「ただいま帰った」
「お帰りなさい。ちょうど今お茶にしようと思っていたところなんですよ。今日はCancer君がチーズケーキを作ってくれましたので」
「む、それは良いな」

任務から戻って来たScorpioを穏やかな雰囲気をもってVirgoが迎え入れる。チーズケーキ、という単語が出た瞬間、Scorpioの表情が少し和らいだ。

「そういやCapricornはどうした。あいつならこういう時真っ先にやって来るだろう?」
「…CapricornならPiscesの様子見に行ってる」

どこからともなく現れたOphiuchusにScorpioとVirgoは驚きの表情を浮かべたが、Ophiuchusの言葉の意味を理解すると、その表情は暗いものへと変化した。

「Ophiuchus……また、調子が悪いのか」
「…そのようですね」





――あと10年生きられるかどうか分からない、と医者から宣告を受けたのはちょうど5年程前のことだった。

生まれつき体が弱くて、自分でも長くは生きられないことは薄々理解していたつもりだった。だけど、そうはっきりと告げられた瞬間、俺の目の前は真っ暗になった。

そんな、終わりに向かってカウントダウンを始めた身体のくせして、俺の腕力と脚力は常人を凌いていた。貧弱な身体に強い力――この矛盾が余計に腹立たしくて、それからの俺は狂ったように喧嘩をするようになった。

最初は界隈で強い奴に挑んで戦い、そうしているうちに俺は挑まれる立場になった。喧嘩を重ねるうちに、この界隈で俺に勝てる奴は一人もいなくなった。
喧嘩をしている間は、生きてるんだと自覚することが出来た。相手を殴って打ち負かすことで弱過ぎるこの身体を忘れることも出来た。

残り少ない命ならいっそ自分で削ってしまえば良い――いつしか俺はそう考えていた。