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にゃんた様からのリクエストで『設定・ぽっちゃり(ネガティブ)受け
・切甘甘』です!

がんばります!
ではどうぞ♪
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「柴島くぅん、一緒に帰ろうよ〜」
「え〜、あたしと帰ろうよ!なんなら帰りホテル行ってもいいからさ」


放課後、HRが終わると同時にクラスだけじゃなくて他のクラスからも女の子達が一人の男に我先にと群がりだす。
その男はそれら全てに笑顔で丁寧に断りを入れるのもいつもの光景だ。


「ごめんな、俺、千代田と帰るから。お誘いは嬉しいけどまた今度でいいかな?」
「もぅ〜、柴島、いっつもそう言ってるじゃん〜!」
「次は絶対だよ?そんでえっちしようね♪」
「ん、楽しみにしてる。それまでその極上ボディに磨きをかけといてよ」


クラスのど真ん中で堂々と『えっちしようね』だなんて凄いよね、今の女の子って。
女の子たちに笑って挨拶をしてから、柴島がカバンを肩から下げてこちらに向かって歩いてくる。そんな何気ない仕草もかっこいいなんてうらやましいよ。

「お待たせ、千代田。待った?」
「う、ううん。…よかったの?あの、女の子たち…」
「いいんだよ。俺は千代田と帰りたいの。わかってるくせにひどいなあ」

にこり、と極上の笑みを浮かべる柴島に僕は思わず俯いてしまった。


…そう、なのである。実は、僕はつい一か月ほど前、この超モテ男から告白されたのである。



彼の名前は柴島智仁(くにじま ともひと)。僕と同じクラスで、芸能人顔負けのイケメンフェイスの王子様だ。頭もいいし、運動神経もいいなんて神様は不公平だよね。でも、天は二物を与えずとはよく言ったもので柴島はとても残念なことに男に恋をした。それも、よりにもよってこの僕に!
僕は千代田藤次(ちよだ とうじ)、16才。ごくごく平凡な顔つきに、少しぽっちゃりめの体。隣を歩く柴島なんかとは比較にもならないほど天と地の差がある。人気者と、根暗デブ。傍から見るとこれほど釣り合わない絵はないだろう。

僕と柴島は、同じクラスでも接点なんて全然なかった。交わる要素なんてなんにも無くて、かたや常に人に囲まれる人気者。対して僕は友人がごくごく少数しかいない嫌われ者と言ってもいいくらいクラスからはみ出した存在。ぽっちゃり気味なこの体がコンプレックスで、ネガティブな性格も手伝って教室ではいつも俯いて目立たない様に目立たない様にしてた。


一か月前、突然柴島に呼び出された僕は何か文句でも言われるのだろうかとドキドキしながら呼び出し場所の校舎裏に向かった。そこで待っていた柴島に、極上の笑みと共に告白されたのだ。

とはいえ、柴島も僕も男だ。ましてや柴島ほどのオトコマエなら僕じゃなくてもいくらでも相手なんているだろうに。

僕は咄嗟に、何かの罰ゲームかと疑った。でも、柴島の顔は真剣そのもので。罰ゲームだとして、人間が果たして演技でここまでできるだろうかというくらいまさに恋する男だったのだ。

…本当に、本気なんだろうか。それでも、どこか信じきれない自分がいる。
それには、原因があるんだけれども。

僕は恋愛をしたことがない。いや、一度だけある。忘れもしない小学校三年生の時だ。当時、塾に通っていた僕は、帰り道で偶然あった女の子に恋をした。初めて会ったとき、その子は泣きそうな顔をして僕の帰り道に立っていた。あまりにも困っている様子なので声を掛けると、迷子だと言う。その子の行きたい場所は僕の知っている場所だったので、一緒について行ってあげたのだ。無事辿り着くことのできたことにその子はとても喜び、とてもかわいらしい笑顔でお礼を言ってくれた。そして、また今度会おうね、と言ってくれたのだ。その時に僕は初めて一目ぼれをした。

また会えることを夢見ていた僕の前にもう一度その子が現れた時にはこれは運命なんだと思った。『話したいことがある』と近くの公園に僕を連れていくその子の背中をドキドキしながら見つめていたら、急に振り向いたその子は僕に
『好き』
と告白してくれた。困っているところを助けてくれた僕に一目ぼれしたのだと。僕は告白を受けてものすごく喜んだ。
『ぼ、ぼくも好き!』
そう答えたところで、後ろの茂みから同じ塾の僕をいつもからかってくる男の子たちが現れた。


『僕も好き、だって〜!』
『うーわ、きっもー!おい、告白大成功だなあ?』
『あはは、うれしー!けどまじきもーい!』

僕を好きだと言ったその子は、男の子たちと同じようにけらけらと笑うと僕の事を『キモイ』と言い、その頭からカツラを取り外した。

『あー、面白かった。お前ほんと最高!めっちゃ笑えた〜』

目の前の女の子は、男の子だった。

『な、言っただろ?千代はきもデブだから女の子とちょっと話しただけでそいつの事好きになるって!』
『あ〜、まじ笑えた。お前が試してみようぜって言いだしたときはどうかなって思ってたけどまさかほんとにひっかかるなんてなー』
『はは、俺もびっくりしたー!』


目の前で、げらげらと笑うその子を見たまま僕は固まってしまっていた。
『よく『僕も好き』なんて言えたね。なに、自信あったの?おまえみたいなデブが好きになってもらえる訳ないじゃん』

僕は、笑いながら皆と去っていくその子の後ろ姿を黙って見つめるしかできなかった。

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