瀬呂範太




「あっはっはっは!!」
「笑うなよみょうじ!」

朝からおかしくって、おかしくって。偶然、道の先に瀬呂くんが居たから話し掛けようと近づくと、本当に小学生数人にどんまいコールをされていた。「どーんまい!どーんまい!」と楽しげに手を叩いていたのだ。多分、体育祭で違う意味で記憶に残るシーンだったんだろうな。当の本人は嫌そうな顔をしているけど。

「いいじゃん。轟くん食ってるし」
「いいような悪いような…。かっけぇとこ見せたかったぜ……」
「私なんかトーナメントすら行けなかったのに。贅沢者め!」

バシッと背中を叩いてやった。どんまいコールが何のその!一向に見せ場ができずに、終わった私より全然マシ……。そう打ちひしがれると、瀬呂くんが焦ったように弁解し始めた。別に慰める必要ないのにねえ。

「それに、私としては“どんまいの人“で終わってくれてよかったかも」
「何でだよ。印象薄すぎんだろ、それ」
「だってライバル増えるじゃん」

ぽそりと呟くと、瀬呂くんが首を傾げた。

「何の?」
「恋の」

何の気なしに言ってみれば、途端に固まって、じわじわと赤くなっていく。「は、な、何言って、」たじろぐ瀬呂くんに対して、したり顔で笑った。

「嘘だよーん!!」
「はぁーー?!質悪ぃー!!」

心臓に悪すぎんだろ!と、瀬呂くんが苦笑いをしながら頭をかいた。

「なんて、照れ隠しって言ったらどうする?」
「………あんまからかってると、本気にするからやめよーな」

にやにやしながら言えば、瀬呂くんが真顔になった。乗ってくれなさに、むっとなって、私も真顔になる。

「本気だよ」

マジ?うん、マジ。目配せで受け答えをする。あ、また赤くなった。

「なーんてね!」
「お前ほんっとそういうのやめろ!!」

瀬呂くんが、ついに道路に崩れ落ちた。大分離れたはずの小学生から、「どーんまい!どーんまい!」のコールがまた届いた。

「瀬呂くんの好きなように解釈してくれていいよ」

さて、どれが本当でしょう。