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2

その日から僕は何に対してもとてもネガティブな人間になってしまった。いいことがあっても、誰かに褒められても

『そんなわけないんだ、勘違いしちゃいけない』

なんて思うようになった。だから、柴島が僕に告白してくれた時も、その真剣な態度を見ても『僕なんかが好かれるわけない』って思っちゃって、丁寧にお断りしたんだけど。

『友達からでいいから』

そう言って柴島は頑として譲らなかった。それで、僕はお友達からなら、とお付き合いを始めたんだけど。最近、柴島があんなに真剣に僕を好きに見えたのはやっぱり勘違いだったんだろうって思い始めていた。


柴島は、本当にモテる。女の子にも男の子にも常に誘われる。初めのうちは、きちんと断っていた。でも、最近になって柴島はさっきのような返事をよくするようになった。

えっちをしようと誘ってくる子に、何だか期待を持たせるような返事をする。それだけじゃなくて、寄ってくる子皆に気のあるそぶりを見せるのだ。
だから僕は遠慮してその子たちの所に行ってくれるように言うんだけど、その度に柴島は
『俺が一緒にいたいのは千代田だけなのに。』
と笑顔で答えるから僕はどう返していいのかわからなくって困ってしまっていつも俯く。


「チョーシにのんなよ、デブ」


そして今日も僕は、柴島の周りの女の子たちに嫌悪と恨みの目で睨まれながら柴島には聞こえないように嫌みを言われるのを背に教室を抜け出した。


「でさ、その時あいつらが…」

僕と二人きりの帰り道、柴島はとてもよく喋る。今日1日にあったことや、昨日友達と遊んだ時の事。僕はそれにいつもうん、とかへえ、とか相槌ぐらいしか返せない。それでも柴島はイヤな顔一つすることなく話しかけてきてくれる。

こんな僕といて、何か楽しいんだろうか。
不思議に思って返事が遅れると、柴島がひょいと僕の顔を覗き込んだ。


「うひゃあ!」


突如ドアップで現れたイケメンに、びっくりして飛び上がり変な悲鳴を上げてしまった。

は、恥ずかしい!

思わず口を両手で抑えて真っ赤になる。

「ははっ、千代田!驚きすぎ〜」

からからと笑うと、真っ赤になって俯く僕のそばに来て肩を組む。それにまたびっくりして体を跳ねさせると、柴島は何だかとても嬉しそうな顔をして僕の耳元に口を寄せた。

「ほんとかわいい。な、ちょっとは俺のこと意識してくれてる?」
「…わかんない、よ…」

耳元で囁かれ、ますます俯く僕を満足そうに見た後、すい、と離れて頭の後ろで手を組みそっかー、とにこにこしながら空を見る。
そのまままた歩き出して、いつものように僕の家まで送ってくれた。

「あ、千代田。明日、なんかある?」
「あ、明日…?ううん、別に…」

明日は土曜日だ。僕は休みの日なんて何も予定なんてないのでいつも家でゴロゴロしてる。お母さんには『だから太るのよ!』なんて怒られるんだけど。

「じゃあさ、遊びに行かない?俺迎えにくるから。11時ね!じゃあ!」
「…あ、…」

柴島はそう言うと、僕の返事を待たずに走っていってしまった。

家に入り、自分の部屋に向かい鞄を机においてごろんとベッドに転がる。


…柴島は、僕なんかのどこがいいんだろうか。僕みたいななんの取り柄もない平凡な男をかわいいだなんて、ただの皆に言う冗談だとわかってはいてもほんの少し、どきりとしてしまった。

「…意識、してるのかな…」

だとしたら、どうしたらいいのだろう。柴島は誰にでも同じように言ってるのに。勘違いしちゃいけないのに。


「明日…」


明日は、柴島と初めての外出だ。
僕は今日眠れるだろうか。

緊張でばくばくと心臓を高鳴らせながら、起き上がり宿題をだした。

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