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9

「さっき言っただろう…?本当は、俺は…、優しい王子様なんかじゃねえ…っ!優しくしてやりたかったのに…、お前をこんなにも泣かせることしか…っ!」


自分の欲に負け、真っ白な哲平を汚してしまった。お姫様の初めては、こんな野獣に奪われちゃいけないはずなんだ。


「それでも、誰にも渡したくない…っ!お前が他の、本当に優しい王子に渡してやることがお前の為なんだって、わかってても、俺はっ…」

泣きそうに顔を歪め、ぐ、とシーツを強く握りしめる。血が出そうなほどに強く握りしめられたその手を、哲平が震える手でそっと掴んだ。

「…じゃあ、わたしちゃやだ…」

哲平に触れられた雅史の手がびくりとこわばる。おそるおそる怯えた目を哲平に向けると、哲平は雅史に向かい優しく微笑んでいた。

「王子様は、優しいよ。今…、こうして、僕の為にって泣いてくれてるもの。…ね、王子様。どんなに怖くたって、僕、大丈夫だよ。王子様の今迄が嘘だっただなんて、思わないよ。だって、本当だったもん。危ないときに、いつも僕を助けてくれたのは、ほんとうだもん。王子様は、本当に優しい、僕だけの王子様だもん。だから、お願い。…他の誰かになんて、渡さないで…。ぼくを、おうじさまの、おひめさまでいさせて…?」
「…っ、哲平…!」

優しい笑みのまま、雅史の頬に哲平が触れながらお願いをした瞬間。哲平のアナルに当てていた雅史のペニスがぐん、と硬度をまし、ぐい、と突き入れられた。

「ひあ…!」
「哲平…!哲平…っ!」

その衝撃に仰け反る哲平を、雅史はしっかりと抱きしめ己自身を深く深く埋め進めていく。ぐぬぐぬと雅史自身を受け入れていく哲平は、熱い塊が中を突き進むたび喉を逸らし、甘く艶のある声を出し自分を抱きしめる雅史にしがみついた。

「あ、あ…!」
「哲平…、愛してる。俺だけの姫…!」

全てを埋め込み、がくがくと震える哲平にキスを落としながら愛を告げると哲平はひどく幸せそうに涙を浮かべながら微笑んだ。



翌朝、目が覚めると隣ですやすやと眠る哲平の寝顔に雅史は顔をほころばせた。ふくふくとしたほっぺがあまりにもおいしそうで、思わず眠る哲平の頬に口づけ、軽くあむ、と唇で食む。

「ん…、」

もぞり、と哲平が動き、その閉じていた目を開けて寝ぼけた目を雅史に向けた。

「ごめん。起こしたね。」
「…王子さま…」

自分の目の前で微笑むのが雅史だとわかると、哲平はふにゃりと笑って雅史の胸に頬ずりをした。

「哲平…」
「王子様…えへへ…」

にこにこと笑いながらぐりぐりと顔を雅史に擦りつける哲平に、雅史は昨日あれだけ抱いたというのにまた哲平を欲しくなる自分を必死に抑えた。

「大丈夫?昨日無理させちゃったからね。」

ちゅ、と額にキスをすると哲平は真っ赤になって布団の中に潜り込んだ。

なんて、かわいらしいんだろうか。



ゆうべ、雅史はようやく念願であった哲平とのセックスをすることができた。最中に、夢中になって本来の自分を出してしまったが哲平は怖がることなく受け入れてくれた。


『いつもの王子様も好きだけど、今の王子様もかっこよくて好き。
僕しか、知らないんだよね。僕だけの王子様なんだよね。』


ゆうべ、眠る前に哲平が微笑みながら尋ねた言葉。


もちろんだ。チームの皆は、雅史の本来の姿を知ってはいるが、こんなにも甘い百獣の王であることは知らない。学園の者においては、王子様である姿しか知らない。


全部全部、哲平の物だよ。


そう答えるとひどく嬉しそうに笑った。
どちらの自分も雅史であることには変わりがない。だが、本当の自分を知って怯えるのではないかと雅史は思っていた。

でも、哲平は違った。怯えるどころか、どちらの自分も愛してくれると、そう言った。
例えどうあろうと、雅史は自分の王子様だという哲平に、雅史は、生まれて初めて愛される幸せというものを感じた。


愛しくて、切なくて、思いのたけをぶつける様に胸にうずまる哲平を強く抱きしめる。



「…ぼく、幸せです。良平みたいに、綺麗じゃないけど、他のお姫様たちみたいに、かわいくもないけれど。それでも、王子様が、僕をお姫様にしてくれて…愛してくれて、幸せです。」
「…俺もだ。」
「王子様、お姫様の条件って、覚えてる?」


お姫様の条件。それは、哲平が雅史に告白された時に教えてもらったこと。王子様のお姫様になれるのは、綺麗だからじゃない。お金持ちだからじゃない。

王子様に愛されることが、お姫様になれる条件なのだと。

雅史はそう言って、哲平を『ただ一人のお姫様だ』と言ってくれた。



「あの時と、同じ。あれと同じなんだね。」



お姫様の幸せは、王子様に心から愛されること。


にこり、と本当に幸せそうに笑う哲平に、雅史は頷く。王子様だって同じだ。姫の王子である条件は、お姫様に愛されること。王子様の幸せは、たとえどんな自分であろうとお姫様に受け入れてもらえること。そして、お姫様を愛すること。


身も心も、全て差し出してくれた愛しいお姫様に、雅史は優しくキスをした。



「あ、そうだ、王子様。」
「ん?どうした?」
「…あのね、あのね。えっち、なんだけど…。僕のお勉強したえっちと、昨日王子様がしてくれたえっち、違ったよ。お道具も使わなかったし、体も縛らなかった。どうして?」

本当に不思議そうに尋ねる哲平に、そう言えばそうだったと雅史は昨日哲平が用意していた卑猥な玩具の数々を思います。

「…哲平。哲平の勉強したえっちは、ちょっとレベルの上のえっちなんだ。哲平にはまだ早いから、また少しづつ僕とお勉強していこうね。」
「うん!」


ところで、哲平にそのえっちを教えてくれたのは誰かなあ?と笑顔で尋ねる雅史になんだかぞくりと悪寒を感じながら、哲平は烏丸の名を告げる。


「そうか。じゃあ、お礼を言わないとね。――――――たっぷりとな。」


そんな会話を二人がしているとき、哲平にえっちビデオを貸した時入れ物を間違ってSMもののDVDを渡してしまった烏丸は部屋でぞくりと背中に走る悪寒に冷や汗を流していた。


end
→あとがき

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