琉輝 川南 諒。未来でボンゴレ霙の守護者代理を務め、ボンゴレのハッカーとして活躍していた男。あたしたちは運良く街中で諒と出会えて一緒に行動を共にすることになった。……なったんだが、なんでもこちらに来る際運び屋だかなんだかよくわからない組織に預けた機器類を取りに行かなければならないとかで昼から調査をすることになった。 ってなわけでとりあえずそこらの飲食店で軽い昼食を摂ったあとに、諒が指定してきた並盛内のセキュリティ高そうなホテルに向かうことに。 (……行きたいんだけど、なぁ) ルルルル… これさえなければ行けたんだけど、これがあるから足止めをせざるを得ない。携帯に届いたメールを開けば、面白みもなく再び現れる三日月に歪む瞳。同じものを送られてきたことに対して『また同じか』と感じても、身を襲う妙な恐怖感は消えない。同じだけど、同じじゃない。そこに込められた何か≠ェ前とは違って大きくなっている気がした。 (怖い、んだろうなぁ……) 「……綱吉。お前もなんか送られてきてたのか?」 「…大丈夫」 「……そ。なら、いーんだけど……」 ……なんであたしには隠すんだろう。この場に芽埜がいたなら頼るくせに。 「早く川南さんのところ行かなきゃ。何かが掴める気がするんだ」 「〈超直感〉ってヤツね。じゃあ行くか」 「……っていっても、もうここなんだけど」 「それ早く言って!?」 歩き出しちゃったじゃんか!! ――――――――― ―――――― ――― 「…こっちだ、ボンゴレ」 ホテルに足を踏み入れればエントランスで諒が待っていてくれた。央樹には機器の接続を頼んでいるらしい。未来でもなんだかんだ一緒に行動してたし、仲いいんだろうか。 諒に案内されるままエレベーターに乗り込んで、最上階近くの結構大きめの部屋に到着する。しばらくはここを仮の住処にするらしく、長期で借りることに成功したんだとか。亞琉に呼ばれたんならウチ来ればいいのに。 「―――で?何を調べればいい」 「えーっと……まだ何を調べるかは……。 でも最近妙な耳鳴りがしてて。この前はある女の子からトンネルに呼び出されたり…」 綱吉が諒にことの展開を話していれば、接続とかを終えたらしい央樹が現れる。その手にはコーヒーの淹れられたカップが4つ。あたしはまだしも綱吉ってコーヒー飲めんの?どうにもお子様味覚っぽいけど。 「どうぞ」 「あ。ありがとうございます!……わっ、これ美味しいですね!」 (……あ……飲んだ) 差し出されたカップに口をつければ中身は甘めのカフェオレだったらしい。ブラックは大人ふたりの分か。通りで綱吉が飲めたわけだ。 「とりあえず調べてやる。少し待ってろ」 「はい、お願いします」 ブラックを飲み干して、奥の部屋へ消えていく諒。その背を追っていった央樹は手伝いでもする気なんだろう。 私物の広がっていない小奇麗でがらんとした大きな部屋にあたしたちだけが取り残される。静かな空間ばかりが広がって、頭には嫌な考えばっかりが広がった。 「なあ綱吉」 「ん?」 「なんであたしたちだったんだろ」 「……どういうこと?」 「どうしてあたしたちがこんな目に遭ってると思う?」 「そんなの知るかよ」 「でも、おかしいと思うだろ?あたしたちと知らない誰かだったら、まだ無差別だって納得がいく。 でも、あたしたちは全員知り合いでお前の守護者だ。誰かがあたしたちのことを知っててやってるんじゃないかって思うんだ。なんであたしたちが狙われたのか―――」 「っ、知るかよそんなの!!!ただの偶然だろ!!!」 「 、 」 「あ……!」 どうしてだろう。うまくいくと思ってもうまくいかない。これが芽埜だったら、なんて嫌な感情ばっかり浮かんで収拾がつかない。 芽埜だったらきっと、綱吉に嫌な思いをさせずに聞けたはずだ。 芽埜だったらきっと、綱吉が抱えてるもの聞けたはずだ。 芽埜だったらきっと、綱吉を追い込むようなことを言わずに話せたはずだ。 芽埜だったら、芽埜だったら。 芽埜……だったなら……。 こんな思いばっかり浮かぶなんて最悪だ。綱吉が選んでくれたのは芽埜じゃないし、好きだって言ってくれてるのも自分なのに。それでも芽埜以上になれていない気がして僻んでしまう、疑ってしまう。 (こんな自分……大嫌い) 「ご、ごめん」 「ううん、ビックリしたけど大丈夫」 怒鳴られて当然だ。可能性でしかない話を持ち出した。綱吉が嫌がってる〈守護者〉とかそう言う言葉まで出した。何をしてるんだろう。こんな風になんてなりたくないのに。 でもそうなってしまう理由だってわかってるんだ。分かってるから嫌なんだ。一緒にいたいとシモンの島で言ってから、〈好き〉って気持ちが収まらない。溢れ出てくるばかりであたしをおかしくさせる。 「………何叫んでるか知らねーけど、調べ終わったぞ」 「早っ?!」 「情報は新鮮さが命だからな。早いほうがいい」 「……あー、そうね。で?なんかわかったのか?」 「ああ。 トンネルの先には電波塔がある」 「電波塔?それとこれが何の関係が、」 「過去、その電波塔では〈集団自殺事件〉が発生していた」 諒が話してくれた情報はこういうことだった。 〈集団自殺事件〉。 今より20年前、とあるカルト団体が煽動したことで、この町で起きた集団自殺事件。 複数の信者たちが山の頂にある電波塔から首をつったりして死亡した。 宗教団体による先導によるものと思われているが、信者の殆どはその事件で死亡しているため、詳細は迷宮入りし、警察も迷宮入り事件として今は手をつけていない。 「カルト団体……ねぇ。鈴音ならなんか知ってそーじゃね?」 「確かに…。あとで聞きに行こうか」 「ん」 「それにしても……なんでそんな場所に、呼び出したんだろう」 「え、何…いっ、だだだだだ!!?」 「お前が話すと話が進まねーから黙ってろ」 (なんで!!?) 諒からギチギチと頭を掴まれ押しのけられる。どうしてそうなる…と泣きそうになったのは秘密だ。 「……満樹さんの知り合いみたいなんですけど、浦野哀子ちゃんって子が俺たちを呼び出したんです。今はその子、須戸診療所ってところに運ばれたみたいなんですけど」 「……〈須戸〉?」 「? 何か知ってるんですか?」 「須戸って苗字はな。もしそれが俺の知る〈須戸〉であるなら、そいつは集団自殺事件の遺族のはずだ。確かその調査を訴えていたと思うが……」 え―――? 何もわからなかった頃 「あと、浦野哀子だったか?そいつも少し調べてやる」 「でも彼女は満樹さんの友達で……」 「満樹瑠香の友人が何故、お前たちの携帯番号を知り得ている?」 「「!」」 それは確かに、そうだ。瑠香は久しぶりに会ったような反応をしていた。だからあたしたちの番号を知られるような機会もなかったはずだ。どうして浦野哀子はあたしたちの番号を知り得たのか。知りたくないと言ったら嘘になる。 一台のPCを持ち出してきて調べ始めたのは浦野哀子のSNS。そのログを軽々と開いてしまった諒のPCに映る文字列を目で追う。 半年前から耳鳴りが酷くなり始めたこと。一月前に市民病院に入院することになったこと。その中にはこんな姿では彼女に会えないと言ったような事まで書かれていた。 そして、最新の書き込みは―――事件発生前日。 「『5000444411224444』……?」 「なんだ、これ」 「これを送信したのは携帯だな」 「携帯………。数字………。」 「携帯で打ち直せば『なんていきて』だな」 「なんていきて……………何で、生きて?」 「な、なんかきな臭くなってきた……?」 戻る |