ふと目が覚める。

…私泳いでる?いや、でも体はどこも動かしてないし、寧ろ動けない…
あ、そっか抱えられてるんだ。あの、シャチさんに。

もう私にはどうすることもできない。
きっとこのシャチさんは、えんちょーさん達を振り切って来たんだ。
私どこに連れてかれるんだろう。売られる?食べられる?殺される?
やだな、やだよ、もう少し楽しく長く生きたかった。
涙が海に消える。
そういえばえんちょーさんに拾われたときも海に涙が拐われたなぁ…

これが走馬灯ってやつなのか、あの日のことが頭をよぎっていたら突然スピードが下がる。

「海亀、俺達は食用にお前らを拐ってきた訳じゃあない。俺達は、な」

「う、え、はっはい…?」

こちらに目も向けずに言うと、シャチさんは陸に上がった。
俺達は、ってどういうことなんだろう。分からないけど、深追いしたところで何も変わらないとは分かっていたので気にしない、うん。

ちょっと分かったことがあるから話を戻す。陸、とは言うものの水族館の中で。室内だ。それだけ。水族館の中にいるっていうことと、逆らっても無駄ってことしか、私には分からない。

「お帰りなさいサカマタ殿」

「にに任務どどどうだったった?」

横から声がしてそちらを見ると、長い帽子を被った人が。でも多分、人じゃない。亀の勘です。

「でらうるさい喰うぞ」

「喰う?「お帰りなさい」には「ただいま」が礼儀でしょう?」

「はあ…それがうるさいってんだよ、イッカク」

会話だけなら反抗する子とその親ってところかな?
けどそれも、イッカクさんとやらともうひと…もう一匹が取った帽子のおかげで現れた素顔に覆されてしまう。

「横柄!!実に横柄だサカマタ殿!!決闘だ!!」

は、鼻?角?が長くて…目が愛くるしいような…

「にに任務はどうだったってってきき聞いいい…」

その隣の…う、うねうねしてる…!タコ!!!タコとしか言いようがない…!

「それを館長に報告しに行くんだ邪魔するな」

「では決闘はまた後日だ!!」

カツカツと再び歩き出したシャチさん…サカマタさん、は館長さんのもとへ向かっているらしい。
どんな人なんだろう、穏やかな人だといいな…無いだろうけど。
ちなみにタコさんの、館長に殺されてしまえという呟きはきっとサカマタさんにも届いていたと思う。







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