進む道がどれだけの困難に満ちていようとも
予選終了後、チョウジくんがお腹を壊してしまった。何故なら試合後の焼肉の食べすぎである。
「チョウジくん、お腹どう?」
「あ、のい!お腹空いて参っちゃうよ…」
「ご、ごめんね…花じゃなくて果物持ってくればよかったかな…?!」
「いいって。シカマルが持ってきたフルーツお医者様が駄目だって言ってたから」
「あ、そうなの…?」
「うん」
花瓶に花を生けて暫く話してから部屋を出た。何でもシカマルくんはナルトくんの部屋に行ったらしい。私は昨日も病院に来たから知ってるけどナルトくんまだ寝てるのかな…?行ってみよう…と思って歩き出した時、砂の一人…我愛羅くんが見えた。
「…我愛羅、くん?」
あの病室はリーさんの……。ポンッと肩に手を置くとビクッと過敏に反応された。
「!、…お前は……」
こちらを見ると睨む目を元に戻した我愛羅くん。
「怪我でもしたの…?それとも、リーさんのお見舞い?」
「……………あいつを」
「?」
「…殺そうとした」
「!!!」
「だが…無理だった」
「そう、なんだ」
「俺が、怖いか?」
「え……?」
「俺は、化け物だ…。俺が、怖いか?人を殺す俺が怖いか?」
そう問われた。私は、人に怯えてばかりだけど……。
「ううん、怖くないよ」
「!!」
驚いた様に眼を見開いた我愛羅くんに笑いかける。"怖いか"って問われれば"怖い"のかもしれない。でも、何となくだけど…そう感じない私がいる。
「あ、そうだ。はい、これ!」
「?、…花…?」
本当はナルトくんに持っていくはずだったんだけど…まあ、いいや。シカマルくんがフルーツ持って行っちゃったみたいだし…うん。
「砂隠れって砂漠だよね?お花、あんまり見た事ないんじゃないかな、って!良かったら貰って」
「………」
「はい」
そっと花を差し出せば彼は恐る恐るといった感じで花を受け取ってくれた。
「じゃあね!」
「……名は」
「え?」
「…お前の、名前だ」
「あ、え、えっと…のい……山中、のい」
「そうか」
その言葉と共に彼が歩き出した。名前を聞かれた理由は分からないけれど…何だか、悪い人じゃないらしい。
「あれ、我愛… スッ …え?花…??」
「やる」
「!、わ、私に…!!??」
「……俺にはいらないものだ」
「?」
我愛羅…?
「(愛情など…俺には……)」
「あの…」
「んー?」
「本選は明日なんですけど…教えてくれないんですか?四龍封印の事」
「知りたがりは紅真と似たり寄ったりじゃのォ…腹部を見せろ」
「!」
蝦蟇を口寄せして病院に運ばれたナルトとは違い、僕は今日も何故だかチャクラを練る練習ばかりだった。だから思い切ってそう聞いたら腹部を見せろと帰ってくる。腹部って、事は…やっぱり…!
「これで、いいですか?」
服を捲りお腹を晒す。すると"チャクラを練れ"と言われた。頷いてチャクラを練れば、腹部に現れる龍の紋様。今まで気付かなかっただけで、こんな物が出ていたっていうの?
「…封印が解けかけとるのォ…」
「え…?!」
「四龍封印はまずチャクラを練っても紋様が出る事はない」
なら…どうして…!?
「うちにある"何か"を感じた事はあるか?」
「!、…会話が、出来ました」
「!!、それはもう半分以上解けかけている証拠だのォ」
「じゃ、じゃあ、どうすれば…いいんですか!僕は…!」
「わしにもどうしようもない」
「え…?」
「封印が解けたらどうなるか、わしも知らん」
「そん、な……」
膝をつき地べたに座れば仙人さんはポンと頭に手を置いて僕に笑いかけた。
「四龍封印は施せんが、四象封印で封印が解けるのを先延ばしする事は出来る」
「!!」
「だが、四象封印如きではお前の体の中にいるもんを封ずる四龍封印に敵いはせん。チャクラを練る毎に着々と封印が解け始める」
「………それ、は…僕が忍としてい生きて行くのが無理だと言う事、ですか…?」
「……最悪そうなるだろうのォ…。お前の封印術は紅真からユズハに受け継がれ、それをユズハから受け継いだものだ。男から女に受け継がれる場合は封印を掛けなおすからいい」
「女から女では封印が弱まってしまうということですか」
「…物分りがえーな」
女から女に移される場合は生まれた直後、二重に四龍封印を掛けなおすのが当たり前なのだとか。僕は闇月が滅んだ後にお母さんから生まれた子…その封印の掛けなおしがなかったから、今頃になってこんな事になっているらしい。
「四象封印をかけたら、少しの間は伸ばす事が出来るんですか?」
「…諦める気がないのはユズリに似たのかのォ…」
苦笑した仙人さん。僕は、容姿はお爺ちゃんで、性格はお婆ちゃん譲りらしい。
「四象封印が何時まで持つかはわしにも分からん。チャクラを使いさえしなければ一生解ける事はないだろうが…お前にその気はないらしい」
「すみません…」
「変わりに聞かせて欲しい事がある」
「?」
「ユズハは元気かのォ?」
「………お母さんは、僕を産んで、亡くなりました」
「そうか…大きくなったあいつを見てみたかったが…」
この人は私のお母さんの赤ん坊の頃を知っているらしい。懐から取り出された写真にはお爺ちゃんとお婆ちゃんとお母さんの姿があった。
「紅真は封印術の天才でのォ…ミナト…四代目火影に封印術を教えたのは紅真だった」
「四代目火影に…」
「ああ。ユズハは綱手の幼馴染で、人一倍諦めの悪い奴で……」
「綱手?」
「ん?嗚呼…言わんかったか?わしは自来也、あの伝説の三忍とか言われてる一人だ」
「!!!」
そんなに偉い人だったんだ…この人…。
「さ、封印をかけるとするかのォ」
「…お願い、します」
中にいる何かの正体は自来也様も知らないらしい。それを知るのは闇月一族のみ。火影すらも、知らない極秘の正体…。あれは、一体…何だったんだろう…。
進む道がどれだけの困難に満ちていようとも
進むしかない。
だって、僕が皆の隣にあるにはそれしか方法がないんだもの。