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7

「ん…」


ふと息苦しさに身をよじり、ぼんやりと目を開ける。薄暗い部屋の様子から、今はおそらく夜中なのだろう。
善はのどの渇きを覚えキッチンに行こうと起きあがろうとして自分が身動きがとれないのに気がついた。

未だ覚醒しきれない頭で、なぜ動けないのかをぼうっと考えて思い出した。

…そうだ。自分は、湊に手を縛られて動けないんだっけ…

そう思い出してふと違和感に気付いた。…両手は、自由だ。じゃあ、一体。


そこまで考えて、ようやく自分が後ろから誰かに抱きしめられていることに気がついた。

「…っ!?」

誰。いやだ、怖い…っ!善は寝起きのはっきりしない頭で自分の状態に気がついたため、パニックに陥ってしまった。


だれか、たすけて。いやだ。こわい…っ


「み、湊くんっ…」


「なんだよ…」


後ろから聞こえた声に、え、と反応する。

「…まだ夜中じゃねえか。いいから寝ろ…」
「…!?」

腰に回す腕にきゅう、と力を入れられ、うなじにちゅ、と軽くキスをされる。
そして湊はそのまま善の背中に顔を埋めて眠ってしまった。

…どうして、自分は湊に抱きしめられているのだろう。今まで、こんなことは一度だってなかった。気を失うまで弄んで、後処理などをしてくれてベッドに寝かせてくれていたりはしたけれど。


――――――ただの、きまぐれでもいい。


昨日、思わず口にしてしまった自分の本当の気持ち。その後すぐに意識がなくなったために湊のその後の反応はわからない。でも、自分の自慰を目撃してから湊は今まで散々自分を罵り蔑んできた。

『気持ちが悪い』、『淫乱』、『男好き』、『ホモ野郎』

初めこそちがう、と泣いていたがもう違うとは言えなくなったのだ。自分は、確かに湊の事が好きで、湊に抱かれて喜ぶ、ガタイの良い見た目にも気持ちの悪い男なのだ。
玩具を手放さないために、飴をくれているのだろう。

善は静かに涙を流しもう一度意識を闇に飛ばした。



「おはよう、善」

翌朝、湊が起きる前に目を覚まそうと思っていたが目を開けると湊が先に起きていて自分をじっと見つめていた。昨日最後に見た時には背中から抱きしめられていた自分の体は、目を覚ますと正面から湊に抱きしめられていた。
目を覚ました善に、湊が口づける。

「よく眠れたか?何か欲しいものはないか?」

ふと問われ、そういえば昨日夜中喉が渇いてたっけ、とぼんやりと思う。

「…み、ず…」
「待ってろ」

小さくつぶやくと湊は善の頭をひと撫でしてベッドから降りてキッチンからコップ一杯の水を運んできた。手を伸ばそうとすると湊はそれをぐいと煽り、善の上半身を起こし口づける。

「ふ、ん…」

口移しで水を渡され、こくりと飲み干す。

「まだ欲しいだろ?」

その行為は、コップの中身が空になるまで繰り返された。
飲みきれずこぼれた水が喉を伝い善の胸を濡らす。湊はその様子を舐めるように眺め、にい、と口角をいやらしく上げた。

「…えっろ。誘ってんのか?」

湊の言葉にびくりと体を硬直させ、真っ赤になって俯いて首を振る。そんな善の両手を掴み、ベッドに押さえこむ。湊に組み敷かれ、善はくしゃりと顔を歪めた。

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