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この国では、魔法というものが存在する。それはごくごく身近にあって当たり前の事で、この国の人間ならば誰でも使えるものだ。

またこの国には魔物といった生き物も多く存在し、時にそれは人間に牙をむく。先ほどザッヘと呼ばれた異形の者は、『アンデレザッヘ』と呼ばれるもので、人型にもなれる魔物だ。普段人型として生活しているザッヘはごまんといるが、ザッヘの中に眠る魔物の性が時折こうして起き出すとみるみるうちに姿を変えて魔物そのものの姿に変貌する。

ザッヘは基本突然魔物の姿になることはない。自分の大事なものが傷つけられた時にのみ理性よりも魔物の血が勝つのだ。

ザッヘは、愛する者を守るために発動する力だと言われている。それはなぜか。ザッヘは、愛するものができた時、その愛する人が危険に冒されたときそれを救うために初めて自分がザッヘとしてその姿を変えるからだ。

今回のザッヘは、自分の恋人がひどいいじめにあっている事を知り、その現場を目の当たりにした。自分の恋人が強姦されそうになっているのを見た瞬間、彼の中で理性が飛んだ。自分の恋人を押さえつけている輩を振り飛ばし、逃げ惑う犯人たちを追いかけた。彼の怒りは、犯人だけでなく自分にもそしてその周りにも向いていた。大事な恋人がそんなめにあっていることを知らなかった自分と、それを止めようともせずに傍観していた、笑って見ていたクラスメイトに向かった。逃げ惑う罪人たちを追いかけ、校庭で暴れていた。
そして、会長であるアルフレートを襲ったあのザッヘは、その恋人であったのだろう。自分のためにザッヘとして変貌した恋人を追って、アルフレートにとらえられた恋人を見て彼もまたザッヘへと変貌した。


一度変貌したザッヘはとてつもない力を持っている。そんじょそこらの魔法では押さえられない。


そしてこの世界には、ザッヘと同じく特殊能力を持つ者たちがいた。彼らは、『フェンガー』と呼ばれ、他のものよりもはるかに高い魔力を持つ。ザッヘを捕獲できるのは、フェンガーだけなのだ。

そして、この学園始まって以来のフェンガーと呼ばれるのが、生徒会長のアルフレートだった。

フェンガーは全てのザッヘを捕えられるわけではない。アルフレートが来るまで、光の壁を作っていたものたちもまたフェンガーだ。だが、あまりに強い力にフェンガーの捕獲能力が及ばないことが多くある。今日の出来事もその一つで、アルフレートはその類稀なるフェンガーとしての能力とその容姿、頭脳、全てにおいてまさにこの学園の頂点に君臨していた。


だが、先ほどアルフレートを助けた人物。風紀委員長のコルネリウス。彼は、ついぞ二週間ほど前にこの学園に転入してきた。無口で物静かな彼はその容姿であっという間に人気者になった。それだけではない。ある日アルフレートの留守中に一人のザッヘが暴れだした。その時、誰も手に負えなかったそのザッヘをコルネリウスが捕獲したのだ。
彼もまた、フェンガーとしての類稀なる力の持ち主だった。それを理由にぜひにと学園の教師たちに推薦され、コルネリウスはアルフレートに並び学園トップの風紀委員長の役職についたのだ。

アルフレートは、それが気に入らなかった。

彼は何事においても一番でなくては気が済まない。その為の努力も人一倍している。

こんな、ぽっと出のやつに並ばれてたまるか。


なのに、コルネリウスはそんなアルフレートの事などまるで眼中にないとでもいうようにいつも冷静に受け流す。

そして、運の悪い事にコルネリウスがこうしてアルフレートを助けるのも三回目だ。

望まない手助けにひどくプライドを傷つけられ、アルフレートはコルネリウスへのライバル心をまた燃やすのだった。

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