第四訓 2 「えーみんなもう知ってると思うが、先日宇宙海賊春雨≠フ一派と思われる船が沈没した。しかも聞いて驚けコノヤロー。なんと奴らを壊滅させたのはたった2人の侍らしい……」 「「「「「え゛え゛え゛え゛え゛!!マジすか!?」」」」」 わたしと斉藤隊長は真面目に話を聞いていたので完全なるとばっちりでバズーカの砲撃を受けた。 斉藤隊長は元々アフロだから髪型に違いは無いだろうけど、わたしはせっかく整えた髪が爆風で無茶苦茶だ。 テイク2まで行われたこの話に一生懸命反応を返しても『しらじらしい』と副長に切り捨てられるし、どうすればいいのやら。 「この2人の内、ひとりは攘夷党の桂だという情報が入っている。まァこんな芸当ができるのはやつくらいしかいまい。春雨の連中は大量の麻薬を江戸に持ち込み売りさばいていた。攘夷党じゃなくても連中を許せんのはわかる。だか問題はここからだ。 その麻薬の密売に幕府の官僚が一枚かんでいたとの噂がある。麻薬の売買を円滑に行えるよう協力する代わりに利益の一部を海賊から受け取っていたというものだ。真偽のほどは定かじゃないが江戸に散らばる攘夷派浪士は噂を聞きつけ『奸賊討つべし』と暗殺を画策している」 そこで真選組の出番、かぁ。 その幕府の官僚を攘夷派浪士から守ろうっていうんだね。 何にせよ三番隊はそういう実務には余り顔を出すほうじゃないから裏方でのんびりしていようかな。 ………暗殺者が屋敷に潜り込んでも大丈夫なように、さ。 とんとん、 「はい?」 『今日は三番隊も他と同じように警備をするようですZ』 (………え、そーなの?) 隊長に知らされた事実に驚きながらも指定の場所に行く。 その近くには総悟と亜希がいた。 2人はアイマスクをしてすやすやと寝こけている。 「こんの野郎どもは寝てる時まで人をおちょくった顔しやがって。オイ起きろ、コラ。警備中に惰眠を貪るたァどーゆー了見だ」 「なんだよ母ちゃん。今日は日曜だぜィ。ったくおっちょこちょいなんだから〜」 「今日は学校お休みだよ〜。ゆっくり寝かせてよ〜」 「今日は火曜だ!! てめーら、こうしてる間にテロリストが乗り込んできたらどーすんだ?仕事なめんなよ、コラ」 「俺らがいつ仕事なめたってんです?」 「「俺(うち)がなめてんのは土方さんだけでさァ!(だよ!)」」 「よーし勝負だ、剣を抜けェェェェ!!」 相変わらず楽しそうだなー。 縁側で足をプラプラさせてたらガン!という痛そうな音がして、3人が膝をついた。 その後ろには拳を構える局長と継美の姿がある。 真由は裏で官僚と話し中だからここにはいない。 「仕事中に何遊んでんだァァァ!!お前らは何か!?修学旅行気分か!?枕投げかコノヤロー!!」 「ギャーギャー喧しいっつーの!!ふざけてないでさっさと仕事しろ!!」 局長と継美が注意した瞬間、その背後からも拳が飛ぶ。 痛そうな音がして2人も膝をついた。 後ろには今回の護衛対象である幕府の高官がいた。 「まったく、役立たずの猿めが!」 「申し訳ありません。誠心誠意警護させていただきますのでお許し下さい」 こういう時の真由は口が回る。 いつもはおどおどした感じなのにペラペラ話せるし、普段もああであればいいのにね。 「何だィ。こっちは命懸けで身辺警護してやってるのに」 「あんなのの警護する時間がもったいないよ」 「お前らは寝てただろ」 うん、仕事してないね。 「幕府の高官だかなんだか知りやせんが、なんであんな護らにゃイカンのですか?」 「総悟、俺たちは幕府に拾われた身だぞ。幕府がなければ今の俺たちはない。恩に報い忠義を尽くすは武士の本懐。真選組の剣は幕府を護るためにある」 「そうはいってもねぇ……」 「海賊とつるんでたかもしれん奴ですぜ。どうものれねーや。ねェ土方さん?」 「俺はいつもノリノリだよ」 わたしは総悟と亜希側かなー。 あの幕府の天人護るために剣を抜くとか、それが武士の本懐とか、よくわかんないや。 それに局長はそういうけど、わたしは武士じゃなくて忍なわけだしそんな崇高な精神持ち合わせてないんだよねー。 大体みんなやる気なくしてるし、退くんなんかミントンやってる始末だよ。 あの天人が死のうがみんなどうでもいいんじゃないの。 「総悟よォ、あんまりゴチャゴチャ考えるのは止めとけ。目の前で命狙われてる奴がいたらいい奴だろーが悪い奴だろーが手ェ差し伸べる、それが人間のあるべき姿ってもんだよ。 あ゛っ!ちょっと!勝手に出歩かんでください!!」 叫びながら幕府の高官を追いかけていく局長。 真由のスキを突いて部屋を抜け出しでもしたのか、幕府の高官である禽夜サマは勝手に出歩いている。 いくら自宅の中とは言え勝手な行動はやめてほしいなー。 局長がどれだけ危険かを言い聞かせようとしても禽夜サマは聞く耳を持たない。 自分勝手な天人だと呆れ返っていれば、突然響く銃声。 「きょ、局長ォォォ!!」 その銃声は近くの建物から撃たれたもので、思わず屋敷を飛び出していた。 ← → ×
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