万太郎になっちゃったよ | ナノ


▼ 僕の後輩が、:ジェイド

僕の後輩がヤバいの続き

ハロー!僕はキン肉マンの息子にして転生者特典の原作知識:Cを持ちながら活用できない上に空回るキン肉万太郎(偽)だよ!いきなりこんなテンションで申し訳ないけど、テンション上げとかないとちょっとやっていけそうにないんだ。ごめんね。前回、僕はまたしても性的な意味でジェイドに迫られてしまったわけだけど、結論から言うとね。僕の後輩のジェイド君は現在、意識不明のため入院中です。やっちまった。とうとう、やっちまったんだよ僕。包容から脱出、ジェイドの手足を(綺麗に骨が繋がるように配慮しつつ)へし折って高台から下へ投げ落としてしまったんだ。でも言い訳させてほしい。あれは正当防衛だと。正当防衛だと思わせてください。自分の浅はかさに吐きそうだよ。

僕はジェイド搬送後から毎日、ジェイドの病室に通っている。せめてもの罪滅ぼしで入院中のジェイドの看病は出来るだけ僕がやると申し出たんだ。犯人が被害者の病室に普通にいるとかとんだサスペンスホラーだけども。

駆けつけたブロッケンJrさんは第一発見者の僕に感謝と犯人への報復を宣言していて罪悪感と恐ろしさで目を合わせることか出来なかった。すみません。全部、僕がやりました。僕の様子を違うベクトルで受け取ったブロッケンJrさんはそこまで気に病む必要はないと慰めてくれて僕はこの人に足を向けて眠れないと思いました。本当にすみません。気に病むも何も僕がジェイドをやりました。しかしながら僕は自分が犯人だと名乗る度胸はなかった。例えジェイドが目を覚ませば露見するとしても怖いものは怖い。

ジェイドを看病しながら超人の回復速度に改めて感嘆と感謝をする日々だった。医者の話ではもうじき意識を取り戻すとのことらしい。手足にギブスを着けて死んだように眠っているジェイド。目が覚めるのが嬉しいようなそうでもないような複雑な心境で金色の髪を櫛で整えながら彼が目を覚ましたら何を話すか考えている。彼が入院して毎日。

何を言うべきなんだろうか?

「君の好意が嫌な訳じゃないんだ。嫌われるより好かれる方が僕は良い。ただ困る。どうすべきなのか、」

僕が彼の好意を遠ざけるのは前世で培われた常識とこれからの未来を考慮すると恐ろしいからだ。付け加えると男の体になってからか感性も男寄りであるのも一つ。結局は自分可愛さで彼の好意は受け取れない。それが何時もの結論なんだ。酷い奴だよね。そうだとしても僕は知らない未来が訪れて死ぬかもしれない可能性が怖い。

「僕は皆が思ってるほど凄い奴じゃないし、期待されるほど大層な奴でもない。君が好きだと思ってるのは本当の僕じゃない。僕はただの臆病者なんだ」

死にたくないから痛い思いをしたくないからここまで来ただけの元は普通の人間なんだよ。皆、都合よく勘違いしている。僕もその勘違いを正す気なんて無い。困るけど訂正する理由を話す勇気は僕にはない。運命からは逃げ切れないけど人の感情からは逃げ続けている。だから真っ直ぐ好きだと愛してると言う彼が羨ましくもあって恐ろしい。

「僕は君が怖い」

怖いけれど

「偽物な『僕』を好きになってくれてありがとう」

最初に言ったように君の好意は嫌じゃないから。『私』だったら受け取れたのにと思えるほどには。

「でもね。少し考えて行動した方が良いと僕は思うんだ。相手の了承もなく及ぶとか普通に犯罪だからね。後、人の話は最後まで聞かなきゃダメだよ」

彼が寝ているからこそ言える言葉をいい終えたら不満まで出てきてしまった。寝ている彼に言っても仕方ないっていうのにね。ああ、ちゃんとジェイドが目が覚めたときの事を考え

「俺にとって、目の前の先輩が本物で、貴方だから、好きになったんです」

ふぁ?

弱々しい掠れた声。でも間違いなくジェイドの声だった。視線を向けたら瞳は少しではあるけど開いていて、

「あ、あわわ、ジェイドくん?い、いっ、何時から?」
「君の好意が嫌な訳じゃ」
「ホワアアアアアアアアアアア!!!!!」

気を付けろ!万太郎(偽)が爆発するぞ!
いや、しないけど!しないけどしそうだよ!かつて無いほど死にそうだ!落ち着け!落ち着くんだ僕!大丈夫、聞かれても問題ない内容な筈!大丈夫だよね!?

「きゅ、急に叫んでごめん。起きたんだねジェイド」
「はい、先輩の、お陰で」
「じゃあ、ナースを呼ぶよ。ちょっと待ってて」
「先輩、ぐっ!」
「ジェイド!」

苦しそうに呻くジェイドに咄嗟に近寄ると唇に何か触れる感触が伝わる。目の前には蕩けそうな笑顔のジェイドがいてその表情を見て幸福なんだなーと他人事の様に思った。

「先輩が、俺を好きなるまでキスはしないと、決めてましたけど、確信しました、先輩は俺が好きです」

キスはダメでも襲うのはいいのかよ。とか色々とツッコミたい所があったけど鼻の奥がツンと痛くて声が出ない。

「だから俺は貴方を諦めない、諦める理由が、ない」

声は弱々しいのに僕を映す目の奥に宿る何かは力強くて。もうやだ。この一気に強きになってるジェイドも最悪だけれど。顔が異常に熱く心臓が飛び出そうな程、胸を高鳴らせてる僕も最悪だ。ごめん、『僕』。


未来とか運命なんて知らないよ!どうにでもなあーれ!


prev / next

[ back to top ]