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2

善は、家政婦協会から派遣された家政夫だった。小さい頃から料理や掃除洗濯など、家事をすることが大好きでこの仕事に就いた。
だが、善はその見た目がとても厳つくおよそ家政夫には向いていなかった。筋肉質で胸板が厚く、その二の腕もムキムキ。背も185センチと高く、切れ長で一重まぶたの目。まるで堅気ではないその容貌に、家政夫として派遣されてもしょっぱなの訪問で家に上げてもらえることなくチェンジを言い渡される。

所属している協会の社長は善の事をわかっているため優しく慰めてくれるのだが、善はそのたびにひどく落ち込んだ。
見た目は厳つくとも、善はとても気弱で繊細な男だったので派遣先の人々に怖がられるたび、嫌そうな顔をされるたびに一人こっそりと泣いていた。

そんなある日、とある企業の社長から家政夫を一人派遣してほしいと協会に依頼があった。内容は、高校生の息子の住むマンションでの住込み家政夫。しかも、女ではなく男を派遣してくれと言われたのだ。そこで、社長がこれはチャンスと善の写真を見せて勧めた所、この人に是非と頼んできてくれたのだ。

話をもらったとき、善はとても喜んだ。こんな自分がいいと言ってくれる仕事先があるなんて。絶対に期待に応えよう。
善は張り切って派遣先の社長の息子のマンションに向かった。


「は、初めまして、今度からこちらで仕事をさせていただくことになりました松本善(まつもと ぜん)です」
「秋吉湊(あきよし みなと)です。よろしく」

初日に挨拶をした時に、善は思わず見惚れてしまった。湊はとても美形だったのだ。

社長の話によると、今まで派遣された家政婦全て仕事できたにもかかわらず湊に夢中になってしまうそうで。

そ、そりゃ女の子は放っておかないよね…。

善は目の前の湊を見て納得した。
その日から、善は湊のマンションの住込み家政夫として生活するようになったのである。




湊のマンションには湊しか住んでおらず、依頼主である湊の父は滅多にここに来ることはない。湊に気に入ってもらえるように頑張ろう、と善はそれはそれはまじめに一生懸命に働いた。
湊は基本あまりしゃべらない。とても冷めた感じのする今どきの青年で、善の事をとくに邪魔扱いするでもなくだからと言って深くかかわり合いにもなろうとせずどこか一線を置いていた。

時折、何か言いたいのか自分をじっと見つめる湊に少しの違和感を感じながらも善は、せっかく縁あって一緒にいるのだから少しでも話が出来ればな、と思っていた。だが、いやいや、仕事で来てるんだし、そんな仲良くもなる必要もないかも。いや、でもでも…。などと考えながら日々仕事をこなしていた。

そんな、ただの雇われ家政夫とその雇い主の関係が一変される出来事が起こる。


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