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4

誰もいない廊下を歩きながら長くのびる自分の影を見つめる。
この学校はこんなにも静かだっただろうか。


一人でいるのは苦じゃなかった。静かに時が過ぎるのを感じるのがとても好きで。でも、あの人はそんな俺の一人きりの空間に突如入り込んできた。強烈な存在感。まるでモノクロだったその世界に、原色を彩っていくような。


一人で平気だった俺は一人がとても苦手になってしまった。心のどこかであの人を探す自分が嫌だった。平凡な自分とはかけ離れた可愛らしい生徒たちと楽しそうに笑いあっているあの人を見て辛くなる自分が嫌だった。


あの人は、生徒会長で。俺の事を、ただ自分に突っかかってきた物珍しい人間としてしか認識していない。だって、初めに言ったんだ。


『そのすましたツラが気に食わねえ。俺にドロドロに惚れさせて、生意気な口きいたこと後悔させてやるよ。』

つまり、それは俺を惚れさせるだけ惚れさせて、自分は本気にならないことを公言したも同然なのだ。わかっていたはずなのに、まんまと好きになってしまった。


さっきの言葉やキスもそう。

俺があの人を好きなことに気付いたくらいだ。自分に靡くことのなかった男が陥落して、それ見たことかと思ってあんなことをしてきたんだろう。好きなことをわかっているから、『恋人になってやる』というと断らないと思ったんだろう。そうして、恋人になって俺があの人を思って焦がれるのを楽しみたかったのだろう。


わかっているのに、焦がれてしまった。あの人の思惑通り、自分の想いを口にしてしまった。


…つらい、けれどもケリをつけるにはよかったのかもしれない。俺が好きだと言って恋人になれたとしてもあの人は決して俺のものにはならない。
恋人であるのに片思いの様な思いをするのはごめんだ。それくらいなら、恋人になんてなれなくていい。


思いをぶちまけて、拒絶したんだ。これでもうあの人も俺には近づかないだろう。俺も、もう二度と放課後の図書室にはいかない。

俺たちをつなぐ糸なんて本当に細いささやかなもので、いつ切れてしまってもおかしくないくらいだった。これで、完全に断ち切ろう。


「…さよなら、会長。」


俯いて歩きながら決別の言葉を口にした瞬間、後ろからぐいと腕を引っ張られた。

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