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哲平の言葉に、真っ青になる。
良平に、何かあったのか?
「あのね、良平泣いてるの。ずっとずっと泣いてるの。おにいさんに会う度泣いてるの。だからおにいさんじゃないとだめなんだよぅ。」
俺に会う度…。
目の前が真っ暗になった。それは、良平を傷つけたせいなのか。
「良平は…、俺が…」
哲平には、言えない。
「良平はね、いつもいつも泣かないの。何があっても、泣かないの。でもね、ほんとは泣いてるんだよ。涙は出さないで、心の中で泣いてるの。
おにいさんと会った後、いつも良平は心の中で泣いてるの!さみしいって泣いてるの!わかるんだよ、だって良平が泣くのはすきなひとのことで苦しんでるときだけだから!」
「…どういうことだ?」
えぐえぐと泣きながら叫ぶ哲平に、問いかける。
「良平のおじさんとおばさんはね、ずっと仲が悪いの。だから別れたいのに、良平がいるから別れられないっていつも良平に泣きながらどなるの。良平はずっとずっとそれを見てたから、泣けなくなっちゃったの。
『僕のせいで母さんが泣くから、僕は泣いちゃいけない』って。
それから良平は涙を流さずに心で泣いてるの。
好きで好きでたまらないお母さんに、愛してほしいのに言えなくて泣くの。
ぼく、ずっとずっと良平を見てたからわかる。今の良平、同じなんだよ。あの時と、同じなんだよ!
だから、おにいさんにしか助けられないんだよぅ!うわあああん!」
「お前ら、この子送ってやってくれ!手ぇだすなよ!」
俺は、店を飛び出した。
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