マッチ売りの少年 | ナノ
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僕の奴隷生活がスタートした1日目。

奴隷だなんて、凄く陰惨な響きなのに、僕の心はどことなく踊ってる。

だって、僕のご主人様は……大好きな豪炎寺くんなんだもの。



「デハ、今カラ奴隷ノ心得ヲ教エル―――」

心得……かぁ。
sp05の言葉に、僕は真面目に耳を傾ける。


「其ノ1、主人ノ前デハ常ニ全裸デイルコト」

はあ??何それ……恥ずかしいよ。


「其ノ2、主人ヲ嬌声デ煽ッテハナラナイ」

うーん………よくわからないけど、“えっちな声"をだすのは禁止ってことかな?


「其ノ3、2回目ヲ ネダッテハナラナイ」

し……しないよ、そんなことっ。


「其ノ4、任務中、自分ハ イッテハナラナイ」

イ……イく?僕が?えっと……そ、それは……


「其ノ5、主人ト接吻ヤ、性器以外ヘノ愛撫ヲ施シテハナラナイ」

…………。

「分カッテルノカ?」

sp05はギロッと僕を睨んで補足する。「チュ〜ハ 禁止。トニカク性器ダケニ快感ヲ与エテ射精サセルノガオ前ノ仕事ト言ウコトダゾ」

「……あ、うん…」

そっかあ……キスもダメなんだぁ。

「わかってるよ」と返事したものの、僕は少しがっかりして俯く。


「キス ハ 恋人同士ガ スル行為ダカラナ」
「…………」

恋人同士がする行為……。
僕はクリスマスの夜に豪炎寺くんと交わしたキスや、ここへきた初日のキスを甘酸っぱく思い出した。



「サア、ソロソロ仕度シロ」
「え、あ……はぁい」

「持チ物ハ コレダ」

持たされたのは、小さなヤカンと洗面器とタオル。

「アト コレモダ」
「え……」

最後に手渡されたのは、チューブに入ったゼリー状の潤滑剤だった。

「マズ 風呂デ体ヲ隅々マデ洗エ。挿入スルタメノ穴モ奥マデシッカリ ナ。ソレト自分ノ精子ヲ抜クノヲ忘レルナ。抜キ終ワッタラ潤滑剤デ 穴ヲ 柔ラカクシテオクンダゾ」

「……………」

淡々と語られる内容は、僕には一つ一つがとても刺激的過ぎて思わず赤面してしまう。

「分カッタラ 早クシロ。 俺モ、忙ガシインダ」
「わ、わかってるよ」

「ジャア スグニ 取リカカルンダ」
「ひゃあ!!……離してっ」

「モタモタスルナ 来イ!」
痺れを切らしたsp05は、僕の首根っこを掴んでバスルームに引っぱっていき、丸裸にしてシャワーブースに押しこんだ。

僕は全開にしたシャワーのお湯の中で、あっと言う間に丸洗いされ、そして……

「わぁっ!……な、何それやだっ!!」

ヴーンというヘンな音とわずかな振動が太股に当たり僕は飛び退いた。

湯気の隙間から目を凝らしてsp05の手元を見ると―――小さな電動ブラシのようなものがスクリューみたいに回るのが握られていてゾッとする。

「中ヲ洗ウカラ 穴ヲコッチ向ケルンダ」
「や……やだよ!……ぃやああ!!」


―――止マレ!sp05。修也様ガ オ呼ビダゾ!


冷たい壁に身体を押しつけられて、お尻を持ち上げられて。スクリューのブラシを挿入される直前の"絶対絶命" の格好で―――
sp05は『修也様』と聞いた瞬間、スイッチが切り替わったみたいにあっけなく僕を解放した。

僕はシャワーの滴が打ち付けるタイルの上にへなへなとへたりこむ。


「―――オ前、誰ダ?」

「sp04。昨年ノXmasマデ 6年間 修也様ニ オ仕エシテイタ。マ、イワユル 君ノ 先輩?」

すれ違い様、ロボット逹は互いに牽制し合うような挨拶を交わし、それぞれの持ち場に向かった。

sp05はおそらく豪炎寺くんの部屋へ。
そしてsp04は……

「ハジメマシテ、吹雪サン。sp04ト申シマス。今日カラ私ガ アナタ様ノ オ世話ヲ サセテ頂キマス」

「sp…04?」

丸っこいフォルムの小さなロボットはゴーグルみたいなディスプレイの電光を小さくチカチカさせて僕に挨拶した。

「ハイsp04デス。貴方様ニ会エルナンテ夢ノヨウ デス」
「……はぁ」

「貴方様ハ 修也様ノ……初恋ノ オ相手ダト、私ノ分析データハ認識シテイマス」

僕は俯いて、照れ隠しにシャワーの下に立った。

「ア、ソレト。今日ハ 中ノ洗浄ハ不要デスカラネ」

「…‥え?」

「挿入ハ、貴方様ノ 体調ガ 完全二回復スルマデ シナイ、ト修也様ガ仰ッテイマシタカラ」

「そうなんだぁ………」

ホッとしたような、ガッカリしたような。でも彼の思いやりが嬉しい。
僕はゆっくりとシャワーにの下で顔一面に細かい滴を受けながら思う。

僕、君の思うほど子供じゃないのにな。
どんな形であれ、好きな人に体を捧げられるなら
僕は十分幸せだよ………

これから君に、僕の愛情を教えてあげるんだ。
奴隷としてだっていい。
僕にできること、できる範囲で君にしてあげたい。
今は、君のそばで生きていけることが嬉しくて仕方ないから――――



「上ガリマシタカ?」

そっとバスルームから出てきた僕に、sp04がすぐに気づいてスーッと寄ってくる。

「……?」

「ドウゾ、コレヲ」

「わぁ……何これ?」

sp04の持つ小さなトレーの上には、甘い香りの湯気を漂わせるミルクココアが乗っていて。

「修也様カラノ差シ入レデス」

「……ええっ……あ、ありがとう」
僕は両手で大事に受け取り、息を吹き掛けて冷ますと少しずつ飲む。
おいしい。
口の中に、チョコの香りと甘さが広がって……思わず笑顔が零れたのが自分でもわかった。




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