第五訓 4 第1戦目があんな感じだったから山崎さんは『2戦目の人は最低限のルールを守ってください』と声をかける。 しかしそれよりも先に勝負は始まっていた。 あまりの速さに2人ともヘルメットとハンマーを持ったままのように見える。 これ、もう勝負してるのかも怪しい。 どうやって勝敗を決めるつもりなんだ。 「ホゥ。うちの総悟と互角にやり合うたァ何者だあの娘?奴ァ頭は空だが腕は真選組でも最強をうたわれる男だぜ」 「互角だァ?うちの神楽に人が勝てると思ってんの?奴はなァ絶滅寸前の戦闘種族夜兎≠ネんだぜ、すごいんだぜ〜」 「なんだ、ウチの総悟なんかなァ…」 「オイッダサいからやめて!!俺の父ちゃんパイロットって言ってる子供並みにダサいよ!!っていうかアンタら何!?飲んでんの!?」 その言葉に副長達を見れば確かに飲んでいた。 叩いて被ってジャンケンポンを他所に勝手に飲み比べが始まっている。 酔っ払った人ほど扱いにくいものはないから勝手にさせておこう。 そうこうしている内に総悟くんたちの方は苛烈になっていき、ヘルメットつけっぱなしの上にハンマーを放ってじゃんけんなしの殴り合いに。 やると決めたならルールくらい守ってやって欲しいものだ。 こうなったら最後の対決で勝負!と思われたものの、副長たちは酔っ払って嘔吐。 「オイぃぃぃ!!何やってんだ、このままじゃ勝負つかねーよ!」 「心配すんじゃねーよ。俺ァまだまだやれる。シロクロはっきりつけよーじゃねーか。このまま普通にやってもつまらねー。ここはどーだ、真剣で斬ってかわしてジャンケンポン≠ノしねーか!?」 「上等だコラ」 「お前さっきから『上等だ』しか言ってねーぞ。俺が言うのもなんだけど大丈夫か!?」 「上等だコラ」 剣を抜いた2人は止めても聞かないだろう。 危なくなったら間に入ればいいと傍観することにした。 「いくぜ、」 「「斬ってかわしてジャンケン、ポン!!」」 勝った銀髪の男性は真剣を振るうものの、振るわれた先は桜の木。 綺麗なお花見場所の桜が一本伐採された。 対する副長は交わすどころか巨大な犬と相対している。 「心配するな、峰打ちだ、まァこれに懲りたらもう俺に絡むのはやめるこったな」 「てめェさっきからグーしか出してねーじゃねか、ナメてんのか!!」 この人たちは何をしているんだろう。 もう好きにさせておこう。 というか、こんなことになるくらいなら初めから一緒にお花見をすればよかっただけでは? 「真由〜、そんなとこ立ってないでこっちでわたしたちと飲も〜」 ひらひらと手を振られる。 里美さんは継美さんと斉藤さんと3人で酒瓶をあけて勝手に飲み始めている。 その眼前には2人が朝早くから作っていたお花見のためのご馳走も広げてあって、ぐ〜とお腹が鳴る。 これ以上こっちの喧騒に付き合う必要もない、かな。 「へー、神楽ちゃんっていうんだー!うち、亜希!よろしくねっ」 「亜希アルな!亜希はあんな奴と一緒で嫌にならないアルか」 「え?総悟のこと?ならないよ〜。だってうち、総悟のこと好きだもん!」 「亜希、男の趣味悪すぎヨ……」 「え゛え゛っ!?」 「お妙さん、いつもあたしの上司が迷惑かけてすいません」 「継美さんが謝ることじゃないわ。全部あのゴリラが悪いんだもの」 「今度しっかり言い聞かせておきますんで」 「是非宜しく頼むわ。 それよりも、私のことはさんづけじゃなくて気軽に呼んでくれないかしら?見たところ、継美さんは私より年上でしょう?」 「ではお妙ちゃん、と。お妙ちゃんもあたしのことは気軽に呼んでください。あと、うちの上司のことで困ったときは気軽に呼んでください。すぐ行きますんで」 「さっがるく〜ん、飲んで……ぶふっ?!」 「あ〜っも〜!どうして里美は何もないところですっ転ぶの!?」 「ご、ごめんねー。持ってきた料理無事だけどグシャグシャに……」 「もー。………ん、美味しいよ。いつもどおりの里美の味」 「退くんってさ、時々イケメンだよね。地味なのに」 「里美はいつも一言余計だよね」 「あの、…み、未成年用にジュースとかもありますけど、どう、ですか?」 「え?あっ、もらってもいいんですか?ありがとうございます!えっと、」 「き、木野真由、です。きみのところの上司さんにうちの副長がご迷惑をかけているようで……あの、すいません」 「いえいえ。銀さんもあんな感じですし、お互い様ってことで。あっそーだ。木野さん、ジュースのお礼と言っちゃなんですけど一杯どうですか?」 「え、あ、……じゃあ一杯、だけ」 みんな好き好きに楽しんでる。 やっぱり花見は大勢で楽しくやってこそだ。 ← ×
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