの約束…」




獄寺の小指と芽埜の小指を無理やり絡ませ約束した。
破ったら絶対に許さない、許せるわけがない。
大事な人が死ぬと言うのは、とても辛くて苦しいことなのだ。




芽埜「約束。……約束だよ、」

獄寺「っ//」




獄寺の手を自身の手で包み込んで、頬に近づけそっと微笑む。
その笑みは、遠い獄寺の過去の約束を思い出させるようだった。


あの、母親との記憶を……。




リボーン「これでコンビがひと通りそろったな」






家光「唯一の中距離支援のおまえがいねーと始まんないんだぜ、獄寺…」




     *     *     *




その夜。
今日はツナの家に泊まる日だと、前々から決めていた為ツナと一緒に沢田家へと帰る。
帰宅後ツナは家光の事について聞いていたが……




奈々「もう寝てるわよ」

ツナ「はえっ!!まだ9時だよ!?」




家光は腹に毛布をかけ、シャツとパンツ姿で寝ていた。




     *     *     *




ディーノ「恭弥…今日はこれくらいにしようぜ」

雲雀「………………………」

ディーノ「返事なしかよ…。

ったく、ロマーリオ!帰るぞ!!」

ロマーリオ「了解」




もうすぐ日にちが変わるのでバトルを止め、帰ろうとしたディーノはあるものを見つけた。




ディーノ「瑠香?」

瑠香「!!、助けてください…!!ランスちゃん私の事地面に縫いつけたまま放してくれないんですー!!」

ディーノ「はぁ!!?」

ランス「修行です!!ほら、早く抜けてください!」

瑠香「無理ですー!!!」



見事に地面に縫い付けれている瑠香。
その地面がコンクリートの時点で力を入れただけでは抜け出せないのがわかる。
壁にも糸が縫い付けられており、そこが瑠香を苦しめている原因だ。
これを抜け出すには上手く鎖鎌を駆使して壁の糸を断ち切らなければならない。
ほとんど自由のきかない腕で上手く鎌の刃をあそこに当てるには相当なコントロールが必要だろう。


ランスはこうやって瑠香を鍛えるつもりのようだった。




     *     *     *




山本は道場で父と修業していた。
だが、父は圧倒的に強く、手も足も出ない状況だった。




山本「マジかよ…オヤジがこんなに強ぇなんて…まるで別人だぜ」

山本父「武、覚悟がねえなら家に帰んな。お前が剣道をやりてえ理由が遊びなら父ちゃん以外をあたりな」




理由―――…。




「剣技を修得してないな。軽いぞ」




それを思い出した山本は野球をやっている時と同じ瞳で再び父に攻撃する。
だが、父は一瞬で後ろにまわり、攻撃を繰り出した。

背中を竹刀で叩かれ、倒れる。




山本「いって〜〜〜っ、後ろからは卑怯だぞオヤジ……!!」

山本父「卑怯?笑わせちゃいけねぇ。遊びじゃねぇってのはこういうことよ」

山本「!」

山本父「父ちゃんが教えるのは戦乱の世に多くの人間を闇に葬った<人殺しの剣>よ」

山本「人殺し…?何だよそりゃ……」

山本父「名を<時雨蒼燕流>」

山本「時雨…蒼…燕…流?」




     *     *     *




翌日も芽埜たちは絶壁を登っていた。
だいぶ慣れたらしく5分間でてっぺんの近くまで登れるようになったツナと10分ほどかかる芽埜の違いは死ぬ気弾があるかないかだけだ。


ツナの次に登るよういわれていた芽埜はそのまま下で待機していた。
ツナが登る切るとリボーンが崖上から下りてくる。




リボーン「よく頑張ったな、芽埜。これがお前の武器だぞ」

芽埜「!、これって……、えー!?ネックレスが武器?!」

リボーン「それは特注で作った武器に変わるネックレスだぞ。


芽埜、お前はネックレスを武器に変えて登って来い」

芽埜「う、うん!……でもどうやって?」

リボーン「何事もイメージだ。武器に変えるイメージを持て」




そう言うとリボーンが軽々崖を登っていく。
芽埜は言葉通り武器へと変換するイメージを頭に浮かばせる。




芽埜「(武器……かあ。
武器といえば刀とか剣とかそういうイメージだよね。銃も武器だし。


あっ、そういえば黒曜の時琉輝くんが渡してくれた武器は………)」




―――コォッ…!




ネックレスが光り出し、姿を変え始める。
しばらくすると光が収まり、銃と刀が腰の辺りで揺れているのがわかった。

それと同時に体が軽くなるような感覚が身を襲う。




ツナ「芽埜の額に黒い死ぬ気の炎…?!」

リボーン「あれはそういう風にできた武器なんだ。


来い、芽埜」

芽埜「ああ…わかった」




ガッ、と崖に手をかけるとタンッ、と地面を蹴る。
崖を登りきると「5分30秒だ」と言う声がして最高記録をたたき出していた。




芽埜「ふぅ〜〜…合格、した〜〜…!」

リボーン「よし、第1段階合格だぞ。つーことで次は第2段階だ」

ツナ「ちょ…ちょっとは休ませろよ!!つーか修業はもうたくさんだよ!!」

リボーン「ヴァリアーに殺されてーのか!?……もっとも、次の修業も気を抜くと死ぬけどな」

ツナ「Σな」




そんな時…




「沢田殿!!」

ツナ「!?」

「順調に第2段階とはさすがですね!」

ツナ「君は……!!?


バ…バジルくん…!体…、だ…大丈夫なの?」

バジル「ええ、ロマーリオ殿と親方様の薬草のおかげでほとんど良くなりました」




崖上にバジルが現れたのだ。
傷も殆どないみたいなので言っていることは嘘でも強がりでもないようだ。




ツナ「そういえば…なんでここに?」

バジル「沢田殿のお手伝いに来ました」

ツナ「Σええ!?手伝い!?」

芽埜「リリアちゃんは?」

バジル「えっと…リリア殿は……その、女性…なので、念のために休んでいただいて、ます//」




バジルの頬が少し赤くなったが鈍感な2人は気づいていなかった。




リボーン「第2段階はスパーリングだぞ。理由はあとでわかるぞ。


バジルをダウンさせたらクリアだからな」

ツナ「Σ何それ――!?」

バジル「では始めましょう」




ツナが困惑している中、バジルはビンを取り出し中に入っていたものを飲み込む。
すると、バジルの額から 青い死ぬ気の炎が現れた。




バジル「手合わせ願います」

ツナ「な――!!死ぬ気の人相手なの――!!!?ちょっ待って!ヤバイって!殺されるって!!」

リボーン「心配ねーぞツナ。お前は修業の第1段階をクリアしたんだからな、きっと自分に驚くぞ」

芽埜「芽埜は?」

リボーン「お前はシャランをダウンさせろ」




見えてなかったもの



芽埜「Σさらに無茶振りだ―――!!!」

ツナ「アルコバレーノなんて倒せるわけ…」




―――ズガンッ!!!




リボーン「是か応かyesかOKかSiしか認めねーぞ」

芽埜「それ全部はい、じゃん!!!」




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