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2

「…なんだここ」

野々宮は男の子の入っていった家の前で唖然としていた。
屋根は今にも剥がれ落ちそうで、壁はボロボロ。扉のガラスが破れて新聞紙で塞いである。
こんなとこに、人なんて住めるもんなのか…?

「おい!お前、何の用だ!」

壊れかけた門に手をかけて唖然と見つめていると、後ろから大声で怒鳴られた。驚いて振り返ると、先ほどの男の子と同じくらいの年の子が、三人ほどこちらを睨んでいた。

「…別に、用なんて…」「あっ、お兄ちゃん!」

今度は家の中から、先ほどの男の子が出てきて声をかけた。

「なんだ、時夫の知り合いか?」
「うん、さっき助けてくれたの。ね、お兄ちゃん、遊びに来てくれたの?いらっしゃい、入って?」
「時夫の知り合いなら仕方ねーな!こいよ!」

仕方ないって何だ。帰る、と言うまもなく四人の子供たちに手を引かれ、背中を押され野々宮は家の中に上げられた。

中に入って野々宮はさらに唖然とした。

何だ、この家は。

床は歩く度にぎしぎしときしみ、天井には雨漏りでもするのかシミがたくさんあった。
なにより驚いたのは、子供の数だ。
野々宮を引き入れた子供を合わせて、皆で13人。皆ボロボロの服を着ており、がりがりに痩せている。

「いらっしゃい」

奥の部屋で野々宮を迎えたのは、少し年老いた女性だった。

「時夫から聞いたわ。時夫を助けてくれたんですってね、ありがとう」

優しくほほえまれ、野々宮は顔を逸らした。

「あの…、ここにいるのは、皆あなたの子供なんですか?」

野々宮は率直に疑問を口にした。

「そうだよ!皆、兄弟なんだ!ね、おかあさん!」
「お前もなんなら兄弟にしてやってもいいぞ!」

わいわいと騒ぐ子供たちに怪訝な顔をする。こんな同じ年の奴が全部兄弟とかおかしいだろ。それに、先ほどの言葉。
俺も兄弟に?

「みんな、お兄ちゃんにお茶を持ってきてくれるかしら?」

はーい、と返事をして子供たちが出て行く。二人きりになった部屋で、女性は野々宮ににこりと微笑んだ。

「…あなたはとても賢い子ね。そうよ、あの子たちは本当の兄弟じゃない。ここは、孤児の集まる家なの」

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