アーデルハイト「雲雀恭弥!!」




ヘリコプターがうるさく音を立てる中、彼は降り立った。
彼が降り立つのを見届けるとヘリコプターはどこかへ飛んでいったが操作していたのは同じ委員会の副委員長、草壁だった。
いつ免許を取ったのか。




獄寺「ヒバリ…お前!!」

ツナ「ヒバリさん……」

雲雀「やぁ小動物。どこだい?継承式で暴れたもう1匹の小動物は」

獄寺「な?もう1匹…?」

リボーン「炎真のことだな」

アーデルハイト「!
言っておくがボンゴレの卑劣なボスと我らシモンのボス炎真は似てもにつかん。一緒にしてくれるな!」

ツナ「!!」

雲雀「………。何か違うの?生体的に」




そんな雲雀の質問に戸惑う他ない。
本人は真顔で真面目に聞いてきているのでどうしようかと迷っていれば鈴音が口を開いた。




鈴音「生体的にはホモサピエンスで同じ人類。しかも身長同じくらいだから見た目はあんまり変わらないような…」

雲雀「君もそう思うでしょ」

鈴音「まあ………」

琉輝「え!?そういう答え求めてたの!?…え!?」

アーデルハイト「………。炎真はここにはいない、だが貴様が来た以上私が倒してやる。勝負しろ雲雀恭弥」

雲雀「―――いい。」

アーデルハイト「!!」

雲雀「以前の屋上での戦いで君という獣の牙の大きさは見切った。君じゃ僕を咬み殺せない。まぁだけど、僕の欲求不満のはけ口にはちょうどいい肉の塊だ」

アーデルハイト「貴様…!!未だシモンの恐ろしさを分かっていないようだな。勝負だ。ルールは互いの誇りによって決定する。
私の誇りは―――炎真率いるシモンファミリーと粛清の志!!!」

雲雀「誇りでルールを決めるのかい?変わってるね。誇りなんて考えたことないけど…答えるのは難しくない。―――並盛中学の風紀とそれを乱すものへの鉄槌」

獄寺・琉輝「絶対そーくると思ってたぜ!!」




そう告げた雲雀はいつにもましてキラキラしていた。

2人の誇りを掛け合わせ、ルールは至って単純なものとなる。
相手の腕章を先に奪った者の勝ちで、手段は選ばない。
ただそれだけのことだ。
亞琉たちの戦いと違って腕章を傷つけてはならないという誓約もない為思い切り暴れても支障はない。




雲雀「僕は今イラついてるんだ。それを紛らわせられるなら何でもいいよ」

アーデルハイト「では始める!!我が大地の属性は〈氷河〉!!!ついてこい!!ステージは向こうだ!!」




そう言って飛び去っていくアーデルハイトの向かった方向には滝があった。
己の能力で滝を凍らせた彼女は刃をそこへ突き刺すと一直線に切り裂くようにして地面へと降り立つ。
能力と武器をかけあわせたうまい着地方法に琉輝は思わず拍手した。
次の瞬間獄寺の後頭部と額がぶつかりあったが後悔はしていない。




雲雀「小動物、今の君の顔つまらないな。見てて、僕の戦い」

ツナ「!?それって…ヒバリさん!?」




躊躇なく崖から飛び降りた雲雀は腕輪のV.Gからロールを出すと球針体の指示を出した。
地面までの距離すべてを球針体で埋め、それを伝い地面まで降りる。
雲雀とアーデルハイトが滝前の地面で視線を交差させた。


滝から遠く離れていない距離の森の中。
そこにはジュリーとクロームの姿もあった。




ジュリー「さ〜てクロームちゃん。こん中で一番悪い奴はどいつだかわかる?」

クローム「………」




クロームは瞳に光を宿さないまま周囲を見渡す。
見つけた影をゆっくりと指差すがジュリーはそれ以上を望んでいた。




ジュリー「黙ってちゃわかんないな〜。声に出してみよーよ」

クローム「ボンゴレ十代目候補…沢田綱吉、」

D「ヌフフ♪まったくもってその通りです。沢田綱吉はボンゴレT世の血を濃く受け継いだボンゴレの危険因子だ。ボンゴレT世の遺した負の遺産は排除せねばならない。
そのためにも私自身の器が必要なのです。お前が私のためにできることは分かっていますね」

クローム「…はい」

D「その口で言うのです」

クローム「…はい…この身と六道骸を、D様に捧げます」

D「まったくもっていい娘だ。やはりお前と私は何から何まで相性がいい。もっとも…沢田綱吉たちを消去するだけならばアーデルハイト1人で十分でしょうがね。
もし彼女がシモンファミリーにいなければ私の計画は成り立たなかったかもしれない。彼女はシモンの情熱そのものだ」




妖しく笑うDの視線はアーデルハイトを捉え、それから崖上にいる鈴音の姿を捉えた。
雲雀を心配してか見下ろす視線は揺れている。
そんな彼女の視線がふと雲雀からズレたのをDは見逃さなかった。


それどころか鈴音はDたちのいる方を見つめ、視線を離さなくなったのだ。
自分たちの姿が見えてはならないと咄嗟に木の陰に隠れたが視線は外れない。
何が彼女の視線をこちらに向けさせているのかは考えればすぐに確証が浮かんだ。




D「チィッ……」




鈴音には十二天将がついている。
彼らは初代雪の守護者に使えていた身の上を持つことから、Dの気配は見知っているであろう。
彼女の傍らにその姿は見えないが鈴音が何らかの確証を持ってこちらを見続けているのは理解できた。




アーデルハイト「さあV.Gを装着するがいい、雲雀恭弥」

雲雀「じゃあ言葉に甘えるよ。ロール、形態変化」




雲雀の肩上でクピィと強く鳴いたロールは光を放つ。
光は雲雀へとぶつかりその姿を変えてゆく。
光が収束すると同時に見えてきた漆黒の姿は普段彼が纏っているものも同然だった。




雲雀飛来!




アーデルハイト「それが貴様の…V.Gか!!」

雲雀「そうだよ」

獄寺「改造長ラン!!」




ハタハタと風になびく雲雀の背には〈風紀〉の2文字。
それを視界に留めながらも鈴音の目線はある一点からそれることがない。




鈴音「(誰かいる……。言われなくてもわかる、〈悪意〉が伝わってくる……。)」




動いたわけでも風が吹いたわけでもないのに鈴音の双簪についている飾りが大きく揺れ動いた。




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