第十訓 5 「テメーも己の美学のために死ぬってのかよ。ロマンティズムもいい加減にしろってんだ」 「なーに言ってんスか?男はみんなロマンティストでしょ」 「いやいや女だってそーヨ新八」 どいつもこいつも、バカだらけ。 他人のために大きな組織相手に立ち回っちゃうくらいバカだらけ。 そんなもののために命かけるなんて馬鹿らしいって人もいるんだろうね。 でも、そういうバカもいないと世界なんか回っていかないでしょ。 理解できなきゃそれでもいーよ。 「えっ総悟それにするの?!」 「なんでィ。文句あんのか」 「いや、ないけど……。じゃ、うちこれにしよー」 ヒゲメガネと紙風船。 紙風船、昔よく遊んだなぁ。 「どいつもこいつもなんだって…ん?…お前ら、何してんだ!?どこに行くつもりだァァ!!」 「すまねェ土方さん」 「うちらもけっこーバカなもんで」 警備を背後から伸して、継美に手引きしながら中に入る。 煉獄関に入るのは案外簡単だった。 中では夜兎・辰羅に並ぶ傭兵部族、荼吉尼相手に大立ち回りを繰り広げる銀さんがいた。 重い金棒の一撃を身に受け、口から血を流しながらも木刀で打ち負かしたその姿はまさに本物の侍の姿だった。 死んでいた瞳が前を見据えて、自身の信ずるものを宿している。 自分の信じるものがきちんとあるってカッコイイよね。 わたしには今、そういうのがないから。 (……なんか、羨ましいな…) 「……すごい…」 それを見てぽつりと呟いた継美。 頬を桃色に染め、興奮気味に目を見開いて銀さんを食い入るように見つめている。 継美のそんな姿は久しぶりに見た。 昔、近藤さんを見つめていた継美の姿そのもの。 まさかと思うけど継美ってば銀さんに心が向きかけてるのかな。 (………んー…継美って年上好きなのかぁ?) 「……継美〜、悪いことは言わないからあの人はやめといたほうがいいんじゃないのー?わたしはおすすめ出来ないけど…」 「? なんのことです?意味が良く…」 「あーはいはい、無自覚ね……、ウン、そーだよねー」 「??」 そりゃそうか。 近藤さんが好きだって気づいたのだって亜希が『継美お姉ちゃん、近藤さんにぞっこんなんだ!』って言ってからだもんね。 真面目でお堅い継美が自分で気づくわけないかぁ。 「さて、ひと暴れしますか」 「お付き合いしますよ、お姫サマ」 「ぶん殴りますよ」 「継美、顔怖いよ」 目の前で銀ちゃんたちが敵を伸していく。 鬼童丸さんのお面まで持ち出してこんなことしてるんだ。 なんのつもりでここに来たかなんて、知ってるはず。 これが弔い合戦なんだってバカでも理解できることだもん。 「…な、なんだコイツら…」 「理解できねーか?」 「 、 」 「今時弔い合戦なんざ。しかも人斬りのためにだぜィ?得るもんなんざ何もねェ。わかってんだ、わかってんだよ。んなこたァ。 だけどここで動かねーと―――自分が自分じゃなくなるんでィ。」 自分のバカみたいな理想とかそんなもののために生きてかないとうちはうちじゃない。 自分に嘘ばっかついて生きてたら、そんなの本当の自分じゃなくなっちゃう。 ここで動かないと、うちは一生後悔する。 そんな生き方はしたくない。 「てっ…てめェら、こんなマネしてタダですむと思ってるのか?俺たちのバックに誰がいるかしらねーのか」 「さァ?見当もつかねーや。一体誰でィ」 後ろ向いてみなよ。 あんたの後ろにいるのは誰だと思ってんの? 「オメーたちの後ろに誰がいるかって?―――僕たち真選組だよ〜」 「御用改めである。神妙にお縄についてもらおうか」 「アララ。おっかない人がついてるんだねィ」 「おっかないくらいで済めばいいけどねぇ〜」 あんたたちは子供からお父さん奪ったんだから、捕まって当然だよね。 ――――――――― ―――――― ――― 「うあ〜ん!うちの手柄にして給料ガッポリもらおうと思ってたのにィー!」 「結局一番デカイ魚は逃がしちまったか…。亜希が嘆くのも仕方ねェや。悪い奴ほどよく眠るとはよく言ったもんでィ」 「ついでにテメェらも眠ってくれや、永遠に。人のこと散々利用してくれやがってよ」 「だから助けに来てあげたじゃないですか。ねェ土方さん?」 「知らん。てめーらなんざ助けに来た覚えはねェ。だがもし今回の件で真選組に火の粉がふりかかったらてめェらのせいだ。全員切腹≠セから」 「「「え?」」」 (ま、マジでー!!?) あれだけ頑張ったのに切腹しなきゃなんないなんて。 それって土方さんの戯言じゃないんだよね??ねえ?! 「うち今すぐタイムマシーンさがそっかなー…」 「亜希……あなたってコは…」 うあーん!切腹なんてやだよー! ← ×
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