〔鈴音Side〕




怪我人多数だ!と騒ぐ周り。
頭がぐあんぐあんと回ってるような感じがして落ち着かなくて気持ちが悪い。

だらりと瞳から流れる血液の生暖かさが気持ち悪くてスーツの袖でぐっと拭う。




ディーノ「恭弥!大丈夫か!!」

雲雀「寄らないで。平気だよ、―――プライド以外はね」





「大丈夫ですか!?」

了平「なんの…これしき!!」





「動かないでください!!」

獄寺「俺なんかより十代目!!十代目!!大丈夫スか!?」

リボーン「ツナ」

ツナ「…うん…大丈夫…」




手も足も出なかった敵。
考えもしなかった彼らの企て。
そして浚われたクローム髑髏。
九代目の守護者が尾行していたが、気付かれて返り討ちにあったこと。
何もかもが衝撃的過ぎた。


声も出ないってこういうこと?




スクアーロ「う゛お゛ぉい!!シモンファミリー討伐の任は我らヴァリアーが引き継ぐ。許可していただきたい九代目」

ファレス「許可を」




スクアーロとファレスが九代目に申し出をしている。
でも、九代目が首を縦に振ってくれるはずもない。




九代目「ならん」

スクアーロ「んだとぉ、ジジィ!!」

九代目「わかってくれスクアーロくん。これ以上無駄な犠牲者は出せない」

スクアーロ「犠牲者だぁ?俺たちが負けるとでも言いてぇのかぁ!てめーの守護者とはデキが違うんだぁ!!」

九代目「スクアーロくん!!シモンの脅威は体技を超えた得体の知れないリングにある!!強固なリングも匣も持たぬ君たちでは勝てない!!」




九代目の言葉は正論でヴァリアーも、ディーノも黙るしかなかった。
そして、更に不幸なニュースがあるなんて思いもしなかっただろう。




リボーン「炎真によって大空では最高位を持つボンゴレの至宝ボンゴレリングとボンゴレリングと同じく夜空では最高位を持つシエロリングがぶっ壊された」

リボーン以外「!!」




ボンゴレリングとシエロリングが…?
確かに指に嵌っていたそれはないし、最早使い物にならないであろう程粉々にされていて、リングの原形すら留めていない。




九代目「今のボンゴレファミリーの中でシモンファミリーのあの脅威の力に最も近く最も強かったのは、未来での経験を積みボンゴレリングを操った綱吉くんと十代目守護者がだったはずじゃ。
ボンゴレリングが全壊してしまった以上…我々の希望の光は断たれてしまったようじゃ……」




九代目は全ては自分の責任だ。と、シモンファミリーをしっかりと調査していれば。罪について徹底的に研究していれば。と自分を責め始める。




鈴音「そんなことしたって意味はない!!!」

鈴音以外「!!」

鈴音「終わったことで後悔してたって、先になんて進めない!!時間はもうあの時には戻らない!!
戻らなくちゃいけないのにっ、戻れなくて!!帰れなくて、変わっていくしかなくて、変えていくしか…!!」

リボーン「落ち着け!……息をしろ、鈴音。ゆっくりでいい。―――お前はまだここにいるだろ。」

鈴音「……は。……は、ぁ……はあ……はあ、」




まだ、ここにいる?
ああ、そうね、私はまだ……ここにいる。




鈴音「まだ、終わっていない」

リボーン「ああ。


安心しろ、お前のことは俺たちが助けてやる(小声」




耳元で囁かれた言葉にひどく安心する。
まだ大丈夫だと、思える。


私はまだ―――生きている。



安心からか頬を滑り落ちた涙が床へと落ちた。
その時。




「―――まだ光は消えとりゃせんぞ」




ツナ・九代目「!?」

「モノ見えぬこの眼にもしっかりと届いておる」

九代目「!!あなたは…!!」

「九代目の小僧よ。老いぼれたの」

九代目「タルボじじ様!おいでくださっていたのですか!?」

タルボ「羊の世話でちと遅れたがのお」




視線の先にいたのは老人で、風貌は怪しげ。




獄寺「なんだ?あのキッタネージジィは…」

ツナ「九代目の知り合いみたいだけど…」

リボーン「奴はボンゴレに仕える最古の彫金師、タルボだ」

了平「ちょーきんしとは何だ?」

リボーン「金属を加工しアクセサリーをつくる職人の事だぞ。めったに姿を見せない仙人みたいなじーさんでな、いつからボンゴレに仕えているのかも謎なんだ。
I世の頃から仕えてるって噂もあるぐらいだ」

ツナ「え゛!?」




老人は回収された砕けたボンゴレリングに触れブツブツ、と何かを呟き始めた。
話しかけて、る?




獄寺「何やってんだ?あのジジィ…」

ツナ「なんか1人言言ってる…」

了平「極限に大丈夫なのか?」

琉輝「怪しい……」

タルボ「ふぉっほっほっ、罪を浴びたシモンリングを相手にした?そりゃあ勝てんわなあ!」

九代目「なんと!」

ツナ「なんで知ってるの!?」

タルボ「よしよし待っておれ。


おい、九代目よ」

九代目「はい!」

タルボ「どーするね?ボンゴレリングは生まれ変わりたがっとるぞ」

亞琉「!生まれ…変わる?」

九代目「…ということはタルボじじ様、まだボンゴレリングは…」

タルボ「死んじゃおらん。ガワが壊れとるだけじゃ」

九代目「なんと!」




リング、壊れてなかったんだ。
その言葉に彼らを倒せる機会が来るのかと思っていれば老人が綱吉くんを見る。




タルボ「お前が十代目のボンゴレかい」

ツナ「てッ!」




そして持っていた杖の先でビシビシとつつき始めた。
あれ、尖ってる気がするんだけど……、ええ、気のせいではないようね。


勿論隼人くんが黙ってるはずもない、わね。




獄寺「おいコラ、ジジィ何するんだ!」

ツナ「あのっ、さっきからリングが言うとかってどういうことですか?」

タルボ「んなことも知らんでつけとったのか。
優れたリングには<魂>が宿る。<魂>があれば感じるところもある。その声を聞いてやるのがわしの生業じゃ。
ボンゴレリングは次の可能性を示しておるぞ」

ツナ「次の可能性…?」

九代目「つまりまだボンゴレリングには修復出来る見込みがあると言うことですな!」

タルボ「そうなるのう」

獄寺「修復!!」

了平「これだけ粉々にされたのに…」

ツナ「直るんですか!?」




その言葉に希望が見えてきた。




タルボ「ただしじゃ…もとの姿に戻ってシモンに再び挑んだところで、ボコボコにされるのが関の山じゃぞ」

ツナ・獄寺「!!」




シモンリングはリング製作に携わった初代シモンの血を浴びて何倍にも強化されているから…また彼らが戦っても同じ事、と言うことらしい。
だったらどうすればいいっていうの?




獄寺「…勝ち目はねえのか…」

ツナ「そ…そんな…」

琉輝「マジかよ……」

タルボ「今のままでは勝てん。修復とともにバージョンアップせねばの」

ツナ「バージョンアップ?」




首を傾げるていると今度は、アニマルリングを見せてくれ。と言われた。
バージョンアップにはそのリングたちの魂も必要なんだとか。


そして、もう1つ重要なものがあった。




タルボ「ボンゴレI世の血<罰>とシエロT世の血<咎>じゃ。よし、これで材料はすべて揃ったわい。
成功すればボンゴレリングとシエロリングは今までにない力を手にいれるじゃろう。だが失敗すれば魂を失い、もう2度と光輝くことはないじゃろう」

ツナ・九代目「!!」

タルボ「確率は五分と五分じゃ。どうするんじゃ十代目よ」

ツナ「どうするって…そんな…」

九代目「君の思う通りにすれば良い、綱吉くん」

ツナ「九代目!」




九代目のその言葉に綱吉くんがこちらを見る。
まるで意見を伺っているように。




獄寺「俺たちもそれで依存はないっス、なっ」

雲雀「………」

了平「うむ、当然だ!」

琉輝「綱吉の意志に従うぜ」

亞琉「私も従いましょう」

鈴音「勝てる見込みがあるほうがいいわ、そうして」




そして、数秒後に綱吉くんは決断を下した。




タルボ




ツナ「(山本や満樹さんをあんなにした奴らをほっとけないし、何があってもクロームを助けたいんだ…)


―――バージョンアップをお願いします!」




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