第一訓 6



犯人を逃がしてしまったかとハラハラしていたら平隊員たちは真面目に仕事をしてくれていたらしい。
犯人はホテルの15階にあるとある一室に引きこもっていた。
タンスや机でバリケードを張られているから強行突破もなかなか難しいところだ。






「オイッ出てきやがれ!無駄な抵抗は止めな!ここは15階だ、逃げ場なんてどこにもないんだよ!」






土方さんが何回も声掛けをしているけど、犯人が投降する気配はない。
簡単に投降するなら初めから逃げはしないだろうから投降させるのは至難の業だ。
でも、これ以上この犯人たちに構っている暇もない。
脅してみてはどうかとバズーカを構えて脅しをしてみるも反応はない。

相手もそれなりにこちらの手段を熟知しているだろうから当然の反応だけど、時間を食うばかりで進みもしない。


(困ったな……)






「土方さん、真由さん。夕方のドラマの再放送始まっちゃいますぜ」

「やべェ。ビデオ予約すんの忘れてた。お前は?」

「あの……ぼくも、です」

「よし、さっさと済まそう。発射用意!!」






副長の掛け声で構えられたバズーカ。
しかしバズーカが発射される前に、向こうからバリケードが蹴り開けられて3人組が飛び出てきた。
前の方にいた平隊員たちは3人組を前にして大人しく道を開けるのみで捕まえようとしない。

(な、何をして……)






「なっ何やってんだ、止めろォォ!!」

「止めるならこの爆弾止めてくれェ!!爆弾処理班とかさ…なんかいるだろ、オイ!!」

「おわァァァ、爆弾持ってんぞコイツ!!」

「ちょっ待て、オイぃぃぃ!!」






銀髪の男が手にしているのは00:10≠ニ表示されている丸い爆弾。
00:10って……残り10秒しかないじゃないか。
隊士たちは逃げ回り、男は残りが6秒になったことで大慌て。
残り6秒で爆弾の処理なんか出来ないのは明白。

(このままでは…!)






「銀さん、窓、窓!!」

「無理!!もう死ぬ!!」

「銀ちゃん、歯ァくいしばるネ。―――ほあちゃアアアアア!!」

「ぬわァァァァァ!!」






(………えっ?)


驚くぼくの眼前で、男が少女の傘で外へと吹き飛ばされていった。
窓ガラスを割って外に吹き飛ばされた男は命懸けで爆弾の処理をしてくれた。
そこには感謝をせざるを得ない。

とはいえ、彼らはテロリストの疑いをかけられていて、それは未だ払拭されていない。
感謝はすれど、今するべきことはただひとつ。






「あの」

「「?」」

「きみたちを大使館爆破容疑≠ナ逮捕します」

「「え。」」






事情はどうあれ、今は彼らを逮捕するだけだ。








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