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7

気持ちいいことを繰り返してるのに、満たされるどころか何かが足りなくなっていく。
触れあうたび肌の奥に芽生える、じりじりとした熱に、もう堪えられなくて―――

「も……だめっ」
吹雪が音をあげると、それがタイムアップの合図みたいに豪炎寺が愛撫を止めた。


「僕が不慣れで……がっかりしたかい?」

ベッドに向き合って横たわり、背中を撫でられながら、吹雪がしおらしく呟く。

「するわけない。寧ろ可愛いと思うぞ」

真顔で答える豪炎寺に、くしゃくしゃに蕩けた表情で首をかしげる吹雪。

僕のことを「お持ち帰りした」とさっき彼は言っていた。
少なからず性的な接触を企んで連れてきたのだろう。
昼間悪ふざけでオイルを塗ったり海で肌を触れあったことで、発情のスイッチが入って―――
思えば昨日までの大事なゲームに際して、ストイックな彼はしばらく禁欲してたにちがいないのだ。

でも、じゃあなんで彼は周囲の綺麗な女性たちを一夜の相手に選ばず、僕を………?

「まあ、君が慣れてればこと足りるよね」

「俺だって、お前が思うほど慣れてない」

膨れた吹雪の頬を、豪炎寺の手が包む。
柔らかくて滑らかな……ずっと触れてみたかった感触だ。

「僕は……いいよ」
吹雪の手が、頬にかかる豪炎寺の手に重なる。
そしてその手をそっと自分の胸に持ってきた。
「君のしたいこと……していいから」
上擦る声。
ドクンドクンと、真っ赤にした頬の熱さも彼に伝わってしまってるだろう。

「お前も……俺が欲しいのか?」

「…………」
吹雪はハッとして、顔を隠すように豪炎寺の胸に顔を埋めた。
「わからないけど……キスが……気持ちよかったから……このまま君となら……いいかな…って」

「っ―――」
これは愛の告白なのか?
いや、落ち着け……と豪炎寺は自問自答する。
吹雪はただ原始的な性欲に目覚めただけのような気もする。
人として俺のことをどうかというより、雄として認められただけというか………。

豪炎寺の葛藤をよそに、吹雪は苦しげなため息をついて囁いた。
「ねぇ……ヘンなんだ。身体が……ウズウズして…」
「おい……止せ」
豪炎寺の滾った股間に吹雪の腰が擦り寄せられて、理性が崩壊しそうになる。

「く…っ……襲われたいのか!?」
豪炎寺は勢いよく吹雪の上に寝返って、吹雪の両手首をベッドに押さえつけて組敷いた。

紐がほどけたローブの前が開いて、抜けるような柔肌が露わになっている。
胸元で尖る乳首の薄桃や……片膝を立てた脚の間で上を向く性器の清らかな白。その先端から滴って後ろの割れ目に伝い落ちている蜜も……全てがたまらなく美味しそうで。

「いい……よ、はやく……」

どこから食べようか……いや違う。
まだ駄目だ。

「あ……」

吹雪が小さな声をあげる。
豪炎寺が吹雪のローブの前を閉じ、覆い被さるように、ぎゅうっと強く抱きしめたからだ。

「どうして?…………しないの?」

豪炎寺は眉間に深い皺を寄せて、煩悩を断ち切るように大きく息をひとつ吐いた。

「俺は吹雪が……すきだ」
心身の熱が迸る声が、吹雪の耳元で絞り出される。
「だから……すきな奴の身体を衝動で襲いたくない」

「……え……!?」

豪炎寺くんが………?
僕を…………すき??

今まで生きてきた中で、一番激しく鼓動が高鳴っている。
高熱でも出たみたいに全身が沸騰していて、声すら発することができない。

最高で最強の仲間意識を寄せていた大切な人からの突然の告白。
ううん、突然……ではないのかも。
さっきのキスから薄々感じとってはいた。
だけど舞い上がるばかりで受け止めることさえ今はままならなくて。

「中学の時………初めてお前を見て、こんな綺麗なヤツがこの世にいるのかと……驚いた」

真っ正面のキザなセリフに、聞いてるこっちの顔から火がでそうだ。
そんなこと、どんな顔して言ってるのだろう。
見たいけれど顔が見れない。

「……でも君は……会ったときから女の子にモテモテで…」
「それはお前も同じだろう?」
「でもいつだって君は男女とわず憧れの的じゃないか。だいたい君って僕には厳しくて、好きだなんてぜんぜん…っ……」

キスで塞がれた唇で甘い痺れをわけあう。
すきだと言われたあとのキスは……どうしてこうも格別な破壊力で心と身体を溶かすのだろう。

「もういい。今日は寝ろ」
「えっ、でも……」

「俺も頭を冷やしたいんだ……おやすみ」
「……っ……」

きつく抱きしめられたまま、ずっと離してもらえなかった。
耳元にかかる熱い息と、ともにベッドに沈む相手の身体の重みと……ほどよい疲労にも包まれて、夢みたいな現実がすぐに本当の夢をつれてくる……

もういっかい豪炎寺くんとキスしたいな…………あした目覚めたらまたできるかな?
ていうか……無性に顔が見たい。
今は照れてるのか、覗かせてもくれないけれど。

この気持ち、何なんだろう……?

吹雪は目を閉じて、ふわふわと思いを巡らせながら、眠りに身を任せていく。

抱きしめられて動けない状態がこんなに心地いいのは、誰より信頼する相手の腕のなかだからだと思う。

『羨ましいなあ……仲間同士の絆の延長に恋とか愛が生まれるなんて……』

ふと、パーティーのときの立向居の言葉が脳裏に浮かんだ。
同時に、肩を並べていた円堂と夏未の仲睦まじい姿も。

そして……彼らへの祝福コメントの取材を受ける豪炎寺の横顔へと、記憶がさかのぼり……

全部夢の中へと紛れて消えた。



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