かまってちゃんな相澤先生


※相澤先生とプレマイの高校時代捏造してます



教師という職に就いて今年で2年目。その前までは人を救うのが命世間からの人気も命のヒーロー職に就いていた。出は雄英の私が、今は雄英の先生だ。人間何があるかわからない。

なんとなく過去を回想しながら生徒が提出した課題を一つ一つ丸つけしていく。間違えてる問題には回答と共に解説を。張り切り過ぎは疲れるぞと言われたことがあるが、生徒に真摯に向き合って何が悪い。
定時は17時。今は18時をとうに過ぎた。残業なんて言葉が耳に痛い。
黙々と目の前の提出物に向き合っていると、コン、と頭に何かがぶつかった。

「…なんですか相澤先輩」

「別に」

「別にじゃないでしょ!消しゴム投げたの先輩じゃないですか!」

「投げてねえ」

「いや投げましたよね」

「投げてねえ」

あんたこっちを見向きもしないくせに手は私の筆箱を漁ってるんだよ。わかってるんだよ。

「もう…集中してるんでやめてください」

そう言ってまた提出物へと向き合う。
んーと、この公式を使っちゃったのかな…どう解説したものか…
頭を抱えていると、ジッパーが開く音が響いた。ほとんどの先生方は大抵帰宅したか飲み会に行ってるので職員室には数人しかおらず、しかも職員室がどでかいので私の周りは無人のようなものだった。相澤先輩を除いて。なに、まだ私と先輩の他に誰かいたっけ。……いなかったよね。

「先輩!」

「何だ」

「何だじゃないでしょ!人の鞄漁らないでください!」

「漁ってねえ」

「じゃあその手はなんなんですか!」

「なんだろうな」

「なんだろうなってなんですか!」と声を張ると「シーッ」と人差し指を立てられた。なんで私が怒られてるの!

私が後輩で強く出れないのをいい事に、高校時代からこの人はよく私にちょっかいをかけてきた。ヒーロー活動で大怪我を負い、挫折していた私を雄英の教師へ引き入れたのも先輩だ。またちょっかいをかけられることを想定してなかったわけじゃないが、その手を取ってしまったのは私だし、手を差し伸べられて救われたのも確か。本気で怒れないのをこの人は知ってるからズルい。

プリントを机にトントンと立てて纏める。

「終わったか?」

「はい。…てか先輩はなんで残ってたんですか?」

「あ?あー…」

「……、」

返事もなあなあに、先輩はガタリと椅子から立ち上がって「飯行くぞ」と言った。「え!?奢りですか?」なんてわざとらしく言ってみたが、先輩はいつも奢ってくれる。ありがたい。

「いいぞ。どこ行く」

「パスタもいいけどなー先輩コスチュームのままだしそれだと入店拒否されそうだしなー」

スパーンといい音を立てて頭をひっ叩かれた。間違ったことは言ってない。

余談だが、マイク先輩と三人で行くと大抵マイク先輩の奢りだった。高校の時から、相澤先輩は話の流れでマイク先輩に奢らせるのが上手かったのだ。

支度をして鞄を持ち、ほかの先生方へ挨拶をして職員室を後にする。自然な動きで先輩に鞄を奪われた。

「今度はなんですか?」

「労いだ、労い」

「なら採点手伝ってくれればよかったのに…」

「なんか言ったか」

「な、なんでもないでーす!私串かつ食べたいなー!」

「女子力って言葉知ってるか」と言われ、「知ってますけどなんですか!」なんて似たようなやりとりをしつつスマホを起動させる。ロック画面には多数LINEの表示があり、返事をするべくスマホを弄っていると肩に、ポン、と手を置かれた。反射的にそちらを向くとムニッ。指が頬に刺さる。
目の前を見上げるとニヤっと笑った先輩がいた。

「なんですか!!」

「なんでもない」

先輩に対して「なんですか」と言った数を数えると百を優に超えるだろう。高校のときからこういう人だった、この人は。

駐車場に着いて、ヘルメットを渡される。たまにバイクで送ってもらう時があるので、先輩に似合わないこの白地に水色という爽やかヘルメットは私専用らしい。初めてそう言われた時は、めちゃくちゃ喜んだものだ。

「ただ、そうだな」

「はい?」

「お前を誘ってる男がいるってときに他の物に余所見なんかするもんじゃない」

高校時代からちょっかいかけてくるし、飲み会はあんまり行かないくせに私が参加する時は「酔っ払いの送迎」とか言って呑まないで参加するし、今日みたいに私が残業してると何もないくせに適当に用事作って残ってるし、こんな事、言うし、

「……っ」

ああもう、期待してしまうよ。

ヘルメットを被って既に跨ってる先輩が親指で自身の背中を指す。それに従って後ろの席に座って、先輩の肩に手を置いた。

「おい、危ねえから腰に回せっていつも言ってるだろ」

「へへ…すいませーん」

「…ハァ…不合理な奴だ」

改めて腰に手を回すと、ブゥンと音を立ててバイクが発進する。冷たい夜風から身を守るように、愛しい背中にくっつくように、キュッと腕に力を入れた。




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