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2

「お〜いて」


赤くはれた頬をさすりながら放課後、一人保健室へと向かっていた。


ついさっき、また嫉妬させるための浮気を見せつけて恋人だった男に平手打ちをくらい『もう別れるから!』と言われたのだ。
さすが男。細くても意外に力が強くて結構腫れた上にネイルをしているから爪を伸ばしてやがったために切り傷ができてしまった。

くそう、俺の自慢の顔に傷が残ったらどうしてくれるんだ。

「せんせー、バンソーコ…あ」

がらりと保健室の扉を開けると、そこにいたのは保健の先生ではなく一人の男だった。

「先生は外出中です。怪我ですか?手当しますんでどうぞ」
「はあ」

男は事務的にそう言うと俺にイスに座るように促した。言われるままおとなしく座ると、小さなコットンに消毒薬を染み込ませ俺の頬の傷にちょんちょんと塗りつける。

「しみませんか?すぐ終わりますからね」
「や、大丈夫っす」

テキパキと俺の傷に手当をするそいつをじっとみる。
黒髪に、メガネ。顔は可もなく不可もなく、どちらかというと地味な顔立ち。
ネクタイの色からするとどうやら三年生らしい。年上か。見えねえな。

「終わりましたよ」
「あざっす」

礼を言い立ち上がって退出しようとした俺にぱたぱたとついてくる。

「お大事に」

扉を閉める直前、初めてふわりと笑うその顔に一瞬釘付けになった。


「…平凡なのも、たまにはいいかもなあ」


ふと、あの笑顔が自分だけに向けられる事を想像してにやりと口角があがった。


調べてみると、あの時の生徒は金丸と言い保健委員長であることがわかった。クラスでもおとなしい方で、どちらかといえば目立たない脇役Aとでもいった立ち位置だ。金丸は読書が好きなようで、放課後や昼休みなどよく図書室に入り浸って本を読んでいるようだった。
恋人はいない。今までにもいたことがない。

調べるうちにますます金丸に興味がわいた。そういえば、地味で初物なのは、手を出したことがない。


――――次は、この人にしてみるか。


池上はその日の放課後、1人で読書をしている金丸の姿を認めて図書室の扉をがらりと開けた。

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