血の臭いが香ってきて、すぐに鼻を抑えた。
気持ち悪い、気持ち悪い、怖いよ。
館長さんの足音しかしない空間で、耐え切れずにぽろぽろと涙が出てきた。
館長さんは何も気にしてない様子で「集客案ちゃんと考えとけよ」と、さっきのあの笑顔で言い、会議室から去って行った。
すると幹部の人達がぞろぞろと席を立ち各々発言して行く。これまた、サメさんの事を、何も気にしていない様子で。
どーでもいいとか、やったとか、哀れな魚だ、とか…
何故、そんな風に言えるのかが私には分からない。きっと、この先ずっと私には分からないんだろうね。わかりたくも無い。
「さあ各自持ち場につけ」
とシャチさんが言ったところで、それぞれの仕事に動き出した。
無慈悲な人達…いや、魚達。最低。
この魚達の前で見せつけるようにご飯を食べてやりたい。
幹部が散って行くのを余所目に、イガラシさんが私の手を引いて「時は金なり持ち場に早く…」と紛れて出ようとしたところをイガラシさんが縄をぐいっとシャチさんに引っ張られた。そして私の縄は角の…多分、イッカクさんに持たれ、離れ離れに。覚えとけ!えんちょーさん達にぼっこぼこにされればいい!ふん!
「この小部屋に制服がある。サイズの合うものを着て来るんだ!なるべく急ぐように!」
「や、やです…」
「声が小さい!もう一度!」
「なんでもないですよもおおおお…」
うるさい!イッカクさんうるさい!一々!
ちょっとのイライラと、大きな恐怖を胸に抱えながら部屋に入り、数着しかない制服の中から適当に私のサイズであろう物を取って着る。
私はどうやら従業員らしい。館長さんが言ってたような気もする。
…あ、ショートパンツなんだ。なるほど、女の子用だね。
…って感心してる場合じゃない。
急いで部屋から出ると、「遅いぞ!そして帽子を忘れてるじゃないか!やり直し!!」と怒鳴られた。うるせー!!ばか!!!
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