この非常時を面白いなんて…!

酷い兎だな、えんちょーさん。
……ほんと、酷い。こっちは、帰れないというのに…面白いなんて…

「うっ、ううっ……ぐすっ…」

「ああ…!泣いちゃった!」

「園長が面白いとか言うからだしー」

「ちょ…お、落ち着け?なっ?」

皆さん(ここまできて″動物たち″は失礼だから″皆さん″に変えようと思う)は慰めてはくれるけれど、元々あった傷に塩を塗るようなことを言われたんだ。
決してえんちょーさんのせいではないけど、簡単に泣き止めたら私だって苦労しない。

「うっ、う…も、やだぁ…帰りたい…かえりったい、よぉ…!」

「っ園長!この子…動物園に連れてくことって、ダメですか!?」

「ハナちゃん…」

女の子…いや、ハナさん?がえんちょーさんにお願いをしている

そ、それって私のため…なの、かな

だとしたら申し訳ない。
それもあって、泣いてることもあって…ずっと俯いていた。

「ワシが言うつもりじゃったのに、蒼井華め」

けれど、えんちょーさんの言葉に驚いて顔を上げる。

え?え?
そ、それは…えんちょーさん達と一緒にいていいってこと?
んん?

自分に都合いいように思い込んでいいのか分からなくて、思わず首を傾げてしまった。

視界の端には顔に人参が刺さったハナさんがいた(気にしないほうがいい…のかな)


「もう一度言うぞ。亀!ワシの動物園にこい!!」


いくら私でも理解はできた。
居場所がないとか、これからどうしようとか思っていたのですごくすごく嬉しい誘いだけれど…私なんかがいていいのだろうか。もしかしたら同情からくるものかもしれないし。

そう思うと複雑で、すぐには頷けなかった

「…だ、ダメ…かな。君のためにもなると思うんだけど…」

ハナさんたちは伺うような、困惑するような顔をしていて
私がその顔をさせてると思うと、僅かながらも罪悪感が込み上げてきた

「………面倒じゃ、お前もう連れてく!」

「う、うおお…!?」

ひょい、と担がれた私。
せめておんぶとか横抱きとか考えなかったのだろうか

「亀さん、嫌だったら嫌って言っていいのよ?」

さっき溺れていた女の人が言う。
嫌?…ちがう、嫌なんかじゃ…

「い、嫌っとか、じゃ…ないんです。嬉しいです!…でも、私なんかが、皆さんといたら…きっと、迷惑…かけます…」

「その考えが迷惑なんじゃ」

「え…」

思わずぶちまけた本音に返ってきた返答。
え、すいませんと言ってしまいたかった

けれど…
皆さんが口々に言う。

「言い方はあれだけど…僕!僕達も!同じこと思ってるよ!うん!!」

「オレ達がいつ迷惑なんて言ったんだ?」

「そうだし!大上の言う通りだし!」

「だから…ね?亀さん、私達と行こう?」

他にも首を横にブンブン振ってるサイさんだったり、でっかいゴリラさんたちが誘ってくれた

…いい、のかな
一緒にいても

嬉しくて、涙ぐんでしまった

「っはい!わ、私も…皆さんと、一緒に行かせ、下さっ…!」

最後は泣いて言えなかったけれど、私はとても良い人(動物?)たちに拾われたようだ。







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