「に」 榊×原田


18禁注意!






社会人として一日仕事をし終えた榊は、流した汗の匂いがする。
それに加え煙草、そして先程二人で食べた焼鳥の匂い、炭の匂い、それからたらふく飲んだビールの匂い。

こりゃ堪んねぇよ、原田は眉をしかめた。

例の如く小宮山のアドレスと引き換えだとかほざいた榊に従って、代行で帰宅した榊のアパート。
鍵を開けた瞬間室内に引っ張り込まれ玄関に押し付けられて唇を塞がれながら、原田はやれやれと溜め息を吐きたくなった。
別にそんなに急かなくとも、シャワー中に帰る訳でもない。

こりゃ相当溜まってたんかねぇ。髪が抜けそうな程の力で頭を掻き回されつつ、最後に致した日を考えていた。

「は、……っ榊、風呂、」
「後でいい」
「よくねぇよ汗臭ぇよ」
「ムードのない奴だな」
「あんたにゃ言われたくねぇよ……っ!」

口づけの合間に訴えてはみたが、榊はどうでもよさそうに原田のスーツの下に手を伸ばす。
このまま盛られては堪らないと、原田はその手を掴んだ。

「俺は今シたい」
「中坊かあんた……別に逃げやしねぇから、入ってこい。俺もその後入るから。今日外周りだったから気持ち悪いんだよ」

アルコールも手伝ってか我が儘に拍車のかかった榊の背中を撫でながら、ゆっくり切実に言い聞かせると、榊は一度長い溜め息を吐いて原田から手を離した。
きっと高ぶった息子を治める為の動作だろう。

名残惜しげに背中を向けた榊を見て、原田は安堵の息を漏らした。

+++


榊の家はそこまで広くはない。
1Kの、一人暮らしに最適なサイズだ。
だからバスルームもそれ相応で、尚且つユニットバスなものだから二人でさっさとシャワーを浴びるという選択肢が取れないのだ。

我が物顔で寛いでいると榊が汗を流し終えて出て来たので、原田はまた盛られては困ると、そそくさシャワーへと向かった。
スーツをかけて中のシャツを洗濯機に突っ込む。
どうせ明日の休みはこの家の洗濯物と掃除に費やされるのだ。きっとこの洗濯機の使い方は、榊より原田の方が詳しいだろう。

「さて。機嫌損ねる前に出ますか」

あまり待たせ過ぎると文句を言われかねない。
普段ならまだいいが、今日は原田が頑張る日らしいから、無理難題を突き付けられないようにしなければならない。
もっと飲ませて潰しとくんだった。原田は内心歎くが、元より榊は原田よりアルコールに強いので出来た試しはない。

手早く髪と身体を洗った原田は、使ったタオルを腰に巻いただけの格好で部屋へと戻った。
本当はシャワーだけだとしてももっとのんびりしたいが、気が急くとそう落ち着けない。
髪から滴る水滴が背中を滑るのに鳥肌を立てながら部屋を覗く。
そして原田は今日一番の大きな溜め息を吐いた。

「……寝るか? ふつー」

信じらんね、と文句を垂れながら、榊が転ぶベッドの端に腰掛ける。
リモコンを握ったままの榊は、それはもう豪快に、大の字で眠りの世界へ旅立っていた。

「しかもマッパってどーよ。あんた羞恥心とかねぇのかよ」

これが流行りの裸族か。
いや多分、タンスまで動くのも面倒になったんだろう。

そんな榊の情けない姿をぼんやり眺めながらも、原田は柔らかく笑った。

昔は畏怖と尊敬しか見せなかった榊が、自分の恋人になってからはずっと情けない格好ばかりを見せてくれるようになった。
まどろっこしい事が好きなのは元々だが、その癖自分が動くのは嫌いだったり、電子機器に関してからっきしだったり、見え見えの格好付けだってしたりするのだ。
それは女性ならば気持ちの醒める瞬間だと言うのかもしれないが、男である原田にすれば妙な可愛さを感じる部分でもあった。

「なぁ、寝んの?」

日に焼けた手の甲を指先で擽って、原田は問うた。
だが榊が目覚める気配はない。

「ふぅん……」

このまま榊を端に寄せて自分も裸族デビューしてみるかと考えて、原田は徐に腰に巻いたタオルを取りベッドの下に放った。
榊の開いた足の間に乗り上げると、安いベッドがギシギシと鳴く。

にんまりと口角を上げて笑った原田は、榊と同様就寝中である股間を一撫でし握り込んだ。
まだ柔らかいそれは原田の手の中に納まり、先走りさえない状態だからこそのすべすべした触り心地を原田に伝える。

「じゃ、俺は俺で誠心誠意頑張るとすっかいね」

ぎゅうと強く握ると榊が少し身じろいだ。
これは中々楽しいかもしれない。
そんな悪戯心が沸き上がった原田は、芯の通っていない榊自身を一気に口の中へと含んだ。

「やらけ」

勃起した状態での口淫なら何度も経験はあるが、萎えた状態では初体験だった。
まだ口の中に納まり切る大きさのそれをふにふにと口内で遊んでいると、徐々に固くなっていくのがわかる。
少し硬度を持ったそれを一度口から出し、左手で支えて今度は亀頭のみを舌で愛撫する。

「う……、」
「起き…………て、ないな」

小さく呻き声が聞こえたので榊が起きたのかと思ったのだが、そうではなかったらしい。
眉間にシワを寄せた榊は、居心地悪そうに二度首を振ってまた寝息を立てはじめる。

「どこで起きんだろ……」

段々と実験気分になってきた原田は、右手で榊自身を扱きながら膝立ちになり、左手指を舐めて後孔を解し出した。
いつもは榊が勝手にやる作業だが、自分でも出来ない事はない。羞恥もない。それに今は何より、榊という面白過ぎる実験体を前にして興奮状態だった。

「っ……、っは」

適当に指を出し入れしていてもわかる。それだけでも気持ちいい自分が、どれだけ榊に開発されているかと。
今更気付いた事実に自嘲の笑みを浮かべながら、疎かになりつつある扱く手を早め、早急に解す作業も急いだ。

後孔付近の筋肉が段々緩み、指を三本飲み込むようになって来た頃、原田は漸くそれを引き抜き榊の腹の上に軽く手をついた。
一生懸命維持し続けた榊の起立に跨がって、唾液で濡れた入口に押し当てる。
それだけで唾液と先走りが粘着質な音を立てるのが、酷く卑猥だった。

「ん……」
「シン、入れるからな」

榊信次郎。長いからシン。
普段は気恥ずかしくて呼べない愛称をここぞと呼んで、原田はゆっくりと腰を下ろした。
やはりいつもより解し足りない後孔は少しキツイが、不本意ながら受け入れ慣れているおかげで圧迫感はあれど痛みはない。
その代わりじわじわと襲い来る快感を噛み締めるように歯を食いしばって、陰毛が臀部を擽る時やっと大きく詰めていた息を吐き出した。

「はぁ……あーやべ、気持ちいい。やれば出来んじゃん俺。なぁ榊?」

見下ろした榊は熱い息を短く吐いて、瞼を震わせている。
そろそろ起きるなと感じた原田は、両膝を立て手を榊の腹と太股に付いて、勢いよく腰を上下に動かした。

「はっ、あ、……っ」
「うぁっ……っタイ!?」
「おは、よー……ってか」
「おい、待て、ストップ……っ」

受け入れる側の原田の息も荒くなるが、途中強い刺激で目覚めた榊の息はもっと荒い。
寝起きってすげぇ気持ちいいよなぁ、とまた楽しくなりながら上下運動をやめない原田の腰を、体温の上がった榊の手が無理矢理止めた。

「クソっ、出る……っイク、」
「え?」
「く、……は」

押し付けるように押し込まれた榊自身が、狭い体内で脈打つ。
まさかの早さに唖然とする原田の目に映る榊は、こめかみに浮かせた青筋さえびくつかせながら中で弾けた。

「嘘、早くね?」

常は何の意地か原田より先にイク事のない榊が。
力を失ったようにうなだれる榊の手を軽く叩きながら思わず呟いた原田は、ギロリと睨み上げてくる恋人の視線にさっと顔を青ざめさせた。

「ダイ……」
「な、何」

引き攣った笑顔で応じる原田に構わず、榊が開いた原田の両膝をがっしりと掴む。
痛いくらいの力に思わず情けない声を上げた原田は、次の瞬間腹筋だけで起き上がった榊と至近距離で目が合って自分の失言を呪った。

「前言撤回、させてやる」


明日の朝日は起きたまま見る事になりそうだ。


(ねちっこいんだよあんた……っ)
(寝込みを襲った仕置きだろう)

END

証明より、番外編榊×原田の続き、原田が誠心誠意腰振って頑張った話。を書かせていただきました。
ううん…何だろう、入ってるのにちっともエロくない…エロは永遠の課題です。
リクエスト下さったサリタ様。勝手に18禁表記とさせていただきましたが、ほんの少しでも満足していただけたら幸いです。

ありがとうございました!

 

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