羨ましい、羨ましくない

「hey!リスナー!今日も俺のライヴにようこそ!!エヴィバディセイヘイ!!?今夜も俺とお前の素敵な夜にしようぜ!!」

ヒーローでありながらラジオやテレビで大活躍しているプレゼント・マイクの深夜ラジオを聞く。机には雄英の普通科の受験に向け、そのための参考書や過去問の書かれたプリントを広げている。

行く宛もなくさ迷っていれば、見かねたヒーローが声をかけてきて、経緯を伝えれば諭され、学校に戻された。「きっといつか個性がわかるさ!」と笑いかけられても、そんなことは昔からずっと言われてきた。

(いいんだ、私はもう、落ちこぼれでいいんだよ)

普通の人にもなれない私は、せめて学力で力をつけるしかない。就職するときに有利になるだろうから、という理由で雄英の普通科を受けるのもそのためだった。そもそも雄英はヒーロー科が有名で、その倍率は300倍。世間一般で使われている狭き門よりももっと狭い。せめて、とヒーロー科の落ちた優秀な生徒が、普通科に溢れてくるからなまえのような生徒にとってみれば堪ったもんじゃない。もっと勉強しなければ、と必死に勉強に励んでいた。

「この時期になったら受験生リスナーからの、"雄英のヒーロー科に入るためにはどうすればいいですか"的な質問が多いなァ!?オイ!」

普段は楽しいはずのプレゼント・マイクの声が、何故だか今日はひたすら頭に響いてうるさかった。学校から出ていったり、今日のなまえは何かがおかしかった。

「んなモンな、自分の可能性をひたすら信じることだ!はい、みんなで一緒に!?"Plus Ult…"」
「うるさいっ!!」

ガンッとラジオに、今しがたなまえが持っていたシャーペンがぶつかった。はあ、はあと肩で息をする。何もかもが煩わしかった。

「……もう、寝よう」

なんだか、疲れた。
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