心は不透明

「んー、宿題多いなあ…」

雄英はヒーロー科もさることながら、普通に偏差値も高い。そのため、課題もすこぶる多いのだ。文武両道って感じ。私に武はないけど。

忘れてしまった、苦手な数学の公式をネットで調べているとヴッとバイブ音が鳴った。送信者は爆豪くん。うわあ…やな予感しかしない。でも、彼いわく私の"ご主人様"らしいので、無視はできない。無視していいことなんて何一つない。気づかない振りもしたかったけど、それをしたって殴られるくらいはされると思う。

メールを開くと、『今日何してた』とだけ書かれてあった。これはどうするのが正解なんだろうか。でも、爆豪くんいなかったから帰ったよと言っても、梅雨ちゃんたちから本当のことが伝わるだろう。

"爆豪くんがいなかったから、蛙吹さんたちと少し話してみんなで帰りました"

と、送るとすぐに返信が来た。爆豪くんは意外と返信が早い。

"心配して家に来るぐらいしろよ"

家に行ったら何されるかわからないじゃん……。もうあんな恥ずかしいの嫌だ。あ、でも媚を売らなきゃ捨てられるのか……。いやいや、それがそもそもおかしいんだよね。

「爆豪くんは…なんか、いろいろとすごいなあ…」

どうやったらそんなに自信満々に生きられるのかを教えてほしい。緑谷くんといろいろあって拗ねて帰った、まではやはり彼も人の子なんだなあと思ったけど、緑谷くんより更に下の私に意気消沈してるところ見せれないもんね。

返信を迷っていると、着信が来た。あー、もー、今日は徹夜で課題することになりそうだ。今するのは諦めて、ベッドに寝転がって電話の通話ボタンを押した。

『遅ぇ』
「ごめんなさい」
『てめー、まだ自分の立ち位置わかってねえみてぇだな』
「だってどうしたらいいかわからなかったから…」
『余計なこと話してねえだろうな』
「普通に…授業の話とかしてたし…」

口調がいつもよりもきつめで、思わず起き上がって正座をしてしまった。

『お前電話だと調子ノんな』
「えっ!?そんなことないです、よ」
『いいか。てめぇみたいな愚図の役立たず、俺しか相手にしねーんだからな。クラスの奴らがお前の相手してくれたのも、俺と知り合いの珍しい女ってだけだから、勘違いすんなよ』
「……はい」
『てめぇは俺がいなきゃ何もできねえからな』

そんなことはない、けど。確かに今日梅雨ちゃんたちと話せたのは、それが理由だと思う。私だって、あの爆豪くんを訪ねてきたのがこんな地味な女だったら、どんな関係かって怪しむもん。でも、爆豪くんに関係する話は少しだけだった。お茶子ちゃんの「爆豪くんと中学一緒ってことはデクくんとも?」という質問くらいだった。

それでも、あの人たちと話せたのは、そもそも爆豪くんがいたからであって。

「ご、ごめんなさい……ありがとうございました…」
『感謝しろよ出来損ない』
「はい…」
『でも最初の生意気な態度は許せねえ。罰として明日迎えに来いよ』
「は、?」
『あ゛?』
「わっわかりました!!」

???

ぶつっとまた一方的に切られて会話が終わった。

??????

何で、迎えにいかなきゃならないの?

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