この美しくも醜い世界




「オイ…おいおいおい聞いたかよ。今年の中忍試験5年ぶりにルーキーが出てくるって話」

「まさかぁ!どうせ上忍の意地の張り合いかなんかでしょ…」

「いいえ、その内の4人は、"あの"はたけカカシの部隊だって言う話よ?」

「面白いなそれ…。まぁ、いずれにしても―――」


 シュッ、ガッ!


「可哀想な話だがな…」














「おはよ、サクラ」

「!、カイア…おはよう」

「……ちょっと話そうと思ったんだけど…いい?」

「え?」


"中忍試験、本当は受けたくないんじゃないのか?"と問えばサクラは"何言ってるのよ"と笑った。無理して笑ってるなあ、これ…。ま、いいんだけどね。


「あ、サスケくん!おはよ」

「…ああ」


……うん、やっぱり無理してる。中忍試験は班でしか受けられない。サスケやナルト、僕の為に嫌々受けるというのがサクラの心境だろう…。


「サクラちゃん、オ〜〜ス!」

「う…うん!オハヨ…」


"えー!此処に名前書くの?"とか"アンタ、字読めないの?"等と騒いでいるナルトとサクラを横目にサスケに近づく。


「サスケ」

「!、カイアか…」

「サクラの様子、可笑しいって気付いてるか?」

「ああ」

「多分だけど、サクラは中忍試験受けたくないと思ってる」

「!」

「でも、中忍試験は班でしか受けられない」

「何…?!」

「あ、知らないのか…。まあ、そう言う事だから、僕ら3人に合わせて嫌々ってところかもしれなし…ただ引き離されたくないと思ってるのかもしれないし…とりあえず、サクラは迷ってるんだと思う」

「そういうことか…」

「うん」

「サスケくん、カイア!行きましょー」


サクラの声にサスケとの会話を止め歩き出す。サクラは自分で気付いていないだろうけど、サクラの実力も伸びてる。ただ其れが僕らと方向が違うだけだ。それに、まだまだ此れからなんだから別にいいじゃないか、弱くたって。


「久しぶりに来たな」

「うん」


"忍"とでかでか書かれた入り口を通り、301号室へと向かう。だが、中は凄く可笑しな事になっていた。これって………、


「中忍試験は難関だ。…かくいう俺たちも3期連続で合格を逃してる。この試験を受験したばっかりに忍を止めていく者、再起不能になった者…俺たちは何度も目にした


「!!」

「それに中忍っていったら部隊長のレベルよ。任務の失敗、部下の死亡………それは全て隊長の責任なんだ。。それをこんなガキが………ズズッ」


"どっちみち受からないものをここでフルイにかけて何が悪い!!"という男に"正論だな"というサスケ。確かに正論だと思う。受からないものをフルイにかけるのは悪い事じゃない。今の現状にも気付いてない奴がこれ以上先に進めるわけもないしね。


「俺は通してもらおう。そして、この幻術で出来た結解をとっとと解いてもらおうか…」

「僕らは3階にようがあるんでね」


"何言ってんだ?あいつら"という先輩の忍たち。この程度見破れないようじゃ中忍なんてなれないでしょ、うん。


「ほう…気付いたのか、貴様ら!?」

「どう?サクラなら一番に気づいてるはずだけど」

「え…?」

「お前の分析能力と幻術のノウハウは……俺たちの班の中で一番伸びてるからな」

「サスケの言う通り!」

「………(サスケくん…カイア……ありがと…)フフ…もちろん。とっくに気付いてるわよ。だってここは二階・・じゃない」

「うん!」


そして次の瞬間301というプレートが歪んで201という数字に戻った。フッ…と戻った景色に"見破っただけじゃ認めない"と蹴りかかってきた片方の忍。それにサスケが応戦しようとした次の瞬間、二人の蹴りは一人の男に受け止められていた。双方の攻撃の軌道を完全に見切って蹴りと蹴りの合間に体を滑りこませたのか、アイツ…。さっき殴られてたのと大違いだな…。


「フ――」

「おいお前、約束が違うじゃないか。下手に注目されて警戒されたくないと言ったのはお前だぞ」

「……だって」

「!」


サクラを見てポッと頬を赤らめさせた男に"これだわ…"と呆れたように首を振るお団子の女。先ほどの男も呆れたような顔をしている。そういえば、さっきはわざと殴られてたの…?打たれた後が消えてるけど…。そんな時、ガッツをした男がテクテクとサクラに近づいてきた。も…もしかして…?!


「あの――」

「!」

「僕の名前はロック・リー。サクラさんというんですね…僕とお付き合いしましょう!!死ぬまで貴方を守りますから!!」


 ガシャァンッ!!!


「「「「「!?」」」」」

「あ、ミー。遅いじゃない!」

「………。」

「ミー?」

「……リー……が、」


ふらりと後ろに倒れたミーさん?は意識を彼方に飛ばしていた。"姉さん!?"と驚くリーさん。まったく似てないよ、この姉弟…!


「ぜったい…いや…あんた濃ゆい…」


告白の返事にリーさんがガク…と項垂れた…次の瞬間だった。


「リーの何処が駄目だって言うの!!!」

「え!?」

「強いし、可愛いし可愛いし可愛いし可愛いし可愛いし。これの何処が悪いのよ!!!」


最初以外、可愛いしか言ってないんですけどこの人??!!そんなお姉さんにサクラも引き気味。それを察したらしいお団子の人が"落ち着いてミー"とお姉さんを落ち着かせてくれた。どうも、ありがとうございました。


「おい、其処のお前ら…名乗れ……」

「人に名前を聞くときは自分から名乗るもんだぜ」

「お前ルーキーだな…歳いくつだ?」

「答える義務はないな…」


お互いクルっと方向転換すると歩き出す。えー…なにあれ険悪…と思っていれば男の人がクルっと振り返った。"そう言えばお前の名を聞いていなかった"という様な目線で。僕への興味はサスケよりは興味薄かったんですね、まあ、いいけど…。


「行くわよ、カイアー!」

「ごめん、トイレ行って来る」

「はぁ?ったく…先行ってるから早く来なさいよ?」

「はーい。…えっと、僕の名前でしたっけ」

「嗚呼」

「カイアです、赤砂カイア」

「覚えておく」

「ご自由に」


そう返事をして歩き出す。誰もいない事を確認して印を結べば、次に視界が捕らえたのは先生の姿。


「お前ねェ…"一応"下忍って設定なんだからむやみやたらに瞬身とかの術を使うんじゃない」

「へへ…ちょっとした諸事情によりサクラたちとは別行動してて…。ん?まだ来てないのか?」

「嗚呼そうだな、まだ来てない。………そうか、サクラも来たか」

「まあ…まだ色々迷ってたっぽいけど決心したみたいだ」

「そうか」


そうやって暫く先生と待っていればナルトたちがやって来る。"遅い"と言えば"ちょっと色々あって…"とサクラが呟いた。"色々?"と問えば"さっきの濃い人とちょっとね"という答えが返ってくる。いったい何があったの…??


「中忍試験…これで正式に申し込みが出来るな…」

「!、…どういうこと…?」

「カイアに聞いたぜ。この試験スリーマンセル及びフォーマンセルじゃねぇと受験出来ないんだろ?」

「え?でも、先生。受験するかしないかは個人の自由だ…って。…じゃあウソついてたの?」

「もし其の事を言ったならカイアは兎も角、サスケやナルトは無理にでもお前を誘うだろう…たとえ志願する意思がなくても、サスケに言われれば…お前はいい加減な気持ちで試験を受けようとする…。サスケとカイアと……ま!ナルトの為に…ってな」

「…じゃ、もしサスケくんとナルトとカイアの三人だけだったら?三人でも受けられるんでしょ?」

「ここで受験は中止にした。この向こうへ行かす気はなかった…。因みにカイアはお前が来なかったら家に帰るつもりだったと思うよ」

「「「!」」」

「班でしか受けられないの知ってるのに此処まで来るのって唯の無駄足じゃん」

「カイア……」

「だが、お前らは自分の意思で此処に来た、俺の自慢のチームだ。さあ、行ってこい!」


ギィ…と開いた扉の中に入ろうとすれば先生に呼びとめられた。


「何?」

「火影様から伝言だ」

「?」

「"殺さぬ限り最低限の事は許す。本領を発揮して欲しい"…だと」

「……先生、」

「ん?」

「……確かに僕はナルトたちとは違うけど…、今此処にいる限りは唯の子供だから」

「!!」

「行ってきます」


そう言って扉の中へと飛び込んだ。














「……ハァ…」


警戒してるの気付かれてたのね…。まったく鋭い子だよ、ホント。


「頑張れよ、お前たち」


それにしても、カイアのあの目…危険だね…。


「先生、もう痛くないで…、っ」

「?、どうした?」

「っ、な、んでも………」



波の国で目にしたカイアの揺れた瞳。思えばあの時から少し可笑しかったんだっけ…。


「うるさいんですけど、アンタ。殺したとか一族とかいちいち叫ぶな、うるっさい!スザクが何した、アンタの勘違いで勝手にスザクを殺人者にするな。スザクは誰も殺してない」


あの抜け忍を見つめた視線は普段の彼女からは想像も出来なかった。そして、小さく聞こえた、あの言葉…。


「………スザク」

「?」

「…僕が、スザクを赤に染めたって言ったら如何する?」



あの時の瞳も、また揺れていた。そして、その奥に見え隠れするどす黒い何かを見た気がした。


この美しくも醜い世界


お前はこの世界に何を求めてるんだ?―――カイア




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