「ふわ〜あ…ねみ」

太陽が中天へと昇ろうとする頃になって、漸く将臣は目を覚ました。いくら夏休みといえど、このような時間まで寝ていたのは流石に寝過ぎたなとまだぼんやりする頭の中で思いつつ、将臣はリビングへと向かった。

「腹減った、飯…って誰もいないのか」

そろそろ昼食の時間だろうと少し期待して入ったリビングはもぬけの殻だった。テーブルの上を見てみると、出掛けてくると書いた両親のメモが置いてある。譲はおそらく部活にでも行ったのだろう。

「あんま良いもん入ってねえなぁ…」

何か食べるものはないかと冷蔵庫の中を探してみたが、目ぼしいものは入っていなかった。

(…面倒だけど、腹減ったしな)

仕方ない、と将臣は昼食を買いに出掛けることにした。服を着替えて財布を持ち、玄関のドアを開けた瞬間、横から何か…もとい、誰かが飛び出してきた。

「将臣くん捕まえた!!」
「――っ!?」

横から何者かに抱きつかれた衝撃で、将臣はよろけて倒れそうになった。それを何とか回避して恐る恐る抱きついてきた人物の方に視線を移すと、そこには良く見知った幼馴染の姿があった。

「の、ぞみ、お前何やって」
「譲隊員!無事にターゲット確保しました!」
「はあ!?譲!?」
「先輩お疲れ様です。あと兄さんおはよう。起きるの遅かったね」

いきなり自分を捕まえた望美に加えて部活に行ったと思っていた譲まで登場し、将臣の頭はますます混乱する。そんな彼の様子に、望美と譲は顔を見合わせて笑った。

「将臣くんに、来てもらいたい場所があるんだ」

そう望美に言われて連れて行かれた場所は隣にある、これまた良く知っている望美の家だった。
どうして連れて来られたのか全く分からないというような表情の将臣に、隣を歩く譲は苦笑した。

「何だよ譲」
「兄さん、今日は何の日か忘れたのか?」
「は?」
「もう、将臣くんはしょうがないなぁ」
「だから今日は何があんだよ」
「お誕生日おめでとう、将臣くん」
「え…」

通されたリビングの中の様子を目にして、漸く将臣は今日が自分の誕生日であることを思い出した。そして、二人が自分を拘束した理由もはっきりと分かったのだった。

「譲くんと二人で準備したんだよ!…まあ、料理は殆どというか全部譲くんが作ったけど」
「先輩も手伝ってくれたじゃありませんか。それにしても、作戦は成功だったみたいですね」
「ふふ、そうだね…って、わあ!?」
「えっ!?」

計画の成功を喜ぶ望美と譲に、将臣は突然後ろから二人と肩を組むように抱きついた。驚く二人に、将臣はそのまま語りかける。

「お前らありがとな。正直またこうやって祝ってもらえるなんて思ってなかったからさ…すげぇ嬉しいぜ」

言い終えて少し照れくさそうに笑う将臣の姿に、望美と譲も嬉しそうに笑った。


あの日失って、もう二度と取り戻すことは叶わないと思ったことすらあった――大切な二人が傍にいる自分の居場所。そのあたたかさを、改めて感じた瞬間だった。






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将臣誕生日おめでとうということで書きました。いつも将望で書いていたので今年は有川兄弟+望美にしてみました。3人揃って現代に戻ってくるED後をイメージしています。
将臣は初めて好きになった乙女ゲームのキャラクターなので、その分思い入れも強いですね。何時まで経っても大好きだと思います。本当におめでとう!
最後にちょっとしたおまけです。





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