※ネタページのここから派生した花イリュ主1の赤司妹話。
「……ごめんね、征十郎。私、今のアナタにはついていけない」
そう言って涙を零した片割れの弱々しい姿を見て今まで共に頑張ってきた事により生まれた〈絆〉というつながりが罅割れた。
赤司名前。
その名は僕の双子の姉のもので〈俺〉が大事にしてきた何よりも大切な〈つながり〉。
カチッ、
僕に対して謝った彼女が僕に渡した小さなロケットペンダントが手の中で軽い音を立てて開く。
中には中学の入学式のとき撮った写真が一枚入っており軽い嫉妬心を覚える。
何故僕がこんなにも求めているものは僕の手に入らないのに俺の手には簡単に手に入ってしまうのか―――、と。
「………、っせ、征十郎!」
「!」
聞きなれた声が名前を呼ぶ。
聞き覚えのある声に振り向けば同じ髪色と瞳の色をした少女が髪色と同じ赤に染まったワンピースを揺らし僕目掛け、駆けて来る。
その表情は必死なものでとても息を切らしており、苦しそうに眉を顰めていた。
「はぁ……、はぁ…。だ、黙って…いく、なんて…!そんな、の…!」
「ふふ、お前は可笑しいな。―――突き放したのは、お前だろう?」
そういえば酷く傷ついたような泣きそうな表情になる片割れの姿がとても愛おしい。
どうしてこの片割れはこんなにも僕を惹き付けて止まないのだろうか。
「、征…十、郎……ごめ、 「嘘だよ」 …っ?」
「冗談に決まっているだろう?……さて、そろそろ電車の時間なんだ。行ってもいいかい?」
「!
…うん。あっ、体に気をつけてね!風邪とか引かないようにしてね。京都は夏は暑いし冬は凄く寒いって聞くから体調崩さないようにしてよ?」
「分かっている」
体調管理に抜かりはない。
勝つことが全て―――否、当たり前である僕がそんなものに負けるわけがないだろう?
「あの……征十郎。私ね……アナタのことは、まだ怖いの。でも…っ!……きっといつかアナタのことも征十郎のように愛せたら、いいと……思ってるよ。だから―――…」
〈電話とか、頂戴ね?〉。
そう言って微笑んだ片割れが恐る恐るといったように手を伸ばし僕を抱きしめる。
ずっとずっと内側から眺めていた姿が目の前にあって吸い寄せられるように頬に手を伸ばし唇の端に口づける。
呆然と立ち尽くす片割れの頭を軽く撫でて電車へと乗り込めば寂しそうな悲しそうな表情で無理に笑って手を振ってくる。
軽く手を振り返せばアナウンスが鳴り響き電車が走り出した。
それを見てついに涙を零し始めた片割れの姿にとてつもない優越感が込み上げる。
「く……っはは…!
敦、僕はどうやら手に入れたようだ。片割れ―――彼女との間に大事な〈つながり〉をね」
〈俺〉はあんなことはしなかったというのに彼女は拒みもしなかった。
否、当たり前だろう―――何故なら俺と彼女の関係は血縁で姉と弟なのだから。
そして彼女の感覚は通常の姉のものとは考えられないほど狂っている。
愛する弟からされる行為ならば常軌を逸さぬ限り彼女は全てを甘受するのは目に見えていたことだ。
「僕はこんなにも愛していると言うのに気付かないとは……彼女も相当な鈍感のようだ」
姉と弟―――それは彼女と〈俺〉との関係性を表す言葉。
僕と彼女もそうだろう、と言えるのならば言ってみればいい。
「(ただし、)」
それを否定するならば彼女であろうと僕は容赦しないけれど。
「ふふ。
……あぁ、本当に惜しい事をした」
もう少し独占欲を隠すべきだったか。
怖がらせては意味がないというのに。
彼女が欲しかった―――姉としてではなく、〈女〉として。
好きよ。
そう言って微笑む彼女を見てきた。
大好き。
そう言って満開の花のような笑みを見せる彼女を見てきた。
愛してる。
そう言って俺を抱きしめる彼女の腕は優しくて―……。
〈弟〉として全てを甘受してきた〈俺〉とは違う。
僕は弟では満足しない。
「全てに勝つ僕は全て正しいのだから、彼女を思うこの気持ちが間違っているはずがない」
誰よりも僕/俺を好き、愛してくれたお前はこのことを否定したりしない。
そうだろう?―――なあ、
触れることすら出来なくて、心の中から目で追うことしか出来ない僕は、
「やっと、お前に触れられたよ―――名前。」