育児奮闘記。1/2


ドッ!!!




「危ねーっ!!!」




とある日曜日、沢田家の朝は母さんのこんな叫び声と物が落ちる音で始まった。
部屋を出たときバッタリ会った父さんと一階に降りればダンボールを目の前に荒い息を吐く母さんがいて、何してんだ、という思いが沸きあがる。




「何してんの?琉輝」

「あ。おはよう綱吉、志希。えっと、片付けしてたら上からダンボール降ってきた」

「降るわけないだろ!!?それ母さんの詰み方が悪いだけだから!!!」

「うるせー!片付け苦手で悪かったな、ちくしょう!」




―――誰もそこまで言ってないんだけどなぁ…。

呆れ顔でダンボールを片付けていく父さんを手伝う。
箱は意外にもちょっとだけ重くて、何が入っているのか気になった。




「で?このダンボールなに?」

「あ、それって………もしかして、」

「そうだぜ。志希が生まれてから3歳くらいになるまでのアルバム」

「イヤ―――!!!赤裸々なもん落ちて来てた―――!!!」




―――そんな恥ずかしいもの見たくね―――っ!!!

見たくないから母さんが開けようとするのを必死に阻止しようとしたら父さんに、諦めろ、と言われた。
確かに母さんは言い出したら聞かないし、有言実行っていうか、そんな感じの節があるけど諦められるわけがない。
どうせ開けたらテレビでよく見るような、あの時の志希が〜、とか、あの時はこうで〜、とか恥ずかしい話が始まるだけだろ!?




ビリッ




「んな!?開いちゃったよ!!」

「えーっと……お、綱吉ー!懐かしいもの見つけたぜー!」

「懐かしいもの?」

「じゃーん!」

「んなー!?そ、それ、初デートで撮ったプリクラ――!!?この嫁俺のHPまで削ってきた!!!」

「なんであたしこんなとこに……ま、いっか。ほら、志希。これがお前が生まれる前のアルバム」

「生まれる前?」

「お前の父さん、あたしが妊娠したとこから撮ってたんだよ」




母さんは、笑っちゃうだろ?、なんて笑いながらも愛おしそうにアルバムを撫でる。
父さんと母さんの関係は俺にとってとても理想で、こんなに仲のいい夫婦近所ではそんなに見ない気がする。
夫婦喧嘩も滅多にしないし2人共何時も笑顔だし、自然とお互いの事を想いあってて、たまに言葉に出して伝えたりする。
そう言う関係はとても素敵だと、俺は思う。


―――俺も何時か…杏奈ちゃんと……!




「志希、鼻の下伸び切ってる」

「!!?」

「やーっぱ綱吉の子だよなぁ、お前って」

「う、うるさいなぁ…」

「志希、母さんに煩いとか言うんじゃない。


あ、これ懐かしい」

「どれ?」




父さんが指差した写真には俺の両親と伯母さんである琉衣さんが写っていた。
父さんは心配そうな顔をしていて、母さんは父さんをどこか煩わしそうに見ていて、伯母さんは呆れ顔。
背景は俺ん家みたいだけど……まだ新居っぽい。




「これは妊娠発覚してから3日経ったくらいの時期だな。あの時の綱吉心配しすぎでうざかったんだぜ?赤ちゃんに何かあったら!って動き回るの禁止するくらいには」

「は?……父さん、心配しすぎだろ」

「あの時は何も知らなかったんだって!!」

「結局自分の母親に怒られて反省してたけど」




あの温和な婆ちゃんが怒るくらいには騒がしかったんだろうな。
その姿が想像できて何だが笑えた。




「……これは?このリボーンと対峙してる父さんの写真」

「う゛。それは………」

「お前の命名権の取り合い」

「!?
何それ。なにやってんの!?」




「産まれて来る奴は仮にもボンゴレ十代目の息子だからな。恥ずかしい名前は付けられねぇだろ」




「「「!?」」」

「リ、リリリ、リボーン…「(チャッ」さん!」




―――銃構えないでください、ごめんなさい!!!

降伏するかのように両手を上げれば眼前に突きつけられた銃が退けられる。
こんな命削るような日常を送ってきた父さんを尊敬するよね、ほんと。




「んで、結局ツナが折れなかったんでお前の名前はツナ命名だ。よかったな、チッ」

「何が!?」

「っていうか舌打ちすんなよ!!!」




聞きたくないけど、リボーンはなんて名付けようとしてたんだろう…。




「ツナが折れてたらイタリア名つけようと思ってたんだ」




さらっと心読まれたけどセーフ!!!父さん有難う!!!




「……にしてもお前らのアルバムアホ面ばっかだな」

「笑顔って言え、笑顔って!!」

「…ん?なんでこんなとこに水葉と紫音の写真があるんだ?」

「は?……あー…それ瑠香と鈴音の奴が撮ったんだよ。うちのこの方がかわいい、って。まだ産まれてもいねーのにさ」

「親バカだな」

「だよな…」




それから暫くリボーン含め4人でアルバムを見続けた。
段々と大きくなっていく母さんのお腹、父さんらしくなっていく父さんの姿、そして両親を囲む様々な面々の姿。
特に印象的だったのは母さんより少し早く妊娠していた芽埜さんの誘いでマタニティ・スクールに行ったらしい父さんと隼人さんの姿…かな、うん。




「綱吉ってばさ、模型の赤ちゃん抱くの最初凄く怖がってたんだぜ?」

「もしもこれが自分の子供だったら、とか思うと不安になるだろ!!」




「いやいや、そのための練習だったわけだしさ。綱吉ってばホント笑えるよね!」




「「「!?」」」

「お邪魔してます、十代目!と、お久しぶりです若!」

「十一代目!こんにちは!」

「ぎゃー!!やめてください隼人さん!!!隼音もやめろよな!!」




―――若とか十一代目とかなんか、ヤ○ザの跡目っぽいじゃないか!!!

そんなの杏奈ちゃんに聞かれた日には余裕で死ねる自信がある。
学校でもこんなだから毎日ヒヤヒヤでいつバレるかわかったものじゃない生活を送ってるんだ。

誰か胃薬頂戴。




「つーか集まりすぎじゃね?いつのまに…」

「俺が呼んだんだ。そのうち色々合流予定だぞ」

「ここ俺ん家!!!つーか色々って何!?」




もう、リボーンのハチャメチャ振りに慣れた俺がいる。
こんなの、慣れたくなかったなぁ。




「あ!妊娠と言えばさー、琉輝くん難産だったよねー」

「え…?」

「あー…あれな。陣痛微弱」

「そうそう。うちは普通に生まれたんだけどねー。陣痛とか痛かったけど隼音が生まれた幸福感のほうが大きかったなぁ」

「ちょ、お母さん…!///」

「でも親ってそんなもんだぜ、隼音。自分の子が1番可愛いんだって」




そう言って母さんに頭を撫でられた隼音はぽっと顔を赤くして俯いてしまう。
芽埜さんが、かっわいいんだからー!、なんて抱きしめちゃったりしてうちの中がどんどん騒がしくなる。

ここにほかの人たちが増えるなんて想像もしたくない。




「でもさぁ、ほんと妊娠してからってドキドキとワクワクの連続だと思うんだよね。子宝って言葉も頷ける気がするの」

「だよな。あたしも志希がうまれて幸せだもん」

「〜っ///」

「子供の生意気さが可愛いとか思える日が来るとは思ってなかったですよ、昔は。アホ牛とか最悪でしたしね」

「獄寺くんはランボと仲悪かったもんね。自分の子供だと可愛く思えるってのは同意するし、なんか許せちゃうよね。
志希も最近生意気盛りなのか反論ばっかしてくるけど、あの程度はまだ可愛いもんだよね」

「〜〜っ///」

「「あー、我が子っていいわー」」

「〜〜〜っ///」




バン!




「あっ、おい志希!?」




―――母さんたちのばかー!!

羞恥心で死ねそうになってリビングを飛び出した。

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