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2

それからというもの、会長は毎日図書室に現れるようになった。本を読んでいる俺の前に座り、ずっと話しかけたり、時には同じように黙って本を読んだり。
正直面倒なことになった、と思っていたけど、俺はしばらく会長と過ごすうちにこの人は言われるほど傍若無人で傲慢な人ではないことに気がついた。

『俺に惚れさせてやる』

そう宣言されたときは、学園で所かまわず声をかけられたらどうしようかと思っていたけれどそうじゃなかった。会長は、放課後の図書室にしか現れない。廊下ですれ違うとき、にやりと笑われるだけで特になにかリアクションを起こしてくるわけでもない。

会長は、自分の人気を知っている。自分から人の多い所で俺に近づいて、俺が自分のファンから何かされることを避けているのだ。
そして、この人はとても優しくて努力家だ。

困っている人がいると必ず声をかける。生徒会の仕事だって、副会長たちがお昼を食べに出た後自分も出ると見せかけてこっそりと生徒会室に戻り副会長たちがやりやすいように整理整頓をしている。

なんで俺がそんなことを知っているかは、あれだ。たまたまそういう場面に出くわすことが多いから。
…なんて、たまたま、なのはウソ。俺はいつの間にか会長を目で追うようになっていた。初めこそ毎回現れるこの人にうんざりしてたけど。きまぐれに付き合わされるのなんて真っ平だと思っていたけれど。


少しずつ、本当のこの人を知る度に、俺はこの人が訪ねて来てくれることに喜びを感じるようになっていた。



「おい」
「…なんですか」

いつものように向かい合って、黙って本を読んでいると俺の本をぱたんと閉じさせて会長が声をかけてきた。

「…」
「…」

声をかけてきたくせに、何も言わずじっと俺を見つめる。なんだろう?
同じように黙って見つめ返していると、会長がゆっくりと立ち上がった。
窓から差し込む夕日に照らされて、きらきら、きらきら、会長の髪がオレンジに光る。

ああ、この人は本当にキレイだ。

思わず見とれた次の瞬間、そのキレイな顔が目の前でぼやけて。


―――会長に、キスされたんだと気付いた。

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