だってだってだって、




「えー皆様!この度は木の葉隠れ中忍選抜試験にお集まり頂き、誠に有り難うございます!!これより予選を通過した十二名の"本選"試合を始めたいと思います!どうぞ最後までご覧ください!」


予選通過者が舞台となる闘技場のど真ん中で並んでいると、三代目火影様が高らかに宣言する。あれ?十二名??


「十三名じゃなかったっけ?」

「なんか理由あるんじゃないの?」


兄さんに修行をつけて貰ったうちは格段に強くなってると思う。カイアはチャクラ練ってばっかりいたらしいけど、何の為にそんなことしたんだろ?今更そんな修行したって意味ないのに………。それに、帰ってこないからサソリいじけてたよ!"娘に嫌われた"のどうのって。


「にしてもサスケは珍しく遅刻しているらしいね」

「何してんだろーねぇ…」

「さあ?」

「試合前に少し言っとくことがある。これを見ろ」


口に何か…千本的な"何か"(団子の串じゃなければ何でもいいや)を咥えた男が、トーナメント表らしきものを差し出してきた。


「十三名じゃなかったっけ?」

「ああ。少々トーナメントで変更があった。自分が誰と当たるのか、もう一度確認しとけ」


うちの相手は………んーと、山中ちゃんを負かしたあの冬実焔って奴かぁ、あの棍…長くて邪魔だな………攻撃のリーチ長いよね、当然だけどさ。


「なんで…音忍のドスって奴がいねェんだよ」


そうだ、シカマルは一戦多かったはず……なら何故?あの音忍が"棄権します"とか言う奴には見えなかったんだけどなぁ……。


「あのさ!あのさ!サスケがまだ来てねーけど、どーすんの?」

「自分の試合までに到着しない場合、不戦敗とする!」


サスケ兄ちゃんが不戦敗〜〜…?そんなことしたら、周りの観客達からは大ブーイング確実じゃん!あ、でも、うちはの生き残りならうちもだし別にいいのかな?どうせ大名達なんて写輪眼見たさなんだろーしね!


「いいかてめーら、これが最後の試験だ。地形は違うがルールは"予選"と同じで一切無し。どちらか一方が死ぬか負けを認めるまでだ。…ただし!俺が勝負がついたと判断したらそこで試合は止める」


つまり予選と場所が変わって、観客が増えただけって事ね!了解!まあ、ルール増えてなくてよかったってトコかな!だって、うち馬鹿だから変にルール増えててもって感じだし??


「じゃあ…一回戦赤砂カイア、アカリ。その二人だけ残して、他は会場の控室まで下がれ!」


おおう…カイア、一回戦かよ、頑張れ!!!


「カイア、」

「あ?」

「すっごい不良みたいなんですけど!?」


っていうか、服オニューにしてる上、腹部の帯に"赤"って!どれだけサソリの事好きなの、アンタ!


「あー、えー…その、頑張って!」

「それだけ…?」


それだけだよ悪かったな!!ぷいっと顔を背けたうちはナルトたちと一緒に上にあがる。そんな中ふと思い出す、あの試合………


「コレで、最期…」

「お、おい最期って…!!」

「ええ…」

「死を、意味してるよね…!?」

「…空遁…拘束地獄…」

「っ…」



…空遁…つまり、空気の事……だよね?兄さんに話したらサソリが教えてくれた、砂隠れの禁術……内容は詳しく知らない(というか興味なかった)らしいけど、危ないって事は分かる…。


「開け大罪、開け根の国……」

「まさか…封戌眼を…!?」

「カカシ先生!"ふういがん"って何だってばよ?」

「…昔、木ノ葉には闇月一族という一族がいたんだよ。まさか、カイアがあの眼を開眼させるなんて…ありえない…!」

「それってそんなに凄いの?」

「嗚呼、あの眼の前には全ての忍術、幻術、体術が通用しない。対抗するには其れを上回る能力が必要だ」



カイアの持っているらしい血継限界"封戌眼"……強力な瞳術らしいけどそんな強い術にリスクが伴わないはずがない…、安易には使えないよ、カイア……どうするの?


「貴方の事も…沈めてあげる」

「ふうん……やれるなら、やってみろよ」


カイアが背から巻物を取り、シュルル…と音を立てて開いた。其処にかかれる文字は"雪"………あれは"人傀儡"の巻物…!!


「何だってばよ、あれ」

「(まさか…あいつも傀儡師なのか!?)」


まあ、本当の事を言えば雪って大きく書かれた横に"化粧"って小さく書かれてるんだけど………カイアの傀儡である"雪化粧"はカイアの持つ力の一部に過ぎない。実を言うとうちですら"雪化粧"しか見た事がないんだよね……うん。サソリは見た事ある…っていうか、サソリと一緒に作ったらしいし……。


「僕の芸術とあんたの奇天烈な技…どっちが上かはっきりさせてやる」


 ボヒュンッ!!


カイアの背後に音を立てて現れたのは雪化粧含む8体の傀儡…やっぱりカイアは並の傀儡師じゃない、義子とは言えサソリの娘なんだ…!傀儡師が最低でも一度に扱えるのは10体まで………"下忍程度の実力で8体まで操れるのは天才でしかねぇ"ってサソリが言ってた。


「まだ百機には遠く及ばないけど、これだけあれば…アンタと遊べる」


雪化粧を自身の前に持ってきて他の傀儡を前に並べた。実質的に言えば9対1な訳だけど……あの空遁ってのはヤバい………対処法なんて、この試合中に見つかるものなのかな…?


「そんなもの唯の玩具に過ぎないよ」

「(アカリの奴、玩具扱いとか許せないじゃん!)」


何か砂の仲間の人怒ってなーい…??


「壊れろ!」


アカリって子はバッと手を前に突き出すとグッと拳を握り締めた。その、次の瞬間………


 バキ、


「「「「「!!」」」」」


…カイアの前にあった傀儡がひび割れ、弾け飛んだ…防御の為に展開された雪化粧も腕の部分が破壊されている。パラパラと無残に落ちる傀儡の残骸に会場全体が唖然となった時、笑い声が響いた。


「っふふ…っははは!雪化粧に傷を付けた人間は初めてだし、僕の傀儡を壊した人間も…下忍じゃあ誰もいないよ」



するすると巻物にしまわれた雪化粧。あっさりとしまうカイアに驚いて、よくよく観察して見れば………


「う、っわあ…」

「どうした?スザク」

「キレてる」

「は?」

「…カイアが、キレてる」


傀儡壊されてキレてる―――!!!!!キレたら手に負えないあのカイアが…!!!はっ…!よくよく考えたらカイアの傀儡は全てどっかにサソリの手が加えられてるんだった、そんなもの傷ならまだしも一体でも壊したら……ブチギレるに決まってる!!!ましてや、サソリが製作に殆ど関わっている雪化粧の腕まで壊したんだもん、怒り通り越して……殺気漂ってるんですけど!!!!!


「出すなって禁じられてたんだよ、この先は………危険だからって」


二つの巻物が同時に開かれた。其処には"禁"と書かれた札が張ってあったけどカイアはそれをビリッと破くと巻物にチャクラを流しこんだ。札の下に書かれていた文字は…"闇"と"光"……


 ボヒュンッ!!!


…現れたのは黒髪を持つ男性と金髪の女性だった。


「これは僕が作った、誰にも手を加えさせてない最高傑作だ」


サソリにすら…手伝わせなかった傀儡…?それを、何でサソリが禁術にしたの??サソリの腕に比べたらカイアの腕はまだ下だろうに………。


「凶悪なのは傀儡自体じゃない、安心しろ」


そしてカイアが指を動かした瞬間黒の傀儡が印を組み始めた。まさか、サソリの持ってる三代目みたいに血継限界を持ってるとでも…!!??


「闇(あん)遁―――漆落(しつらく)」

「!!??」


ピタリ…と止まったアカリはガクリと膝を付いた。い、一体どうしたって言うの?


「審判、」

「!」

「試合は僕の勝ちだ。早く止めろよ」

「?」

「早く止めなきゃ壊れるよ、其の人………何処がとまでは言わないけどね!!」


ゾクリ……ああ、まただ。あの日、カイアに感じた違和感と一緒だ………。


「………スザク」

「?」

「…僕が、スザクを赤に染めたって言ったら如何する?」



「…((ごくり」

「しょ、勝者赤砂カイア!!!」

「解いてあげるよ、仕方ないしね……"約束"だから」


"殺すな"それはつまり"壊すな"というのも同然の約束だった……。すっとカイアが左手を動かせば金髪の女性がアカリの背に手を付いた。そこから印が広がって術が解かれたらしくアカリが目を見開いて倒れこむ。


「僕は何も悪くないよ、先に奪ったのはそっちだもん」

「…(このガキ…底が知れないな…)」


崩された傀儡と二つの人傀儡を片付けたカイアが欠伸をしながら上に上がってくる。


「あ、の…カイア…」

「あ、スザク。どうしたの?」

「やりすg 「やりすぎ?どこが?サソリさんが手を加えてくれた傀儡を壊したのはあっちじゃない」 え?」

「ああ、大丈夫だよ…スザク相手に使ったりはしないから。それに、もう札で封じたもの。次は結界術も施してあるから安心だよ?」

「あ、そ、そう…だね」


何で、何でこんなにカイアが恐ろしいの?どうして…こんなに、…変わってしまったの―――カイア?


だってだってだって、今まで普通だったじゃない


何も変わってなどいない、
そう誰かがどこかで呟いた気がした




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